営業所技術者が退職すると、後任者の選任や変更届の提出など、さまざまな対応が必要になります。

その中でも最も重要なのは、営業所ごとの建設業許可の要件を継続して満たすことです。
営業所技術者は建設業許可の要件の一つであり、退職によって後任者を配置できなくなると、許可そのものに影響する可能性があります。

※営業所技術者の位置づけや要件については、以下の記事で解説しています。
 「営業所技術者とは|要件・判断基準・実務上の落とし穴を解説」

この記事では、営業所技術者が退職した場合に実務上どのような対応が必要なのか、その理由とともに解説します。

営業所技術者が退職すると何が起こるのか

営業所技術者は、営業所ごとに配置が義務付けられている建設業許可の要件です。

例えば、本店営業所に営業所技術者が1人しかいない会社で、その人が退職した場合、本店には営業所技術者が配置されていない状態になります。
この状態が続けば、営業所ごとに営業所技術者を配置するという許可要件を満たせなくなります。

そのため、営業所技術者の退職が決まった段階で、後任者を配置できるかどうかを確認する必要があります。

なぜ継続して配置しなければならないのか

建設工事は、人命や財産、公共の安全に大きな影響を及ぼします。
そのため建設業法は、一定の技術的能力を備えた事業者だけが建設業を営める制度を採用しています。

しかし、許可を取得した時点だけ技術的能力があっても、その後に営業所技術者が退職し、営業所技術者が配置されない状態になれば、安全で適正な建設工事を継続して行うことはできません。
そこで建設業法は、営業所ごとに営業所技術者を配置し、その体制を営業期間中も継続して維持することを許可要件としています。

営業所技術者は、営業所が継続して建設業を営むための技術管理体制を支える制度上の重要な存在です。

※建設業許可制度全体の仕組みや、営業所技術者がどのような位置付けにあるかを確認したい方は、
 こちらの記事をご覧ください。
 「建設業許可制度と申請の流れを徹底解説|制度趣旨から許可要件・手続きまでを整理」

変更届は適切な配置を確認するための手続き

営業所技術者が退職した場合は、変更届の提出が必要になります。
変更届が求められる理由は、営業所技術者の氏名を行政へ知らせるためではありません。

建設業許可は、取得した後も営業期間を通じて許可要件を維持することが前提となっています。
そのため行政は、営業所技術者が交代した後も、その営業所が引き続き許可要件を満たしているかを継続して確認する必要があります。

例えば、Aさんが退職し、Bさんが後任となった場合には、行政はBさんが営業所技術者の要件を満たしているかを確認します。
この確認によって、後任者が適切に配置されていることを把握できます。

つまり、変更届は営業所技術者の異動を報告するための制度ではなく、営業所技術者が適切に配置されていることを行政が確認するための届出です。

※営業所技術者の配置は、許可取得時だけでなく、取得後の維持管理も重要になります。
 建設業許可取得後に必要となる年間の手続きについては、こちらの記事で整理しています。
 「建設業許可を取った後に何をする?|決算変更届・変更届・更新・経審を年間の流れで整理【神奈川県】」

退職日までに後任者の配置を準備することが重要

営業所技術者の退職が決まったら、実務ではできるだけ退職日前に後任者を配置できるよう準備を進めます。

例えば、
 ・ 社内に営業所技術者の要件を満たす人がいるか確認する
 ・ 資格や実務経験を確認する
 ・ 後任者の配置日を退職日に合わせて調整する
 ・ 変更届の準備を進める

といった対応を行います。

営業所技術者が変更された場合には、その変更があった日の2週間以内に変更届を提出しなければなりません。
なお、提出書類や様式などの運用は都道府県によって異なる場合があるため、事前に所管行政庁へ確認すると安心です。

退職後に後任者を探し始めると、営業所技術者が不在となる期間が生じるだけでなく、変更届の提出にも支障が生じる可能性があります。
退職前から後任者を配置できるよう準備し、営業所技術者が不在となる期間を生じさせないことが重要です。

後任者を営業所技術者として届け出る場合は、変更届とあわせて、営業所技術者としての要件を満たしていることを確認するための書類を提出します。

提出書類は都道府県によって異なる場合がありますが、一般的には次のような書類が必要です。
 ・ 営業所技術者変更届
 ・ 資格者証の写し(資格要件で証明する場合)
 ・ 実務経験証明書など(実務経験で証明する場合)
 ・ 健康保険証や雇用契約書など、常勤性を確認する書類
 ・ その他、所管行政庁が求める書類

提出書類や様式は都道府県によって異なることがあるため、事前に所管行政庁の案内を確認すると安心です。

※営業所技術者の変更届の対象や期限については、以下で詳しく解説しています。
 「建設業許可の「変更届」はいつ・どこまで必要か【神奈川県】」

後任者確保できないと許可要件を欠く状態になる

後任者を確保できないまま営業所技術者が退職すると、その営業所は営業所技術者が配置されていない状態になります。
この状態は、建設業許可の要件を欠いた状態です。

行政は営業所技術者が配置されていない状態を把握した場合、是正を求めることがあります。
その後も改善されない状態が続くと、建設業許可の取消しなどにつながる可能性があります。

営業所技術者の退職は、人事異動として処理する問題ではなく、建設業許可を継続できるかどうかに直結する問題として対応する必要があります。

退職対応は許可維持のための実務そのもの

建設業法は、建設工事が適切な技術管理の下で継続して行われることを求めています。
そのため、営業所ごとに営業所技術者を配置し、その体制が営業期間を通じて維持されていることを建設業許可の要件としています。

行政は、その状態を営業所技術者の変更届によって継続的に確認しています。
変更届は単なる届出手続ではなく、営業所技術者が適切に配置されていることを確認するための制度です。

営業所技術者が退職した場合は、退職日までに後任者を配置し、営業所技術者が不在となる期間を生じさせないことが最も重要になります。
そのうえで変更届を行政へ届け出ることで、営業所が引き続き建設業許可の要件を満たしていることを確認してもらい、建設業を継続できる状態を維持していくことが、実務上の適切な対応といえます。