家族が亡くなると、さまざまな相続手続が始まります。
「相続放棄は3か月以内」「相続税は10か月以内」など、それぞれ期限が異なるため、「何から始めればよいのか分からない」「期限を過ぎてしまわないか不安」という方もいるでしょう。

しかし、相続手続は期限だけを覚えて進めるものではありません。
相続が始まると、遺言書の有無や相続人の確認、相続財産の調査などを行い、その結果に応じて必要な手続が決まっていきます。
つまり、期限は独立して存在しているのではなく、相続手続の流れの中で設けられています。

この記事では、相続開始後の時間の流れに沿って、それぞれの期限と手続の内容を解説します。

相続手続は「期限」よりも「現在の段階」で考える

相続には、多くの期限があります。
しかし、すべての期限がすべての人に関係するわけではありません。

例えば、相続税が発生しない場合は相続税申告の期限を気にする必要はありませんし、相続放棄を考えていない人が家庭裁判所へ申述することもありません。
一方、相続放棄を検討しているのに 3か月を過ぎてしまうと、原則として単純承認したものとみなされます。

重要なのは「何日までか」を覚えることではなく、「現在、自分はどの段階にいるのか」を把握することです。
相続手続の流れを理解すると、自分に関係する期限も自然に見えてきます。

相続手続の期限一覧

相続開始後の主な期限を一覧にすると、次のとおりです。

時期主な手続
 7日以内死亡届の提出(通常は親族や葬儀社が対応) *1
 できるだけ早く遺言書の確認・相続人調査・相続財産調査
 3か月以内相続放棄・限定承認
 4か月以内被相続人の所得税準確定申告
 10か月以内相続税の申告・納付(必要な場合)
 1年以内遺留分侵害額請求 *2
 3年以内相続登記(相続により不動産を取得した場合)
 5年以内相続税の更正の請求など(該当する場合)

*1 死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に提出します。実務では、死亡届の提出とあわせて火葬許可申請などの手続も行われることが一般的です。
*2 遺留分侵害額請求とは、兄弟姉妹以外の一定の法定相続人に保障された最低限の相続利益が侵害された場合に、侵害額を請求できる制度です。

すべての期限がすべての人に当てはまるわけではありません。
まずは、自分に必要な手続がどれなのかを確認することが大切です。

相続開始後、最初に行うこと

相続が始まると、まず確認すべきは、
 ・ 遺言書があるか
 ・ 誰が相続人になるか
 ・ 相続財産には何があるか

という相続手続きを進めるにあたっての基本的な情報です。

遺言書の有無によって相続の進め方は変わります。相続人や相続財産が確定しなければ、相続放棄をするかどうかや、相続税が発生するかどうかも判断できません。
相続開始直後は、今後の手続を判断するための情報を整理する段階と考えると分かりやすいでしょう。

※相続手続の全体像や手続の流れを知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
 「遺言・相続手続きの全体像|相続制度は誰のために存在しているのか」

相続開始から3か月以内|相続放棄・限定承認

相続開始から3か月以内は、相続放棄や限定承認を選択できる期間です。

相続放棄とは、相続人としての権利義務を一切引き継がない手続です。
限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でのみ借金などの債務を引き継ぐ手続です。

この期間が設けられているのは、相続人が財産や借金の内容を調査し、相続するかどうかを判断するためです。
ただし、いつまでも相続人が決まらない状態が続くと、財産管理や債権者への支払いが進みません。
そのため、法律は3か月という期間を設け、相続人に判断を求めています。

借金が多い可能性がある場合や、相続するか迷っている場合は、この期限を特に意識する必要があります。

※相続放棄については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
 「相続放棄とは|初めから相続人ではなかったことになる制度」

相続開始から4か月以内|準確定申告

被相続人が事業所得や不動産所得などの確定申告を行っていた場合は、相続人が代わって所得税の準確定申告を行います。

期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。

被相続人が生前に確定申告をしていたか、申告が必要な所得があったかによって決まります。
会社員や年金受給者でも、状況によっては準確定申告が必要になることがあります。

相続開始から10か月以内|相続税の申告・納付

相続税は、すべての相続で発生するわけではありません。
相続財産が基礎控除額を超える場合など、申告が必要なケースに限られます。

期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

相続税を計算するためには、相続財産の評価や相続人の確定、遺産分割の状況などを整理する必要があります。
相続税が関係しそうな場合は、相続開始直後から財産調査を進めておくことが大切です。

相続開始から1年以内|遺留分侵害額請求

遺留分を有する相続人は、遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に、遺留分侵害額請求を行う必要があります。

遺言によって全財産が第三者へ遺贈されていた場合でも、配偶者や子など遺留分を有する相続人は、不足する遺留分について金銭の支払いを請求できます。
もっとも、遺留分が問題となるのは、遺言や生前贈与などによって遺留分が侵害されている場合に限られるため、すべての相続で関係する期限ではありません。

※遺留分侵害額請求については、以下の記事で詳しく解説しています。
 「遺留分侵害額請求とは|遺言書があっても請求できるのはなぜか」

相続開始から3年以内|相続登記

相続により不動産を取得した場合は、相続登記が義務付けられています。

期限は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内です。

相続登記を行わないまま放置すると、過料の対象となる可能性があるほか、その後の売却や担保設定などにも支障が生じます。不動産を相続した場合は、早めに登記手続を進めることが重要です。

相続開始から5年以内|更正の請求など

相続税を申告した後でも、財産評価の見直しや特例の適用などによって税額が変わることがあります。
過去に相続税を納め過ぎていた場合には、税務署への更正の請求によって還付を受けられることがあります。

このような手続には申告期限から5年以内の期限が設けられています。
すべての相続で関係する手続ではありませんが、相続税申告を行った場合は覚えておくと安心です。

相続手続は現在の段階に応じて期限を確認することが重要

相続手続には、3か月、4か月、10か月などさまざまな期限があります。

遺言書の有無や相続人、相続財産を確認し、その状況に応じて必要となる手続を整理することが大切です。
その上で、それぞれの手続に定められた期限を確認すれば、優先順位を判断しながら進めることができます。
また、相続放棄や相続税申告など、期限を過ぎると法律上の不利益が生じる手続もあるため、判断に迷う場合は早めに専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。

相続手続は、「いつまでか」という期限だけではなく、今どこまで手続が必要なのかを確認しながら進めることが、円滑な相続につながります。

※相続手続の流れについては、以下の記事を参考にしてください。
 「相続手続きは何から始めるか|親が亡くなった後に家族がたどる順番とその理由」