遺言書を作成すると、誰にどの財産を承継させるのか、相続人以外の誰に財産を遺贈するのかなど、自分が亡くなった後の財産の承継について意思を残すことができます。

遺言書に財産の承継先を定めても、相続開始後には、その内容に応じて預貯金や不動産などの手続、遺贈の履行などが必要になります。遺言の内容を実現するために必要な行為を行うのが遺言執行者です。

遺言執行者を指定するかは、遺言書に何を定め、その実現のために誰がどの手続を行うのかを踏まえて考えます。
遺言執行者による手続が必要となる遺言事項もあれば、遺言の執行を担当する人をあらかじめ定めておく場合もあります。

この記事では、遺言書を作成する人に向けて、遺言執行者を指定すると何が変わるのか、どのような遺言で指定する必要性が高いのか、誰を指定するのかを解説します。

遺言執行者を指定すると何が変わるのか

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な行為を行う権限と義務を持つ人です。

遺言書で財産の承継先を定めても、相続開始後には、遺言の内容に応じて預貯金の払戻し、不動産や有価証券に関する手続、遺贈の履行などが必要になります。

遺言書で遺言執行者を指定しておけば、相続開始後にこれらの手続を担当する人をあらかじめ定めておくことができます。

遺言執行者を指定する必要性は遺言内容から考える

遺言執行者を指定する場面は、遺言執行者が手続を行う遺言事項を定める場合と、遺言の執行を担当する人をあらかじめ決めておく場合に分けて考えることができます。

遺言執行者による手続が必要となる遺言事項がある場合

代表的なものが、遺言による子の認知と、推定相続人の廃除・廃除の取消しです。

遺言によって子を認知した場合、遺言執行者は、就任した日から10日以内に認知の届出を行います。

また、遺言によって推定相続人を廃除する意思を表示した場合には、遺言が効力を生じた後、遺言執行者が家庭裁判所へ廃除を請求します。遺言によって廃除を取り消す場合も、家庭裁判所で必要な手続を行います。

これらの事項を遺言に定める場合は、相続開始後に必要となる手続を遺言執行者が行うため、遺言書の作成時に誰を遺言執行者とするかまで決めておくことが重要です。

遺言を実行する担当者を決めておきたい場合

認知や推定相続人の廃除などに限らず、遺言執行者を指定しておくことで、遺言に基づく複数の手続を一人の担当者が継続して進められる場合があります。

相続人以外の人へ預貯金、不動産、有価証券などを遺贈する場合には、相続開始後に対象財産を受遺者へ移すための手続が必要です。また、複数の金融機関に預貯金があり、不動産や有価証券も遺言の対象となっていれば、財産ごとに手続先や必要書類が異なることがあります。複数の相続人や受遺者が関係する遺言では、それぞれへの財産の承継や遺贈に伴う手続も生じます。

このような遺言では、遺言執行者を指定することで、その人が遺言に基づいて対象財産の手続や遺贈の履行を進めることができます。

遺言執行者を指定するかは、遺言の実現にどのような手続が生じ、その手続を誰が担うことになるのかを踏まえて決めます。

遺言執行者には誰を指定するのか

遺言執行者は遺言書であらかじめ指定できるほか、第三者にその指定を委託することもできます。

遺言執行者に特定の専門資格は必要なく、家族や親族、専門家を指定できます。ただし、未成年者と破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は遺言執行者になることができません。

誰を指定するかは、遺言の内容に応じて必要となる職務を、相続開始後にその人が継続して担えるかという点から考えます。

家族や親族を指定する場合

家族や親族を指定した場合、その人が相続開始後に遺言執行者として必要な手続を進めます。

預貯金や有価証券など複数の財産があれば、それぞれの手続先へ書類を提出するほか、財産目録の作成や相続人への通知などの職務も生じます。

家族や親族を指定する場合は、財産目録の作成や相続人への通知、各財産に関する手続など、遺言執行者として必要となる職務を継続して担えるかを考慮します。

専門家を指定する場合

遺言執行者には、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家を指定することもできます。

不動産登記、相続税申告、相続をめぐる紛争など、その専門家自身の資格では扱えない業務が生じた場合には、該当する専門家への依頼が必要になることがあります。

専門家を指定する場合は、遺言の内容や財産の種類から想定される職務と、その専門家が担当できる範囲、遺言執行者としての報酬を踏まえて候補者を決めます。

遺言執行者を指定しなかった場合はどうなるのか

遺言執行者を指定していなくても、それだけで遺言書が無効になることはありません。 遺言の内容によっては、遺言執行者がいない状態でも相続人や受遺者が必要な手続を進めることができます。

遺言執行者による執行が必要な事項が含まれている場合や、相続開始後に遺言執行者を置く必要が生じた場合には、利害関係人が家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てることができます。

遺言書の作成時に遺言執行者を指定し、その人が就任すれば、相続開始後に家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てる必要はありません。

遺言内容と必要な手続から遺言執行者を指定するかを考える

遺言執行者を指定するかは、まず遺言書に定める事項から、相続開始後にどのような手続が必要になるのかを考えます。

認知や推定相続人の廃除・その取消しのように遺言執行者が手続を行う事項を定める場合は、その職務を誰に担ってもらうのかまで遺言書の作成時に考える必要があります。遺贈や複数の財産に関する手続がある場合には、遺言の執行を担当する人をあらかじめ指定するかを検討します。

遺言で何を実現するのか、そのために相続開始後どのような手続が生じるのか、誰がその手続を担うのか。この順に具体化することで、遺言執行者を指定する必要性と候補者を考えやすくなります。