「遺言で財産を友人やお世話になった人へ渡したい。」
「法定相続人ではない孫や内縁の妻(夫)にも財産を残したい。」

このような意思を実現するために利用されるのが「遺贈」です。

「遺贈は相続と何が違うのか」「相続人でなければ財産を受け取れないのではないか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

遺贈とは、亡くなった方(被相続人)が遺言によって特定の人へ財産を与える制度です。
法定相続人だけでなく、第三者にも財産を承継させることができる点が大きな特徴です。

この判断軸を理解すると、遺贈の役割や相続との違いが分かりやすくなります。

※遺言書が必要になるケースなどについては、以下を参考にしてください。
 「遺言書が必要な人とは|相続のルールだけでは希望を実現しにくいケース」

遺贈とは遺言によって財産を与える制度

遺贈とは、被相続人が遺言によって、自分の財産を特定の人へ与える制度です。
財産を受け取る人(受遺者)は、法定相続人に限られません。

例えば、
 ・ 孫
 ・ 内縁の妻(夫)
 ・ 長年介護をしてくれた親族
 ・ 世話になった友人
 ・ 母校や公益法人などの団体

に対しても、遺言によって財産を与えることができます。

つまり、遺贈は「法律で決まる相続」とは異なり、被相続人が自ら承継先を指定できる制度です。

相続と遺贈は何が違うのか

遺贈と相続は、どちらも財産を承継する仕組みですが、その根拠が異なります。

相続は、法律によって定められた相続人が財産を承継する制度です。

これに対し、遺贈は、被相続人が作成した遺言によって財産を承継させる制度です。

例えば、友人へ不動産を渡したいと考えても、その友人は法定相続人ではありません。
相続によって財産を取得することはできませんが、遺言によって遺贈すれば財産を受け取ることができます。

このように、遺贈は法定相続人以外にも財産を承継させられる点に大きな特徴があります。

※遺贈と相続の違いについては、以下の記事でわかりやすく解説しています。
 「遺贈と相続の違いは?「相続させる」と「遺贈する」を使い分ける理由を解説」

遺贈は相続人にもすることができる

遺贈は第三者へ財産を与える制度でもありますが、相続人に対して行うこともできます。

例えば、「長男に別荘を遺贈する」という内容の遺言を作成することも可能です。

また、相続人に財産を承継させる場合には、「長男に別荘を相続させる」と記載する方法もあります。

どちらも相続人に財産を取得させるという点では共通しますが、「相続させる」旨の遺言には判例上認められた特有の法律効果があり、登記手続などにも違いが生じます。
そのため、相続人に財産を承継させる場合には、「相続させる」という文言が用いられることが多くあります。

遺言を作成する際には、誰にどのような方法で財産を承継させるのかを踏まえて、適切な表現を選ぶことが重要です。

遺贈にも種類がある

遺贈には、大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」の二種類があります。

包括遺贈は、「財産の3分の1を遺贈する」のように、財産全体に対する割合を指定する方法です。
一方、特定遺贈は、「自宅を遺贈する」「預貯金500万円を遺贈する」のように、個別の財産を指定して与える方法です。

包括遺贈では、財産だけでなく債務についても指定した割合で承継するため、包括受遺者は包括遺贈の限度で相続人と同一の権利義務を有します。
これに対し、特定遺贈では指定された財産だけを取得するため、原則として被相続人の債務を承継しません。

このように、包括遺贈と特定遺贈では、取得する財産だけでなく、負担する義務にも違いがあります。
そのため、遺贈を受けるかどうかや、どのような内容の遺言を作成するかを考えるうえでも重要な違いとなります。

※包括遺贈と特定遺贈の違いについては、以下の記事を参考にしてください。
 「包括遺贈と特定遺贈の違いとは?取得する権利や負担する義務をわかりやすく解説」

遺留分との関係には注意が必要

遺贈は、被相続人の意思を実現するための制度であり、遺言による遺贈は原則として有効です。

しかし、一定の相続人に保障されている遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求の対象となります。
遺留分を侵害された相続人は、遺言を無効にすることはできませんが、遺留分侵害額請求によって、不足した利益を金銭で回復することができます。

つまり、遺贈は原則としてそのまま維持されますが、遺留分との調整が必要になる場合があります。
この点は、「遺贈が有効であること」と「遺留分が保障されること」は両立する制度であると理解すると分かりやすいでしょう。

※遺留分や遺留分侵害額請求の制度や仕組みについては、以下の記事でわかりやすく解説しています。
 「遺留分とは?遺言を尊重しながら最低限の相続利益を守る制度」
 「遺留分侵害額請求とは|遺言書があっても請求できるのはなぜか」

遺贈を受けた人は必ず受け取らなければならないのか

遺贈は、必ず受けなければならないものではなく、受遺者は遺贈を受けるかどうかを判断することができます。

包括遺贈は、家庭裁判所での相続放棄とは異なり、自ら放棄の意思表示をしない限り効力が生じます。一方、特定遺贈は、受遺者が放棄することもできます。
例えば、維持費のかかる不動産や、多額の管理費が必要な財産については、受け取らないという選択もできます。

遺贈は「与える」という被相続人の意思を実現する制度ですが、受遺者の意思まで無視して財産を取得させる制度ではありません。

遺贈は被相続人の意思によって財産の承継先を決める制度

遺贈は、被相続人が遺言によって財産を承継させる相手を自由に決められる制度です。
法定相続人だけでなく、第三者にも財産を承継させることができるため、法律による相続だけでは実現できない財産承継を可能にします。

一方で、遺贈は原則として有効であるものの、遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求による金銭的な調整が行われます。

そのため、遺贈を理解する際には、「相続人だけが財産を受け取る制度ではない」という点と、「遺言による意思は尊重されるが、一定の相続人の利益との調整も図られる」という二つの側面を理解することが重要です。