「毎年提出しているのに、なぜ点数差が出るのか」

経営事項審査(経審)では、建設業許可を維持し、決算変更届も提出し、技術者も在籍しているにもかかわらず、同規模会社との間で評点差が生じることがあります。
特に公共工事では、経審結果や等級が入札参加資格へ影響するため、「なぜ加点へつながらないのか」は受注実務に直結します。

経審では、社会保険加入、技術者配置、安全管理体制、建設機械保有、技能者育成状況などを、公共工事へ継続対応できる施工体制として確認しています。
そのため、加点要素を備えているだけでなく、評点算定に使用できる資料として維持管理できているかによって差が生じます。

代表的な加点項目としては、次のようなものがあります。
 ・ CPD(継続学習:技術者向け継続教育)
 ・ 技士補(1級・2級施工管理技士補)
 ・ CCUS(建設キャリアアップシステム)
 ・ 建設機械(ショベル系掘削機械・移動式クレーン等)
 ・ 建退共(建設業退職金共済制度)
 ・ 法定外労災(上乗せ労災保険)
 ・ 防災協定(自治体等との災害協定)
 ・ ISO(品質・環境等の国際認証)

※経審で点数差が出る全体像は、完成工事高・技術者・決算変更届との関係も含め、以下の記事でも整理しています。
 経審で点数が伸びない理由|決算変更届・技術者・完成工事高で差がつく

この記事では、加点要素があるにもかかわらず評点差が生じる理由や、どの部分で差が出やすいのかを整理します。

社会保険は「加入後の運用状況」で差が出やすい

経審では、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況が、社会性等(W)の重要な確認項目です。

未加入は大きな減点対象になります。

そのうえで、実務上は加入後の運用状況によっても差が生じます。

たとえば、
 ・ 法人にもかかわらず国民健康保険で運用している
 ・ 技術者だけ別法人で加入している
 ・ 加入時期が決算直前に集中している
 ・ 雇用保険対象者の管理が不十分

といった状況では、技術者や従業員の所属・加入状況について追加確認が必要になることがあります。

公共工事では、継続的に施工体制を維持できる会社かが確認されるため、社会保険も「加入済み」という一点だけで見られているわけではありません。
技術者配置や営業所所属とあわせて、継続的な雇用・管理体制として整っているかが確認対象になります。

技術職員は「人数」より「業種配置」で差が出る

経審では、資格者数を単純に比較しているわけではありません。

確認されるのは、「どの資格者を」「どの業種へ」「どの区分で算入するか」という点です。
そのため、1級資格者比率、技士補配置、CPD履歴、希望業種への配置状況によって、技術力(Z)の差が広がります。

一方で、
 ・ 希望業種と資格区分が一致していない
 ・ 技術者配置が重複している
 ・ 常勤性資料に不足がある

場合には、資格者が在籍していても、技術職員点数へ十分算入できないことがあります。

また、営業所技術者と経審技術職員との関係も確認対象になります。
他営業所との兼務状況、他社在籍疑義、決算日時点での所属状況などに不一致がある場合には、技術力(Z)の算入区分へ影響することがあります。

発注機関側では、資格保有そのものではなく、希望業種に対して継続的に技術者配置を維持できる体制になっているかを見ています。

※営業所技術者の常勤性や実務上の判断ポイントについては、以下の記事でも整理しています。
 営業所技術者とは|要件・判断基準・実務上の落とし穴を解説

CCUSは「技能者情報管理」の差につながりやすい

近年は、CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用状況も、技能者管理体制を見るうえで重要になっています。
CCUSとは、技能者資格や現場経験を電子管理する仕組みです。
公共工事では、技能者育成、就業履歴管理、処遇改善との関係から、CCUS対応が進んでいます。

CCUS対応が進んでいる会社では、技能者情報・資格更新状況・就業履歴などを継続的に更新しているため、CPD履歴や若手育成関係資料も整理されやすくなります。

一方で、
 ・ 技能者情報が部署ごとに分散している
 ・ 資格更新履歴を管理できていない
 ・ 就業履歴を蓄積できていない

場合には、加点資料作成時に情報不足が生じやすくなります。

技能者情報を日常的に更新できている会社ほど、経審時の加点資料も整いやすくなります。

建設機械は「対象機械として管理できているか」で差が出る

経審では、建設機械保有も社会性等(W)の加点項目です。
建設機械については、ショベル系掘削機械、ブルドーザー、移動式クレーンなど、経審上の対象機械へ該当するかが確認されます。

さらに、
 ・ 自社名義か
 ・ 継続使用できる状態か
 ・ 稼働状況を確認できるか

といった点も確認対象になります。

そのため、
 ・ リースのみで運用している
 ・ 名義が別会社になっている
 ・ 特定自主検査資料が不足している
 ・ 稼働確認資料を整理できていない

場合には、建設機械加点へ十分つなげられないことがあります。

対象機械に該当しており、名義や稼働状況を含め継続使用できる状態であるかを、整理できているかが重要です。

※決算変更届や経審資料の整合性により追加確認が発生しやすいポイントは、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可 決算変更届のズレは経審にどう影響するか【神奈川県】

安全管理体制は「継続管理状況」で差が出る

社会性等(W)では、法定外労災、建退共、防災協定、ISOなども加点対象です。
ここでは、有効期間、対象範囲、更新状況を継続的に管理できているかによって差が出やすくなります。

たとえば、
 ・ 法定外労災の対象範囲が不足している
 ・ 防災協定の期限が切れている
 ・ 建退共加入証明の更新が漏れている
 ・ ISO更新情報が反映されていない

場合には、評点資料として使用できる状態に至らないことがあります。

制度利用自体ではなく、有効期間や対象範囲を含め、公共工事対応体制として継続管理されているかを問われます。

JCIPでは資料間の整合性が見えやすくなる

神奈川県では、JCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)の利用が進んでいます。
JCIPでは、技術者情報・社会保険情報・決算変更届・加点資料などを横断的に確認しやすくなっています。

そのため、
 ・ CPD対象者が一致していない
 ・ 技術者所属情報が異なる
 ・ 建設機械の名義が一致していない
 ・ 防災協定資料に不足がある

といった状態では、評点算定へ十分つなげられない項目が生じます。

複数資料の整合性、有効期間、所属状況などが連動しているかが加点資料としての扱いに差が出やすくなります。

※更新・経審で表面化する問題が表面化する理由については、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可|変更届はなぜ「後から」止まるのか(更新・経審で表面化する理由)【神奈川県】

評点を取れる会社は「年間管理」ができている

評点が安定している会社では、経審直前だけでなく、年間を通じて資料や資格状況を管理しています。

具体的には、
 ・ 技術者資格更新
 ・ CPD履歴管理
 ・ 技士補育成
 ・ CCUS運用
 ・ 建設機械更新
 ・ 防災協定期限管理

などを継続的に行っています。

そのため、
 ・ 技術者資格更新が止まっている
 ・ 建設機械名義変更が未対応
 ・ CPD履歴が分散している
 ・ 加点資料の期限管理が不足している

といった会社ほど、「加点要素はあるが算入へつながらない」状態が起こりやすくなります。

評点差は、加点要素の数だけで決まるものではありません。技術者配置、技能者育成、安全管理、建設機械、社会保険を、年間を通じて評点算定へつなげられる状態で維持管理できているかによって差が広がります。

※建設業許可取得後の決算変更届・変更届・更新・経審の年間管理については、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可を取った後に何をする?|決算変更届・変更届・更新・経審を年間の流れで整理【神奈川県】

点数を見直す際は「項目数」より「資料運用」を見る

経審点数を見直すにあたっては、加点項目や資格者数だけに着目すると、実態とズレることがあります。
実際には、加点要素や資格者が揃っていても、経審資料の整備・更新・連携が不足しているため、評点へ十分算入できていない会社が少なくありません。

そのため、まず確認したいのは次の点です。
 ・ 技術者情報と所属状況が一致しているか
 ・ CPD・CCUS・資格更新を継続管理できているか
 ・ 建設機械や防災協定を資料化できているか
 ・ 社会保険情報と技術者配置が整合しているか

経審では、加点要素を個別に持っているかだけでなく、それぞれを継続的な施工体制として運用できているかまで確認されています。

※更新時に、常勤性資料や変更届の整合性確認で止まりやすいポイントは、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可更新は「今の書類」だけでは進まない|変更届・要件確認で止まる理由【神奈川県】

※工事高・技術者・決算変更届を含め、経審全体でどこに評点差が出るのかについては、以下でも整理しています。
 経審で点数が伸びない理由|決算変更届・技術者・完成工事高で差がつく