産業廃棄物収集運搬業を行うには、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
許可取得を検討している方の中には、
・ 講習会は必ず受講しなければならないのか
・ どのような車両が必要なのか
・ 財産的基盤では何が見られるのか
といった疑問を持つ方も多いでしょう。
収集運搬業許可には複数の要件がありますが、それぞれが独立して設けられているわけではありません。
廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制し、適正な分別・保管・収集・運搬・再生・処分等の処理を行うことにより、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。
そのため収集運搬業許可では、申請者が収集運搬業務を継続して行う体制を備えているかという観点から審査が行われます。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業許可における主な要件と、申請準備の段階で押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
なお、産業廃棄物収集運搬業許可の全体像や取得手続の流れについては、以下もあわせてご覧ください。
「産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管を除く)|取得にあたって押さえるべき要点」
なぜ許可要件が設けられているのか
① 廃棄物処理法が保護しているもの
収集運搬業許可は、単に事業者の営業を認めるための制度ではありません。
廃棄物処理法が目指しているのは、「廃棄物の適正処理」「処理責任の明確化」「生活環境の保全」「公衆衛生の向上」です。
産業廃棄物は、排出事業者から収集運搬業者、処分業者へと引き継がれながら処理されます。
そのため、収集運搬業者には適正な運搬体制と法令遵守が求められます。
② 許可制度の役割
収集運搬業許可は、廃棄物処理の一部を担う事業者として適切な体制を備えているかを判断するための仕組みです。
許可申請では、
・ 収集運搬業務に必要な知識を備えているか
・ 実際に運搬できる体制があるか
・ 事業を継続できる財務基盤があるか
・ 欠格事由に該当しないか
が申請資料によって示されます。
講習会、車両、財産的基盤、欠格事由といった項目は、それぞれを個別に評価するためのものではありません。
これらは、申請者が適正な収集運搬業務を行う体制を備えているかを判断するための要件として位置付けられます。
許可申請で確認される主な要件
① 講習会修了などの知識要件
収集運搬業では、廃棄物処理法やマニフェスト制度、委託基準などに関する理解が求められます。
そのため許可申請では、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会の修了証が必要になります。
修了証は、収集運搬業務に必要な法令や管理知識を備えていることを示す資料として位置付けられています。
許可申請では、収集運搬業務を適正に行うために必要な知識を有していることを申請書類によって示します。
申請時には修了証を添付するため、受講予定の段階では申請を進めることができません。
② 車両や容器などの運搬体制
収集運搬業を行う以上、実際に産業廃棄物を運搬できる体制を備えている必要があります。
そのため申請時には、
・ どの車両を使用するのか
・ どの容器を使用するのか
・ どこに駐車するのか
を申請書類で示します。
また、車両については、実際に使用できる状態にあることを資料によって示すことになります。
車検証やリース契約書、使用承諾書などを添付するのはそのためです。
許可申請では、使用する車両を申請書に記載します。
そのため、使用予定車両が決まっていない場合や、使用権原を示す資料が揃っていない場合には、申請書に記載する内容そのものが定まりません。
③ 財産的基盤
収集運搬業は、継続的な事業活動として行われます。
そのため申請者は、継続して収集運搬業務を行うことができる財務状況を資料によって示すことになります。
資料としては、決算書・貸借対照表・損益計算書などが用いられます。
また、財務状況によっては追加資料や説明資料の提出が必要になることもあります。
例えば、債務超過であっても直ちに許可を受けられなくなるわけではありませんが、今後どのように事業を継続していくのかを説明する資料の提出が必要になることがあります。
財産的基盤では、単に利益が出ているかどうかだけではなく、継続して収集運搬業務を行える状況を資料によって示せるかが論点になります。
④ 欠格事由
収集運搬業許可では、欠格事由に該当しないことも要件となります。
欠格事由は、法令違反歴や一定の事情がある場合に許可を制限する仕組みです。
例えば、暴力団関係者や、廃棄物処理法などで一定の法令違反歴がある場合、許可を受けられないことがあります。
収集運搬業は生活環境の保全に直接関わる事業であるため、欠格事由は許可制度の前提となる適格性に関する要件として位置付けられています。
許可申請で問題になりやすいポイント
講習会の受講だけでなく、車両関係や財務関係で補足説明や補正が必要になるケースにも注意が必要です。
例えば車両関係では、
・ 車検証上の名義が異なる
・ リース契約の内容が整理できていない
・ 使用承諾の確認が必要になる
・ 駐車場所との関係を説明する必要がある
といったケースがあります。
また、財産的基盤については、
・ 債務超過
・ 純資産の状況
・ 財務改善の説明
などが論点になることがあります。
許可要件を検討する際は、単に必要書類を集めるだけでは足りません。
どの車両を使用するのか、どのような財務状況で事業を行うのかなど、申請記載内容と添付資料の内容が一致している状態にしておく必要があります。
これらが定まっていない場合は、申請書に記載する内容そのものを決めることができません。
許可申請前に確認しておきたいチェックポイント
許可申請を進める前に、次の事項を確認しておきましょう。
・ 講習会は受講済みか
・ 使用予定の車両は確定しているか
・ 車両の使用権原を説明できるか
・ 駐車場所を確保しているか
・ 財務資料は揃っているか
・ 欠格事由に該当しないか
これらを事前に整理しておくことで、申請時の補正や追加説明を減らすことができます。
また、車両関係や財務状況に不安がある場合は、申請前の段階で専門家へ相談することも有効です。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可では、
・ 講習会修了などの知識要件
・ 車両や容器などの運搬体制
・ 財産的基盤
・ 欠格事由
が審査対象となりますが、これらは単なる個別要件ではありません。
申請者が適正な廃棄物処理の一部を担うことができるかを判断するための要件でもあります。
また、許可申請では単に必要書類を提出するだけではなく、現在の事業体制をどのように申請書類で示すのかを固めておく必要があります。
講習修了証は必要な知識を備えていることを示す資料であり、車両関係書類は実際の運搬体制を示す資料です。
また、財務資料は継続的な事業運営が可能かを説明するための資料として位置付けられています。
許可申請を検討する際は、必要書類を揃えるだけではなく、実際の事業体制や財務状況をどのように申請書類で示すのかという視点で準備を進めることが大切です。
その結果として、産業廃棄物が排出から収集運搬、処分まで適正に処理される体制が維持され、生活環境の保全及び公衆衛生の向上という廃棄物処理法の目的の実現につながります。
※許可制度の全体像や取得手続の流れについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
「産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管を除く)|取得にあたって押さえるべき要点」