親が亡くなった後、何から手を付ければよいのか

親が亡くなると、多くの方は悲しみの中で様々なことに向き合うことになります。
葬儀の日程を決める。親族へ連絡する。市役所で手続きを行う。

その一方で、
 「通帳はそのまま触ってよいのだろうか」
 「実家は誰が引き継ぐのだろうか」
 「兄弟姉妹とはいつ話をすればよいのだろうか」
 「もし借金があったらどうなるのだろうか」

といった不安が頭をよぎることも少なくありません。

インターネットで調べると多くの手続きが出てきますが、情報量が多すぎて、かえって何から始めればよいのか分からなくなることもあります。

実際には、相続には進める順番があります。
その順番を意識せずに動くと、遺言が見つかって話し合いをやり直したり、借金が判明し慌てたりすることがあります。

この記事では、親が亡くなった後に家族がどのような順番で動いていくのかを見ながら、それぞれの手続きがなぜ必要になるのかを解説します。

① 最初は相続よりも生活に関わる手続きが先になる

親が亡くなった直後は、相続手続きより先に対応することがあります。

代表的なものが死亡届です。
死亡を知った日から7日以内に提出します。実際には葬儀社から案内を受けながら進めることも多いでしょう。

また、この時期には残された家族の生活にも目を向ける必要があります。
例えば、
 ・ 公共料金
 ・ 介護施設の利用料
 ・ 携帯電話料金
 ・ クレジットカードの支払い

などが、亡くなった方の口座から引き落とされていることがあります。

そのため、通帳や請求書を見ながら、お金の流れを把握しておくことが後の手続きにもつながります。

② 銀行口座が凍結されると何が起きるのか

銀行が口座名義人の死亡を把握すると、その口座は凍結されます。
凍結されると預金を引き出せなくなるだけでなく、自動引落しも止まります。

例えば、父親の口座から母親の生活費や施設利用料が支払われていた場合、別の方法を考えなければなりません。

相続というと財産を分ける話に目が向きがちですが、実際には残された家族の生活はその後も続いていきます。
そのため、どの口座から何が支払われているのかを見ておくことには意味があります。
もっとも、生活上の対応と並行して、相続そのものを進める準備も始まります。

そのとき最初に気になるのが、亡くなった方が遺言書を残しているかどうかです。

③ 遺産の話を始める前に遺言書を探す

葬儀が終わり、少し落ち着いてくると、
 「実家はどうする」
 「預金はどう分ける」

という話が出てくることがあります。

そのときにまず行いたいのが、遺言書が残されていないかを調べることです。

例えば、
 ・ 自宅は妻へ
 ・ 預金は長男へ
 ・ 賃貸アパートは長女へ

という内容の遺言書が残されていることがあります。

兄弟姉妹で話し合いを始めた後に遺言書が見つかると、前提そのものが変わることがあります。
だから相続では、財産の分け方を考える前に遺言書の有無を調べます。

なお、自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認という手続きが必要になるケースがあります。

※公正証書遺言と自筆証書遺言の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
 「公正証書遺言と自筆証書遺言|どちらを選ぶかは「何を重視するか」で変わる」

④ 戸籍を集めるのは誰が相続人なのかを知るため

遺言書の有無が分かったら、次は戸籍を集めます。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどることで、法律上の相続人が分かります。

配偶者と子どもだけが相続人だと思っていたところ、前妻との間の子どもがいたことが分かるケースもあります。
また、認知した子どもや養子縁組をしていることが戸籍から分かる場合もあります。

相続では、相続人全員が関わる場面が少なくありません。
一人でも漏れた状態で遺産分割協議を行うと、その協議はやり直しになる可能性があります。

戸籍を集める理由は、戸籍を集めることそのものではありません。
誰が相続人なのかを明らかにし、その後の話し合いや手続きを進められる状態にするためです。

戸籍を何度も提出する場面もある

戸籍を集め終わると、銀行や証券会社、不動産の名義変更などで同じ戸籍を提出する場面があります。

そのような場合には、法務局で法定相続情報一覧図を取得する方法があります。
これは亡くなった方と相続人との関係を一覧にした公的な書類です。

ご自身で申出を行うこともできますし、司法書士や行政書士へ依頼して作成するケースもあります。
相続手続きが複数ある場合には、その後の負担を軽減できることがあります。

⑤ 財産を調べるのは「何を受け継ぐのか」を知るため

相続人が分かったら、財産を調べます。
預貯金や不動産だけではありません。
 ・ 住宅ローン
 ・ カードローン
 ・ 事業上の借入金
 ・ 保証人になっている契約

なども見ていきます。

また、通帳だけでは全ての財産が分からないこともあります。
証券口座やネット銀行、生命保険などが後から見つかるケースもあるため、郵便物や契約書類も見ながら調べていきます。

家族は預金通帳を見つけると安心します。
しかし相続では、預金だけでなく借金も引き継ぐことがあります。

そのため財産調査では、「いくら残っているのか」だけでなく、「どのような権利や義務が残っているのか」を見ることになります。

⑥ 借金が見つかったときは3か月という期限が関係する

財産を調べる理由はもう一つあります。相続を受けるのかどうかを判断するためです。

借金が多い場合には、相続放棄という方法があり、財産も借金も引き継がないための手続きです。
また、限定承認という制度もありますが、実際には利用場面が限られるため、まずは相続放棄に3か月という期限があることを知っておきたいところです。

借金の存在に気付かないまま時間が過ぎると、債務も承継することになるため、財産調査は早い段階で行われます。

⑦ 遺産分割協議は情報がそろってから始まる

遺言書の有無が分かった。
相続人も分かった。
財産や借金の内容も見えてきた。

ここで初めて、誰がどの財産を引き継ぐのかという話し合いができるようになります。
遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの財産を取得するのかを話し合うことです。

母親が今後も自宅に住み続けるためには、誰がその不動産を取得するのかを考える必要があります。
長男が事業を引き継ぐ場合には、事業用資産をどのように承継するのかも問題になります。
一方で、不動産を売却して現金で分けた方が公平だと考える家族もいます。
こうした事情を踏まえながら、家族ごとの着地点を探していきます。

話し合いが成立すると、その内容を遺産分割協議書としてまとめます。

⑧ 話し合いが終わると名義変更や税務手続きへ進む

遺産分割協議がまとまると、
 ・ 預貯金の払戻し
 ・ 不動産の相続登記
 ・ 株式などの名義変更

を進めます。

また、相続財産が一定額を超える場合には、相続税の申告や納付も行います。

不動産については相続登記が義務化されています。
名義変更を行わないまま次の相続が発生すると、権利者が増え、「誰の印鑑が必要なのか分からない」という状態になることがあります。

そのため、話し合いが終わった後も必要な手続きを順番に進めていきます。

※遺言・遺産分割協議・相続放棄といった相続制度全体の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
 「遺言・相続手続きの全体像|相続制度は誰のために存在しているのか」

まとめ|相続手続きの流れを知ることが最初の一歩

親が亡くなった後は、多くの手続きが続きます。しかし、それぞれの手続きには順番があります。

順番行うこと主な内容
死亡届・葬儀後の対応当面の生活や支払いを把握する
遺言書の調査被相続人の考え方や財産承継の方向性を見る
戸籍収集誰が相続人になるのかを明らかにする
財産調査預貯金・不動産・借金などを把握する
相続放棄の判断原則3か月以内に判断する
遺産分割協議誰が何を取得するのかを決める
名義変更・払戻し手続き預金や不動産などを承継する
相続税申告(必要な場合)原則10か月以内に申告・納付する

親が亡くなった後に最初に目を向けたいのは、遺言書が残されているか、誰が相続人になるのか、どのような財産や借金があるのかという点です。
それらが見えてくることで、その後の話し合いや名義変更の進め方も見えてきます。

相続は、思いついた手続きから進めるものではありません。

亡くなった方が残した考え方を踏まえて、残された家族がこれからの生活を続けていくための手続きでもあります。
まずは全体の流れを知り、自分が今どの段階にいるのかを把握することから始めてみてください。

ご相談をご検討の方へ

相続手続きの進め方は、ご家庭の状況によって変わります。
遺言書の有無、不動産の有無、相続人の人数によっても必要な対応は異なります。
何から手を付ければよいのか迷ったときは、現在の状況を書き出しながら、どの段階にいるのかを見てみてください。
そのうえで、ご家庭に合った進め方を考えていくことが、円滑な相続手続きにつながります。