はじめに|公共工事への参入が決まったら、経審を受ける時期を考える
公共工事を発注者から直接請け負う方針が決まった会社では、経営事項審査(経審)をいつ申請するかとともに、その申請時期ではどの決算が審査基準日となるかを考える必要があります。
経審は、国や地方公共団体などが発注する公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受ける審査です。公共工事の競争入札に参加するには、経審を受けたうえで、各発注者が行う入札参加資格の認定を受けます。
原則として申請直前の事業年度の終了日(決算日)が「審査基準日」となります。完成工事高、自己資本額、利益、技術職員数、元請完成工事高、社会性等は、この審査基準日における会社の実績や状況をもとに評価されます。
公共工事への参入を予定している会社は、入札参加の時期を見据えて経審の申請時期を考え、その時点で審査基準日となる決算を確認したうえで、審査基準日までに工事実績や技術職員等の状況を見ておきます。決算が確定した後は、その決算をもとに決算変更届、経営状況分析、経審申請へ進みます。
この記事では、神奈川県知事許可を受けている建設業者を前提に、どの決算が経審の審査基準日となるのか、審査基準日までに何を準備するのか、決算後にどのような順序で申請するのか、継続して公共工事を請け負う場合にいつまでに次の結果を取得するのかまで解説します。
公共工事を元請受注するなら経審が必要になる
建設業法上、公共工事を国や地方公共団体などの発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経審を受ける必要があります。
そのため、公共工事への参入方針が決まったら、具体的な入札参加の時期を見据えて経審の準備に入ります。
すでに参加したい入札や発注者が決まっている場合は、入札参加資格申請の受付時期も経審の日程に関わります。
将来の公共工事への参入を予定している段階では、いつから入札に参加するのかを見通し、その時期に必要な経審結果をいつまでに取得するのかを考えます。
公共工事への参入時期と経審結果の取得時期を結び付けることで、決算前の準備から結果を得るまでの日程が決まります。
審査基準日となる決算から準備時期を考える
経審では、原則として申請直前の事業年度の終了日が審査基準日となります。申請時期が決まれば、その時点で直前となる決算日が評価の基準となります。
経営事項審査は、登録経営状況分析機関が行う経営状況分析(Y)と、許可行政庁が行う経営規模等評価(X・Z・W)から構成されます。総合評定値(P)を請求した場合は、これらの結果を用いてP点が算出されます。
神奈川県の令和8年4月1日版の手引きでは、評価項目は次のように整理されています。
| 評価区分 | 主な審査項目 |
|---|---|
| X1 | 完成工事高 |
| X2 | 自己資本額、利払前税引前償却前利益 |
| Y | 負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量 |
| Z | 元請完成工事高、技術職員数 |
| W | 担い手の育成・確保、営業継続、防災活動、法令遵守、建設業経理など |
| P | X1・X2・Y・Z・Wを所定の割合で合算した総合評定値 |
P点は、完成工事高(X1)25%、自己資本額・利益額(X2)15%、経営状況(Y)20%、技術力(Z)25%、社会性等(W)15%の割合で評価した総合点です。
完成工事高や元請完成工事高、決算数値は、審査基準日を基礎として評価されます。技術職員についても、審査基準日における在籍等について所定の要件があります。
経審の申請時期を考えたら、その時点で審査基準日となる決算日を基準として、工事実績、財務、技術職員、社会性等のうち自社がどのような内容で評価を受けることになるのかを見ていきます。
審査基準日までに経審の評価対象を押さえる
経審で申請する内容の中には、審査基準日までの工事実績や、その時点における会社の状況が評価に関わる項目があります。
完成工事高や元請完成工事高として計上する工事については、対象となる工事とその契約内容を把握し、工事請負契約書等の資料をそろえます。技術職員として申請する人についても、資格と審査基準日における在籍等について、経審上の要件を満たしていることを所定の資料で示します。
神奈川県の令和8年度の手引きでは、工事請負契約書等、技術職員等の常勤確認書類、技術職員の資格確認書類、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入を証する書類などが確認書類として定められています。
許可関係については、現在取得している許可に係る許可申請書、資本金額・商号・代表者・所在地等の変更届出書、審査対象事業年度の決算変更届なども確認書類となります。
審査基準日までに、経審に計上する工事実績や技術職員等を見通し、それぞれの申請内容を示す資料を準備しておけば、決算確定後の申請を円滑に進められます。
決算確定後は経営状況分析から経審申請へ進む
決算が確定すると、その決算をもとに経審の申請手続へ移ります。
神奈川県では、経営状況分析を申請するにあたり、原則として事前に建設業許可に係る決算変更届を提出することとされており、事後となった場合でも、遅くとも経審の申請時までに提出する必要があります。
決算確定後の手続は、次の順序で進みます。
- 建設業許可に係る決算変更届を提出する
- 登録経営状況分析機関へ経営状況分析(Y)を申請する
- 経営状況分析結果通知書を受領する
- 神奈川県へ経営規模等評価(X・Z・W)を申請し、必要に応じて総合評定値(P)を請求する
- 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書を受領する
決算確定後は、この順序に沿って各手続を行います。入札参加資格申請の受付時期が決まっている場合は、それまでに結果通知書を受領できるよう、経営状況分析と神奈川県への申請に必要な期間を見込んでおきます。
※決算変更届の提出時期や必要書類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「建設業許可の決算変更届はいつまで?|必要書類と未提出時の対応【神奈川県】」
※経営状況分析については、以下の記事を参考にしてください。
「経営状況分析とは|Y点・登録分析機関・経審との関係を理解する」
継続して公共工事を請け負うなら経審結果を切らさない
継続して公共工事を元請として請け負う会社では、現在の経審結果が有効な間に、次の審査基準日に基づく結果通知書を受領します。
経審結果によって公共工事を請け負うことができる期間は、審査基準日から1年7か月です。結果通知書を受領した時点では、審査基準日から受領日までの期間がすでに経過しています。
たとえば3月31日決算の会社では、その3月31日が原則として審査基準日となります。その後、決算を確定し、決算変更届、経営状況分析、経営規模等評価を経て結果通知書を受領します。
したがって、毎年継続して公共工事を請け負う場合は、現在の経審結果が有効なうちに次年度の結果通知書を受領できるよう、決算確定後の各手続に必要な期間を見込んで申請します。
毎年の決算後に決算変更届、経営状況分析、経審申請を行い、審査基準日から1年7か月を経過する前に次の結果通知書を受領することで、公共工事を継続して請け負える状態を保ちます。
入札参加資格の受付時期から経審の日程を逆算する
公共工事の競争入札に参加するには、経審を受けて総合評定値を取得し、参加する発注者の入札参加資格の認定を受けます。
国、県、市町村などが行う入札参加資格申請は、受付時期や必要書類が発注者ごとに異なります。参加したい発注者と入札参加の時期が決まったら、その受付に間に合う時期までに経審結果を取得できるよう日程を組みます。
入札参加資格を申請するには、その前に経審の結果通知書を受領しておく必要があります。経審の申請には経営状況分析結果通知書が必要となるため、決算確定後は、決算変更届を提出し、経営状況分析を経て、経営規模等評価・総合評定値請求へ進みます。
この手続に要する期間を入札参加資格申請の受付時期から逆算すると、経審結果を取得する時期とその前提となる申請時期が見えてきます。そこから申請時点で審査基準日となる決算を確認すれば、その審査基準日までに工事実績や技術職員等について準備すべき内容も明確になります。
公共工事への参入方針が決まったら、入札参加資格申請の時期から経審結果の取得時期を逆算し、その前提となる申請時期と審査基準日を確認します。その審査基準日までに工事実績や技術職員等を整え、決算確定後は決算変更届、経営状況分析、経審申請へ進みます。
※入札参加資格申請については、以下の記事で詳しく解説しています。
「入札参加資格申請とは|経審との違いと公共工事までの流れを解説」