家族が亡くなると、死亡届の提出から相続放棄、相続税の申告、相続登記まで、さまざまな手続が必要になります。
それぞれ期限が異なるため、何から始めればよいのか、期限に間に合うのかと不安に感じる方もいるでしょう。

相続手続の期限を考えるうえで重要なのは、手続ごとに対象者と期限の起算点が異なることです。死亡日から一律に数えるのではなく、自分に必要な手続を調べ、それぞれの期限がいつから始まるのかを把握する必要があります。

この記事では、相続開始後の時間の流れに沿って、主な手続期限とその起算点、期限内に行うべきことを解説します。

相続手続の期限一覧|いつまでに何をするのか

相続開始後の主な手続と期限は、次のとおりです。

時期主な手続期限の起算点・条件
7日以内死亡届の提出死亡の事実を知った日から(国内で死亡した場合)
できるだけ早く遺言書の確認・相続人調査・相続財産調査各手続の要否を判断するために着手する
3か月以内相続放棄・限定承認自己のために相続が開始したことを知った時から
4か月以内被相続人の所得税準確定申告相続開始を知った日の翌日から(申告が必要な場合)
10か月以内相続税の申告・納付相続開始を知った日の翌日から(申告・納税が必要な場合)
1年以内遺留分侵害額請求相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から
3年以内相続登記相続開始と不動産の取得を知った日から
原則5年以内相続税の更正の請求など法定申告期限から(納め過ぎた税額を訂正する場合)

遺留分侵害額請求には、相続開始から10年という別の期間制限もあります。また、相続登記については、遺産分割が成立した後にも追加の申請義務が生じます。

一覧の「3か月」「10か月」などは、相続開始後の経過時間を示す目安です。 実際の期限は、各手続に定められた起算点から計算する必要があります。

相続開始後は遺言書・相続人・相続財産を調べる

相続が始まったら、まず次の事項を調べます。

  • 遺言書があるか
  • 誰が相続人になるか
  • 相続財産には何があるか

遺言書の有無によって相続の進め方は変わります。また、相続人や相続財産を調べることで、相続放棄を検討する必要があるか、相続税の申告対象になるかを判断するための情報が得られます。

特に、借金の有無や金額が分からない場合には、相続放棄・限定承認の熟慮期間である3か月を意識して財産調査を進める必要があります。 調査をしても承認・放棄を判断できないときは、期間内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることができます。

※遺言書の有無、相続人調査や財産調査などについては、以下の関連記事で解説しています。
 遺言書があると相続手続きはどう変わる?|ない場合との違いを解説
 相続人はどのように決まるのか|なぜ相続人調査が必要になるのか
 財産調査が必要となる理由は?|何を相続するのかを確認するため

3か月以内|相続放棄・限定承認

相続放棄と限定承認は、各相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。この期間を「熟慮期間」といいます。

相続放棄は、相続人としての権利義務を一切引き継がない手続です。一方、限定承認は、相続によって得た財産の範囲内でのみ、借金などの債務を引き継ぐ手続をいいます。

両者は申述の方法も異なり、相続放棄は相続人ごとに家庭裁判所へ申述できますが、限定承認は相続人全員が共同して申述しなければなりません。

熟慮期間内に相続放棄や限定承認をせず、期間の伸長も受けなかった場合には、原則として単純承認したものとみなされ、被相続人の借金なども引き継ぐことになります。

そのため、借金が多い可能性がある場合や、相続するかどうか迷っている場合には、財産調査と併せて熟慮期間の経過に注意する必要があります。

※相続放棄については、以下の記事で解説しています。
 相続放棄とは|初めから相続人ではなかったことになる制度

4か月以内|準確定申告

被相続人について所得税の確定申告が必要な場合には、相続人が被相続人の所得について準確定申告を行います。

申告期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。申告が必要な場合には、この期限内に申告と納税を行います。

申告の対象となるのは、原則としてその年の1月1日から死亡日までの所得です。事業所得や不動産所得がある場合のほか、給与所得者や年金受給者であっても、所得の状況によっては準確定申告が必要になります。

10か月以内|相続税の申告・納付

相続税は、すべての相続で発生するわけではなく、相続財産が基礎控除額を超える場合など、申告が必要なケースに限られます。

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

相続税の計算には、相続財産の評価や相続人の確定、遺産分割の状況などが関わります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」であり、財産の額や適用する特例などによって申告の要否が変わるため、相続財産を調べたうえで判断します。

また、遺産分割協議が10か月以内にまとまらなくても、相続税の申告期限は延びません。申告が必要な場合には、未分割の状態で税額を計算して期限内に申告・納税し、その後の分割結果に応じて必要な手続を行います。

1年以内|遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求の期間は、遺留分を有する人が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間です。

例えば、遺言によって全財産が第三者へ遺贈されていた場合でも、配偶者や子など遺留分を有する相続人は、不足する遺留分について金銭の支払いを請求できます。

この請求権は、上記の事実を知った時から1年間行使しなければ、時効によって消滅します。また、その事実を知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過すると権利が消滅します。

請求する場合には、期間内に相手方へ遺留分侵害額を請求する意思表示を行う必要があります。 請求後に金額を協議したり、支払いを受けたりすることとは区別して、まず期限内に請求権を行使することが重要です。

※遺留分侵害額請求については、以下の記事で解説しています。
 遺留分侵害額請求とは|遺言書があっても請求できるのはなぜか

3年以内|相続登記

相続によって不動産を取得した場合には、相続登記が義務付けられています。

申請期限は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です。

また、遺産分割が成立した場合には、遺産分割成立の日から3年以内に、その結果を反映した登記を申請する義務があります。

遺産分割がまとまらず、期限内に相続登記を申請することが難しい場合には、相続人申告登記によって基本的な申請義務を履行できます。ただし、相続人申告登記によって、遺産分割成立後の追加的な登記義務まで果たせるわけではありません。

これらの申請義務に正当な理由なく違反した場合には、10万円以下の過料の対象となります。

なお、2024年4月1日より前に開始した相続も、相続登記の義務化の対象です。 施行前に不動産の取得を知っていた場合には、原則として2027年3月31日が申請期限となります。

原則5年以内|相続税の更正の請求など

相続税を申告した後でも、財産評価の見直しや特例の適用などによって税額が変わることがあります。すでに納めた相続税が過大だった場合には、税務署へ更正の請求を行い、還付を受けられることがあります。

一般的な申告内容の誤りを理由とする更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内に行います。

ただし、相続税には、遺産分割によって税額が変わった場合など、別の期限が適用される特則があります。例えば、未分割の状態で相続税を申告した後に遺産分割が成立し、税額が減少する場合には、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。

このように、更正の請求は、その理由によって適用される期限が異なります。税額が変わる事実が生じたときには、どの期限が適用されるのかを調べる必要があります。

まとめ|必要な手続と期限の起算点から優先順位を決める

相続が始まったら、まず遺言書の有無、相続人、相続財産を調べ、自分に必要な手続を明らかにします。そのうえで、それぞれの期限がいつから始まるのかを調べ、期限までに必要な行為を終えられるよう、手続の順番を考えます。

特に相続放棄・限定承認は、財産調査の結果によって選択が変わるため、熟慮期間を意識して早めに調査を進める必要があります。また、相続税の申告は遺産分割がまとまらなくても期限が延びず、相続登記には遺産分割成立後の追加的な申請義務もあります。

「自分に必要な手続は何か」「その期限はいつから始まるか」「期限内に何をしなければならないか」を順に明らかにすることで、相続開始後に優先して進める手続を判断できます。

※相続手続の流れについては、以下の記事を参考にしてください。
 相続手続きは何から始めるか|親が亡くなった後に家族がたどる順番とその理由