産業廃棄物収集運搬業許可を取得した後、取締役や監査役の就任・退任、代表者変更などが生じることがあります。
このような場合、
・会社の登記を変更したので手続は終わりだと思っていた
・産廃許可でも届出が必要なのか分からない
・どこまでの役員や株主が届出対象になるのか知りたい
・提出期限や必要書類を確認したい
という疑問を持つ方も少なくありません。
産業廃棄物収集運搬業許可では、役員や代表者に関する情報も許可取得時に届け出る事項に含まれています。
そのため、役員変更が生じた場合には、登記変更とは別に産廃許可の変更届にも対応することになります。
変更届により、許可行政庁は現在の代表者・役員・一定の株主等を把握し、欠格要件との関係を継続して確認します。役員等に変更があった場合も、許可行政庁が現在の経営体制を把握できる状態にしておくための手続です。
この記事では、役員変更後に必要となる変更届について、対象者、提出期限、必要書類、代表者変更時の注意点を中心に解説します。
※産業廃棄物収集運搬業許可制度の全体像については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管を除く)|取得にあたって押さえるべき要点」
役員変更後は産廃許可の届出が必要?
役員変更が生じた場合には、産廃許可の変更届が必要です。
会社法上の登記変更を行っても、産廃許可の情報が自動的に更新されるわけではありません。登記と産廃許可の変更届は、それぞれ別の手続として行います。
実務では、
・役員変更登記は終わっている
・銀行手続も済んでいる
・契約関係の変更も終わっている
という状況でも、産廃許可の変更届が未提出のままになっていることがあります。
また、複数の都道府県・政令市から収集運搬業許可を受けている場合には、それぞれの許可行政庁へ変更届を提出します。役員変更があったときは、自社が保有する許可を洗い出し、届出先ごとに手続を進める必要があります。
※変更届制度全体については、以下の記事で詳しく解説しています。
「産業廃棄物収集運搬業許可の変更届とは|役員・車両・住所変更で確認される内容」
どのような変更が届出対象になるのか
産業廃棄物収集運搬業許可では、法人の経営に関与する一定の人物が届出の対象となっています。
取締役・監査役などの変更
取締役や監査役の就任・退任などが対象となります。
廃棄物処理法上の「役員」には、取締役のほか、監査役など法人の業務を監査する立場の者も含まれます。
また、名称にかかわらず、法人に対して実質的な支配力を持つ者が欠格要件の確認対象となる場合があります。
取締役や監査役が新たに就任した場合には、変更内容を示す登記事項証明書のほか、新任者の住民票や誓約書など、必要な資料を添えて変更届を提出します。
神奈川県では、役員変更について、法人の登記事項証明書、役員・株主等に関する新旧対照表、新たに役員となった者の住民票、誓約書などが基本的な提出資料として示されています。
同じ人物が引き続き同じ役職に就く重任については、役員構成や登記事項証明書上の記録を踏まえて、提出先の取扱いに従います。必要書類についても、新たに役員へ就任した場合とは取扱いが異なることがあります。
代表者変更
代表取締役の交代も届出対象です。
代表者は、許可を受けている法人の経営体制を示す重要な情報の一つです。代表者が変わった場合には、変更後の内容を許可行政庁へ届け出ます。
添付書類は、新しい代表者がそれまで取締役として届け出られていた人なのか、新たに役員へ就任した人なのかによって変わることがあります。
神奈川県では、既存の取締役が代表取締役になるなど、すでに届け出られている人物の役職名が変わった場合、新任役員について求められる住民票・誓約書は不要とされています。
一方、新たに役員へ就任した人が代表者になる場合には、新任役員として必要となる資料も準備します。代表者変更では、誰が新しい代表者になったかに加えて、その人がこれまで許可行政庁へ届け出られていた人物かどうかによって必要書類を整理します。
株主・出資者の変更
一定割合以上の株主や出資者も届出対象です。
廃棄物処理法施行規則では、発行済株式総数の5%以上を保有する株主、または出資額の5%以上に相当する出資をしている者が対象とされています。
株主構成に変更があったときは、変更前後の持株割合を見て、5%以上の保有者に変動があるかを把握します。
神奈川県の様式では、新旧双方について、継続している者を含めて5%以上の株主等を記載する取扱いとなっています。
届出対象となる株主・出資者については、個人であれば住民票、法人であれば法人の登記事項証明書など、対象者に応じた資料を準備します。神奈川県の現行手引きでも、この区分が示されています。
役員変更と同じ時期に株主構成も動いている場合には、5%以上の株主・出資者について変更が生じていないかも把握しておく必要があります。
なぜ役員や株主の変更が届出対象になるのか
産業廃棄物収集運搬業許可では、役員や一定の株主・出資者も欠格要件の対象となります。
許可取得後に新たな役員や一定の株主・出資者が加わった場合、許可行政庁は、その人物を含めた現在の経営体制を把握する必要があります。
変更届には、許可取得時に届け出た経営体制を、その後の変更に合わせて更新する役割があります。
これによって、現在誰が法人の経営や支配に関与しているのかを把握し、欠格要件との関係を継続して審査できる状態が保たれます。
新任者について住民票や誓約書などの提出が求められるのも、このためです。
すでに許可行政庁へ役員等として届け出られている人物については、変更内容によって住民票や誓約書の再提出が不要となることがあります。神奈川県でも、すでに県へ役員等として届け出られている者が別の届出対象区分へ移る場合などについて、そのような取扱いが示されています。
※役員や株主・出資者が許可制度の中でどのように位置付けられているのかは、以下の記事も参考にしてください。
「産業廃棄物収集運搬業許可の要件とは|講習・車両・財産的基盤で確認されるポイント」
提出期限はいつまで?
変更届は、原則として変更の日から10日以内に提出します。法人の変更届のうち、登記事項証明書を添付する必要があるものについては30日以内です。
目安は次のように整理できます。
| 変更事項 | 提出期限の考え方 |
|---|---|
| 取締役・監査役等の変更 | 登記事項証明書を添付するため、通常は変更後30日以内 |
| 代表者変更 | 登記事項証明書を添付するため、通常は変更後30日以内 |
| 5%以上の株主・出資者変更 | 原則10日以内。登記事項証明書の添付を要する届出については30日以内 |
提出期限を判断する際は、その変更について登記事項証明書の添付が必要になるかを見ます。添付が必要な法人の変更届には30日以内の期限が適用されます。
役員変更が生じた場合には、変更日を起点として期限を把握し、登記手続と産廃許可の届出準備を並行して進めておくとスムーズです。
必要書類や提出方法については許可行政庁ごとに取扱いが異なる場合があるため、実際の届出は提出先の案内に沿って進めます。
代表者変更では許可証の取扱いも確認する
代表者が変更された場合には、変更届を提出するとともに、現在の許可証について必要となる対応も提出先の取扱いに沿って進めます。
神奈川県では、変更届に現在の許可証の写しを添付します。また、代表者変更など許可証の書換えを伴う変更では、郵送で書換え後の許可証を受け取る場合に、許可証送付用のレターパックプラス等を同封する取扱いが示されています。
許可証に関する取扱いは許可行政庁によって異なることがあるため、代表者変更の届出を準備する際に、許可証について求められる手続もあわせて把握しておきます。
役員変更届を忘れるとどうなるのか
役員変更届を提出しないままにすると、許可行政庁が把握している役員構成と、現在の役員構成に相違が生じます。代表者変更の場合には、行政庁に届け出られている代表者と現在の代表者が一致しない状態になります。
こうした未届の変更は、更新時に判明することがあります。
更新申請で過去の未届の役員変更が判明した場合には、その変更時期や経緯を整理し、必要な変更届に対応したうえで更新手続を進めることになります。
また、新たに就任した役員等が欠格要件に該当する場合には、許可そのものに影響する可能性があります。
役員等に変更があった時点で、届出対象となる人物と欠格要件との関係を把握し、期限内に手続を行うことが重要です。
※更新手続との関係については、以下の記事も参考になります。
「産業廃棄物収集運搬業許可の更新期限はいつまで?|更新前に見直したい実務ポイント」
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可を受けている法人で役員等に変更があった場合は、産廃許可の変更届にも対応します。
主な対象となるのは、取締役や監査役、代表者、一定割合以上の株主・出資者の変更です。
役員変更の登記を済ませても、その内容が許可行政庁へ自動的に反映されることはありません。
産廃許可については、変更内容に応じた書類をそろえ、定められた期限内に変更届を提出します。
提出期限は原則として変更の日から10日以内で、登記事項証明書を添付する法人の変更届については30日以内です。役員や代表者の変更では登記事項証明書を添付するため、通常は30日以内の届出となります。株主・出資者の変更では、添付書類によって期限が変わる場合があります。
複数の都道府県・政令市から許可を受けている会社では、それぞれの許可行政庁への届出も必要です。
役員等の変更が決まった段階で、自社が保有する許可と届出先を把握し、変更日から提出期限までの間に必要書類を揃えて手続を進めます。
変更届を提出しないまま時間が経過すると、更新時に過去の変更まで遡って対応することがあります。
役員等の変更に合わせて産廃許可の届出も行うことで、許可行政庁へ届け出ている経営体制を現在の会社の状態に合わせておくことができます。