1.制度の概要
※本記事は神奈川県の手引きを前提にしています。
産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物の収集運搬を業として営むためには、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、都道府県知事または政令市長の許可を受けなければなりません。
神奈川県では、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市がそれぞれ許可権者となる場合がある点に注意が必要です。
この許可では、予定している収集運搬事業について、必要な施設・能力を備え、継続して適正に運営できる体制が整っているかが審査されます。
具体的には、事業の用に供する施設と申請者の能力が許可基準に適合していること、欠格要件に該当しないことなどが見られます。
申請書に記載する取扱品目、運搬先、車両・容器、資金計画なども、予定している収集運搬事業の内容と相互に対応していることが求められます。
許可には、新規許可・更新許可・変更許可の3種類がありますが、本稿では新規許可を前提とします。
また、許可の取得にあたっては、「積替・保管を含むかどうか」も重要です。
積替・保管を予定していない事業であれば、積替・保管を除く収集運搬業許可で申請します。積替・保管を予定している場合には、申請する許可の内容や手続が異なります。
神奈川県では、積替・保管を除く収集運搬業について、収集運搬を行う区域によって県知事と政令市長のどちらの許可が必要になるかが決まります。
県内の一つの政令市内だけで積卸しが完結する場合には、その政令市長の許可が必要です。政令市を含む複数の市町村に積卸しの区域がまたがる場合には、神奈川県知事の許可を受けます。
この場合、積替・保管を伴わなければ、その政令市の収集運搬業許可を重ねて取得する必要はありません。
また、県知事への申請窓口は、個人の住所や法人の本店所在地などに応じて、県庁資源循環推進課または各地域県政総合センターとなります。
なお、新規許可の申請手数料は81,000円です。
2.手続の流れとボトルネック
新規許可申請では、対象となる講習会を修了し、有効な修了証を準備します。
講習会は、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施しています。修了証は、申請者が収集運搬業に必要な知識・能力を備えていることを示す資料として提出します。
法人の場合、講習を受講する人にも要件があります。
神奈川県では、法人の代表者、その業務を行う役員(監査役を除く。)、または一定の政令使用人が対象です。個人申請では、申請者本人または一定の政令使用人が受講対象となります。
新規講習の修了証は発行から5年間有効で、新規許可申請では申請日に有効な修了証が必要です。
講習修了後は、申請書類を整えて提出します。神奈川県では標準処理期間が60日間(土・日・祝日および年末年始の休日を除く。)とされており、審査を経て許可証が交付されます。
書類に不備があれば補正が必要となり、その補正に要した期間は標準処理期間に含まれません。
申請で補正につながりやすいのは、各資料の内容が対応していないケースです。
たとえば、事業計画では特定の品目を運搬するとしているのに、その品目に適した容器や運搬方法を説明できない、申請書に記載した車両と車検関係資料が対応していない、予定する事業内容に対して資金計画が不足している、といった場合には追加説明や補正が求められます。
申請書類を個別に揃えるだけで終わらせず、予定している収集運搬事業の内容と各資料が対応しているかを見ながら準備することが大切です。
3.申請書類の実務ポイント(何を見られているか)
ここからは、神奈川県で新規許可申請を行う場合に準備する主な書類を見ていきます。
住民票や登記事項証明書などの公的書類については、申請日前3か月以内に発行された原本が求められます。申請予定日から逆算して取得しておく必要があります。
申請書類(様式関係)
① 許可申請書
→ 申請の基本情報を記載する中核書類です。ほかの提出資料と内容が対応していることが前提となります。
② 事業計画書
→ 収集から搬入までの流れ、取扱品目、顧客想定などを記載し、予定する収集運搬事業の内容を示します。
取扱品目については、許可を取得したい種類を列挙するだけでは足りません。どこから発生し、どのような性状の廃棄物を、どの車両・容器で、どこへ運搬するのかという形で事業計画を示します。
許可後に実際に行う収集運搬と、申請時の事業内容をつなぐ中心的な資料です。
③ 運搬車両の写真
→ 実際に使用する車両を示します。ナンバーや車両表示などを識別できる状態で準備します。
④ 運搬容器の写真
→ 飛散・流出を防止できる設備であることを示します。取り扱う廃棄物の性状に適した容器を用意します。
車両と容器は、申請する廃棄物を飛散・流出させずに運搬できる組合せとして考えます。液状物、泥状物、粉状物などを取り扱う場合には、その性状に対応した運搬方法が求められます。
⑤ 事業開始資金及び調達方法
→ 事業開始に必要な資金をどのように準備するのかを示します。借入を利用する場合には、返済計画も含めて事業計画との関係が見られます。
⑥ 資金調書(個人事業主)
→ 個人事業主の資産状況を示し、事業を開始・継続するための経理的基礎を審査する資料となります。
⑦ 誓約書
→ 欠格要件に該当しないことを申告する書類です。
欠格要件は申請法人だけに関係するものではなく、役員や一定の株主・出資者、政令使用人など、法令上の対象者にも及びます。
申請者に関する書類
⑧ 定款(法人)
→ 法人の事業目的などを示す資料です。
⑨ 登記事項証明書(法人)
→ 法人の基本情報や役員構成などを示します。
⑩ 住民票(役員・個人事業主)
→ 本人を特定し、欠格要件を審査するための資料です。
神奈川県では、本籍が記載され、マイナンバーの記載がない住民票を提出します。外国人については、国籍・地域が記載された住民票を使用します。
⑪ 住民票(株主等)
→ 一定割合以上の株主・出資者を対象として提出します。
対象となるのは、発行済株式総数の5%以上を保有する株主、または出資総数の5%以上に相当する出資をしている者です。5%未満の株主等については、神奈川県の手引き上、住民票等の提出対象から外れます。
⑫ 株主(法人)の登記事項証明書
→ 届出対象となる株主が法人の場合に、その法人を特定する資料として提出します。
⑬ 住民票(政令使用人)
→ 支店等の責任者として政令使用人を置く場合に、その人物を特定する資料です。
神奈川県の手引きでは、県所管区域を事業活動の範囲とする支店等の代表者で、産業廃棄物処理委託契約の締結権限を持つ者が政令使用人として扱われます。
⑭ 権限証明書
→ 政令使用人に、産業廃棄物処理委託契約を締結する権限が付与されていることを示す資料です。
技術的能力に関する書類
⑮ 講習会修了証の写し
→ 申請者側の対象者が、収集運搬業に必要な知識・能力を備えていることを示します。
修了証の名義人が申請法人の受講対象者に該当し、申請日に有効期間が残っていることが求められます。有効な修了証がなければ、神奈川県では申請を受け付けられません。
経理的基礎に関する書類
⑯ 貸借対照表(直前3年)
→ 資産・負債・純資産の状況を示し、財務状態を見る資料となります。
⑰ 損益計算書(直前3年)
→ 収益や費用の状況を示し、事業の継続性を審査する資料となります。
⑱ 株主資本等変動計算書(直前3年)
→ 純資産の増減や資本構成の変化を示します。
⑲ 個別注記表(直前3年)
→ 決算書の数値だけでは分からない会計方針や補足情報を示します。
⑳ 法人税納税証明書(直前3年)
→ 法人について、決算関係書類とともに経理的基礎を審査する資料として提出します。
㉑ 所得税納税証明書(直前3年)
→ 個人事業主について、経理的基礎を審査する資料として提出します。
経理的基礎の審査では、直前の決算数値だけを見るのではなく、継続して収集運搬事業を行える財務状態にあるかが見られます。
財務状況によって追加資料や説明が必要になる場合もあるため、赤字や純資産の状況に懸念がある場合には、申請直前まで待たず、早めに申請窓口の取扱いを調べておく方が実務的です。
運搬施設等に関する書類
㉒ 電子車検証の写し
→ 使用する車両の登録情報や使用関係を示す資料です。
現在の神奈川県手引きでは、自動車検査証記録事項または車検証の写しが申請関係資料として扱われています。
申請書、車両写真、車検関係資料に記載された登録番号や使用者が、同一の車両を示す内容になっている必要があります。リース車両などを使用する場合には、その使用権限を示す資料も関係します。
既存許可がある場合の書類
㉓ 他都道府県等の許可証の写し
㉔ 政令市の許可証の写し
㉕ 本県許可証の写し
→ 既存の許可内容を示す資料です。
神奈川県では、既存許可の種類や今回の申請内容によって、添付する許可証が異なります。保有している許可証をすべて添付するわけではなく、提出書類一覧に従って今回の申請に該当するものを提出します。
その他の書類
㉖ 委任状
→ 許可証の受取りを申請者以外が行う場合に提出します。
以上の書類は、それぞれ別個に審査される資料でありながら、全体として一つの収集運搬事業を示しています。
この許可では、事業計画、車両・容器、人的体制、資金計画が、実際に予定している収集運搬事業の内容と対応していることが重要です。
誰が許可事業を運営し、誰が講習修了者となり、必要に応じて誰が政令使用人として契約権限を持つのかまで具体化しておけば、申請書類に記載する事業体制を実際の運営にもつなげやすくなります。
※許可の要件や審査されるポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「産業廃棄物収集運搬業許可の要件とは|講習・車両・財産的基盤で確認されるポイント」
4.積替・保管の違いと現実的な選択
積替・保管を含まない場合は、積替・保管のための施設を設けず、排出場所から搬入先まで直接運搬する事業計画になります。
途中で積替えや一時保管を予定している場合には、その事業内容に対応した許可が必要です。
積替・保管を含む場合には、施設基準や周辺環境への配慮などが関係し、神奈川県でも積替・保管場所を所管する窓口への事前連絡が案内されています。
どちらの許可を選ぶかは、実際の運搬工程に積替え・保管が必要かどうかを基準に考えます。
当初は排出場所から処分先まで直接運搬し、事業拡大に伴って積替・保管が必要になった段階で変更許可を検討するケースもあります。
一方、当初から途中での積替えや一時保管を予定しているのであれば、その事業内容に対応した許可を取得する必要があります。
積替・保管を含まない許可を取得した後に、実際の運用で積替えや保管を行うことはできません。
予定している物流の流れを具体化し、その内容に合った許可を選ぶことが重要です。
5.まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可では、予定している事業内容を具体化し、その内容を事業計画、車両・容器、人的体制、資金計画などの申請資料へ一貫して反映することが重要です。
どこで、どの産業廃棄物を積み、どの車両・容器で、どこへ運搬するのか。その事業を誰が運営し、必要な資金をどのように確保するのか。
こうした事業の流れが明確になれば、申請書類に記載すべき内容も具体的になります。
また、許可取得時に申請した内容は、その後の実際の運用にもつながります。取扱品目、運搬車両、積替・保管の有無などを申請内容に沿って運用し、変更が生じた場合には必要な手続へつなげていくことになります。
申請書類の内容が対応していても、施設・能力などの許可基準を満たさず、欠格要件に該当する場合には許可を受けることはできません。
予定する事業そのものが許可基準を満たしていることが前提です。
許可申請の準備段階から取得後の運用まで見据え、実際に行う収集運搬事業を具体化したうえで、その内容を申請書類へ反映していくことが、産業廃棄物収集運搬業許可を取得するうえでの実務上の要点です。
※許可取得における費用や資金計画については、以下の記事で詳しく解説しています。
「産業廃棄物収集運搬業許可の費用はいくら?|金額の目安と内訳、営業開始後にかかる費用まで解説」