「売上や技術者数は大きく変わらないのに、なぜ経審の点数に差が出るのか」

経営事項審査(経審)の総合評定値(P点)は、完成工事高(X1)、自己資本額・利益額(X2)、経営状況(Y)、技術力(Z)、その他の審査項目(社会性等)(W)によって構成されます。

点数差の原因を見るときは、まずP点をX1・X2・Y・Z・Wに分け、どの評点が変動しているかを確認します。そのうえで、変動した評点を構成する工事実績、財務数値、技術職員、評価項目まで遡ることで、差が生じた理由を特定できます。

この記事では、同規模の会社でも経審の評点に差が生じる理由を、完成工事高、技術職員、財務内容、社会性等の各評価項目に沿って整理します。

経審の点数はX1・X2・Y・Z・Wのどこで差が出ているかを見る

経審の総合評定値(P点)は、X1・X2・Y・Z・Wを一定の割合で組み合わせて算出します。2026年7月1日以降の申請に適用される評価項目とウェイトは次のとおりです。

評点主な評価内容ウェイト点数差を見るときの主な対象
X1完成工事高(許可業種別)25%経審を受ける業種の完成工事高
X2自己資本額、利払前税引前償却前利益15%自己資本額、利益額
Y経営状況20%利益、負債、自己資本、キャッシュフローなど
Z技術職員数、元請完成工事高(許可業種別)25%技術職員の資格・人数、元請完成工事高
Wその他の審査項目(社会性等)15%担い手確保、営業継続、防災、法令遵守、経理、建設機械など
PX1・X2・Y・Z・Wを合算した総合評定値―0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W

X1とZは許可業種別に評価されるため、会社全体の売上高や技術者数が近くても、経審を受ける業種の完成工事高、元請完成工事高、技術職員の構成によって評点差が生じます。

工事実績の差はX1とZに分けて確認する

工事実績は、完成工事高(X1)と、技術力(Z)のうち元請完成工事高に反映されます。

完成工事高(X1)は経審を受ける業種ごとに評価される

決算変更届で提出する工事経歴書や直前3年の各事業年度における工事施工金額は、その後の経審で使用する工事実績につながります。完成工事高を見るときに重要なのは、実際に施工した工事を、建設業法上どの建設工事に区分しているかです。

例えば、電気工事・管工事・機械器具設置が混在する工事では、実際の工事内容に応じて建設工事の種類を判定し、その業種の完成工事高へ計上します。X1は許可業種別に算定されるため、会社全体の完成工事高ではなく、経審を受ける業種に計上された完成工事高が評点に反映されます。

経審では、工事種類別完成工事高・工事種類別元請完成工事高を申請し、工事実績を確認できる資料によってその内容の審査を受けます。神奈川県知事許可業者が申請する場合の確認資料や提出方法など、工事種類別完成工事高・工事種類別元請完成工事高などの申請様式が定められています。

元請完成工事高は技術力(Z)に反映される

元請完成工事高は技術職員数とともにZを構成するため、同じ業種で完成工事高が近い会社でも、元請完成工事高に差があればZの評点も変わります。工事実績から点数差を見る場合は、経審を受ける業種について、完成工事高がいくらあるか、そのうち元請完成工事高がいくらあるかを分けて見ます。

技術力(Z)は技術職員の構成によって差が出る

Zを構成するもう一つの要素が、許可業種別の技術職員数です。

技術職員は資格と申請業種の組み合わせで評価される

技術職員は資格等に応じた区分で評価されるため、在籍する技術者の総数が同じでも、経審を受ける業種について誰を技術職員として申請し、その資格がどの区分で評価されるかによってZの評点は変わります。

Zの点数を見る際は、在籍する資格者の総数ではなく、経審を受ける業種に算入している技術職員とその評価区分を見ます。申請時には技術職員名簿と資格等の確認資料が必要となり、神奈川県知事許可業者については県の手引きに定める資料によって確認を受けます。

財務面の差はX2とYに分けて確認する

売上規模が近い会社でも、自己資本、利益、負債などの財務内容が異なれば、X2とYに差が生じます。

X2は自己資本額と利益額を評価する

X2では、自己資本額と利払前税引前償却前利益が評価されます。自己資本の蓄積や利益額の違いがX2の評点差となるため、完成工事高を見るX1とは分けて確認します。

Yは財務指標から経営状況を評価する

経営状況分析では、負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量の4分野から経営状況(Y)が算出されます。利益、自己資本、負債、キャッシュフローなどの財務内容が異なれば、売上規模が近い会社でもY評点は変わるため、点数差を見る際は経営状況分析の各財務指標まで確認します。

社会性等(W)はどの評価項目が評点差につながっているかを見る

Wでは、完成工事高や財務内容とは別に、担い手の育成・確保、営業継続、防災活動、法令遵守、建設業の経理、研究開発、建設機械、認証・登録などが評価されます。2026年7月1日施行の改正後は、これら8区分で構成されています。

加点対象となる取組があっても、審査基準を満たし、申請上その事実を確認できることが必要です。神奈川県でも2026年7月1日以降の申請に対応した様式と確認資料が定められているため、該当する評価項目について必要な資料を確認します。

点数が伸びないときはP点から原因となる項目へ遡る

経審点数を見直すときは、まず前年の自社評点などと比較して、X1・X2・Y・Z・Wのどこが変動しているかを見たうえで、変動した評点について次の構成要素を確認します。

  • X1 : 経審を受ける業種の完成工事高
  • X2 : 自己資本額、利益額
  • Y : 経営状況分析の各財務指標
  • Z : 経審を受ける業種の元請完成工事高、技術職員
  • W : 該当する社会性等の評価項目

例えばX1が下がっている場合は、会社全体の売上高ではなく、経審を受ける業種の完成工事高が前年からどう変化したかを見ます。Zであれば、元請完成工事高と技術職員を分け、技術職員については資格区分や申請業種への算入状況まで確認します。

P点から各評点へ、さらにその評点を構成する実績や数値へ順に範囲を絞ることで、点数差が生じた原因を、実際の工事実績、財務内容、技術職員、取組の変化まで特定できます。

まとめ|評点差の原因を次の経審に向けた課題へつなげる

経審の点数差を見るときは、まずX1・X2・Y・Z・Wのどこが変動したかを特定し、その評点を構成する工事実績、財務数値、技術職員、社会性等の評価項目まで遡ります。

完成工事高や元請完成工事高は実際の受注・施工実績、X2とYは会社の財務内容、Zは技術職員の構成、Wは各評価項目への取組がそれぞれ評点の前提となるため、毎年の経審結果を各評点まで分解して比較することで、次の審査基準日に向けて見直す対象を具体的にできます。