亡くなった方の自筆証書遺言が見つかったとき、「まず検認が必要なのか」「検認後は何をすればよいのか」「遺言に書かれていない財産はどう扱うのか」と迷うのではないでしょうか。

自筆証書遺言がある相続では、最初に法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していたものかを確認します。法務局で保管されていた場合は家庭裁判所の検認が不要ですが、自宅などで保管されていたものは、原則として検認を受けなければなりません。

その後、遺言の内容と相続開始時の法定相続人・財産状況を照合し、遺言によって承継先が決まるもの、遺産分割協議が必要なもの、遺言執行者が担当する範囲を明らかにします。

この記事では、自筆証書遺言が見つかった後、記載された内容を今回の相続にどこまで適用できるのかを確認し、預貯金の払戻しや不動産登記などへ反映するまでの流れを解説します。

自筆証書遺言がある場合の相続手続きの流れ

自筆証書遺言が見つかった後は、おおむね次の6つの工程で対応します。

 1. 保管方法を判別し必要に応じて検認または遺言書情報証明書の取得を行う
 2. 遺言内容と遺言執行者の指定を確認する
 3. 法定相続人と相続財産を調査し遺言の記載と照合する
 4. 遺言による承継と遺産分割の対象を区分する
 5. 遺言執行者の担当範囲を確認し各財産を承継する
 6. 期限のある手続と未処理事項を確認する

以下では、この流れに沿って具体的に解説します。

1. 自筆証書遺言の保管方法と検認

自筆証書遺言が見つかったら、最初に法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していたものか、自宅などで保管されていたものかを判別します。

法務局で保管されている場合、相続開始後に相続人、受遺者、遺言執行者などが遺言書情報証明書の交付を請求できます。この証明書には保管された遺言書の画像情報が印刷されており、その後の相続手続にも使用できるほか、家庭裁判所の検認は不要です。

自宅などで保管されていた場合は、発見した相続人が遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ提出して検認を請求します。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとに開封するため、自分で開封せず、そのまま検認を申し立てます。

検認は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるとともに、その形状、加除訂正の状態、日付、署名などを検認時点で明確にし、その後の偽造・変造を防止するための手続です。ただし、遺言の有効・無効を判断するものではないため、検認を終えても記載内容の法的な有効性まで確定するわけではありません。

保管方法に応じた手続を終えた後は、遺言にどのような承継内容が定められているのかを読み取ります。

※遺言書を発見した際の対応については、以下の記事も参考にしてください。

2. 遺言内容と遺言執行者の確認

検認が必要な場合はこれを終え、法務局保管であれば遺言書情報証明書を取得したうえで、遺言内容を確認します。

ここでは、誰がどの財産を取得するのかに加え、相続人以外への遺贈、遺言執行者の指定、個別に記載されていない財産を処理する条項の有無を見ます。「その他一切の財産を妻に相続させる」といった包括的な条項があれば、個別に列挙されていない財産にも及ぶことがあります。

この段階で把握するのは、遺言者が生前に予定していた承継内容です。ただし、作成後に法定相続人の範囲や財産内容が変わっている可能性があるため、記載だけで今回の承継先を確定することはできません。

そこで、相続開始時の法定相続人と財産を調査し、遺言の内容と照合します。

3. 法定相続人と相続財産の調査

自筆証書遺言の作成から相続開始までの間に、法定相続人の範囲や財産内容が変わることがあります。

まず戸籍を収集し、相続開始時の法定相続人を確定します。遺言で取得者とされた人が先に死亡していたり、作成後の婚姻・離婚・出生・死亡によって法定相続人が変わっていたりすることがあるためです。遺産分割が必要となる場合には、協議に参加する相続人も確定しておかなければなりません。

あわせて、相続開始時に存在した財産を調査します。預貯金の入出金、不動産の売買、有価証券の取得などにより、遺言作成時とは内容が変わっていることがあり、記載された口座がすでに解約されている一方で、新しい預金口座や不動産が増えている場合もあります。

預貯金、不動産、有価証券などを調査した後は、遺言の記載と一つずつ照合します。これにより、記載された財産が相続開始時にも存在しているか、作成後に増えたものがあるか、それらに承継先を定める条項が及ぶか判断できます。

※相続人調査や財産調査については、以下の記事で詳しく解説しています。

4. 遺言による承継と遺産分割

相続開始時の財産と遺言を照合したら、各財産について遺言に従って承継するのか、遺産分割協議で承継先を決めるのかを判別します。

たとえば、「自宅の土地建物を長男に相続させる」と記載され、その不動産が相続開始時にも存在していれば、その内容に従って長男が取得します。
個々の財産名が記載されていなくても、「その他一切の財産を妻に相続させる」といった条項によって取得者が決まることがあります。

一方、遺言全体を確認しても承継先が定まらない財産については、相続人全員で遺産分割協議を行います。

たとえば、自宅と特定の預金口座について取得者が指定された後、新たに別の預金口座が開設されていた場合、その口座まで対象とする条項があれば遺言に従います。該当の記載がなければ、分割協議によって承継先を決めます。

このように、一つの相続の中に、遺言に従って承継する財産と、遺産分割協議によって承継先を定める財産が併存することがあります。

※遺産分割協議については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

5. 遺言執行と財産承継

自筆証書遺言に遺言執行者が指定されている場合、実際に就任するかを確認し、その権限の範囲を明らかにします。

遺言執行者は、遺言内容を実現するために必要な行為を担います。これに対し、遺言で承継先が決まらない財産の遺産分割は相続人が行い、相続税申告や相続放棄なども別途対応します。

相続放棄を検討している場合は、財産の処分などが単純承認に当たることがあるため、承継に着手する前に判断と申告が必要です。

担当者と承継先が定まったら、不動産登記、預貯金の払戻しや有価証券の名義変更などを行います。法務局、銀行や証券会社等の金融機関へ、自筆証書遺言、遺言書情報証明書、必要に応じて検認済証明書、戸籍その他の書類を提出します。

遺言や遺産分割によって決まった内容は、こうした払戻しや登記、名義変更を通じて実際の財産へ反映されます。

※遺言執行者、執行にかかる費用などについては、以下の記事で解説しています。

6. 期限管理と未処理事項の確認

遺言の確認や財産承継と並行して、期限が定められている手続にも対応します。

相続放棄をする場合は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。被相続人について準確定申告が必要な場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告します。相続税の申告が必要な場合は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。

不動産を相続した場合には、原則として、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

自宅などで保管されていた自筆証書遺言では、検認を経てから遺言に基づく承継に移りますが、その間も各期限は進行します。検認を待っている間でも、法定相続人や財産・債務の調査は行えるため、相続放棄を検討する場合には、特に債務の有無を早い段階で調べておく必要があります。

相続税申告が必要な場合、遺言によって決まる取得内容や、遺産分割対象となる財産を踏まえ申告準備を行います。

また、遺言に記載された財産の承継が終わっても、それだけで相続全体が完了するとは限りません。作成後に取得した預貯金や不動産などがあれば、その承継先を別途決める必要があります。

払戻しや登記を終えた後は、遺産分割が必要な財産が残っていないか、申告や相続登記など期限のある対応が済んでいるかを確認します。こうした未処理の財産や期限のある手続まで対応した時点で、一連の相続手続が完了します。

※相続手続における期限については、以下の記事で時系列にまとめていますので参考にしてください。

まとめ|自筆証書遺言を相続開始時の財産承継へ反映する

自筆証書遺言が見つかった場合は、まず保管方法から検認の要否を判断します。その後、遺言の内容を相続開始時の法定相続人と財産に照らし、遺言で処理できる範囲と遺産分割が必要な範囲を判別します。

遺言執行者が指定されている場合には、その権限を確認したうえで、預貯金の払戻し、不動産登記、有価証券の名義変更などを行います。同時に、相続放棄、準確定申告、相続税申告など期限のある手続にも対応します。

自筆証書遺言は生前に作成されたものであり、相続開始までの間に法定相続人や財産が変わっている可能性があります。そのため、記載された内容だけを前提に承継を終えるのではなく、相続開始時の状況と照合して各財産の承継先を確定することが重要です。

自筆証書遺言がある相続では、遺言の内容を相続開始時の法定相続人・財産状況と照合し、その結果に従って払戻しや登記などを終えるところまでが一連の相続手続となります。

※遺言書の方式や作成などについて、以下の記事も参考になりますのでご覧ください。