補助金申請の事業計画書では、将来の売上高や利益の予測を求められることがあります。

設備を導入すれば売上がどの程度増えるのか、販路を拡大すれば利益がいくら残るのか。こうした見通しを具体的な数値で示すには、計算の前提が欠かせません。売上高や利益の目標を設定しても、その算定根拠を説明できなければ、計画の実現可能性を示すことは難しくなります。

売上・利益計画は、過去の実績を起点に、補助事業によって変化する販売数量・単価・費用などを積み上げて作成します。 さらに、計算した数値を申請する補助金の数値目標や算定条件に対応させます。

この記事は、補助事業の実施内容を売上・利益の予測値に反映させる計算方法と、その根拠の示し方を解説します。

売上・利益計画は過去の実績を起点に作成する

将来の売上高や利益を予測するには、現在の事業実績が出発点となります。

法人であれば決算書の損益計算書、個人事業主であれば確定申告書に添付した青色申告決算書や収支内訳書などを用いて、売上高、経費、利益の実績を確認します。

ただし、直近の決算書に記載された数値を、そのまま将来の計画値にするわけではありません。過去の実績を基準に、既存事業の見通しと補助事業によって生じる変化を反映させます。

例えば、直近の売上高が5,000万円、営業利益が400万円の会社が、新しい設備の導入によって販売数量を増やす計画を考えます。

この場合、売上高5,000万円と営業利益400万円を予測の出発点とし、設備導入によって増加する売上や費用を計算して、導入後の数値を求めます。

一方、既存事業の売上が今後も同じ水準で推移するとは限りません。既存顧客からの受注減少や価格改定などが見込まれる場合は、その影響も予測に織り込みます。

過去の実績値、補助事業による増減額、最終的な計画値を対応させることで、将来の数値がどのように算定されたのかを説明できます。

なお、補助金によっては、基準とする事業年度や将来計画の対象期間が指定されています。数値計画は、公募要領や申請様式に定められた基準年度と計画期間に合わせて作成します。

売上・利益計画の基礎となる数値は、決算書や確定申告書などから確認します。ただし、これらの書類はそれぞれ示す内容が異なるため、計画に使用する数値と資料の関係を把握しておく必要があります。
財務・税務関係の書類が何を証明し、補助金申請ではどのような条件で提出を求められるのかについては、「補助金申請で決算書・確定申告書・納税証明書が必要なのはなぜ?|それぞれの役割と提出条件」で解説しています。

補助事業による売上の増加を数量と単価から計算する

売上計画の基本は、販売数量と販売単価を掛け合わせることです。

売上高 = 販売数量 × 販売単価

商品やサービスが複数ある場合は、それぞれの売上高を計算して合計します。

補助事業による売上の増加を予測する際は、実施する取り組みによって販売数量や単価がどの程度変化するのかを明らかにします。

販売数量は需要と販売能力の両方から見積もる

例えば、新しい製造設備を導入し、月間の生産能力が100個から150個に増加する場合を考えます。

設備の導入によって生産能力は50個増えますが、生産できる数量と実際に販売できる数量は同じとは限りません。追加で生産する製品について、取引先からどの程度の注文が見込まれるのか、販売先をどのように確保するのかによって販売数量が変わります。

そのため、販売数量の根拠には、過去の受注実績、商談状況、既存顧客の購入見込みなどを用います。

例えば、既存顧客から月30個の追加注文が見込まれるのであれば、その受注見込みを基に増加数量を設定します。設備によって増産できる数量と、需要に基づいて販売できる数量を対応させることが重要です。

単価と販売開始時期を反映して売上高を求める

販売数量の見込みが立ったら、販売単価と販売期間を反映させます。

例えば、新しい設備を導入し、単価20万円の製品を月10個販売する計画で、初年度は設備の稼働開始から6か月間の販売を予定しているとします。

この場合、初年度の売上増加額は次のとおりです。

20万円 × 10個 × 6か月 = 1,200万円

既存事業の売上高5,000万円が維持されると仮定すれば、初年度の売上計画は6,200万円となります。

販売単価は既存製品の販売実績や顧客への見積価格などを根拠とし、月10個という販売数量も、過去の受注実績や商談状況などから説明できるようにします。

また、設備導入後に試運転や生産準備が必要であれば、実際に販売できるのはその工程が完了してからです。初年度は販売可能な月数を反映させ、翌年度以降は受注見込みや生産能力に応じて販売数量を設定します。

販路開拓によって売上を増やす場合も、基本的な考え方は同じです。例えば、広告や展示会によって新規顧客を獲得する計画であれば、見込客数、商談件数、成約率、平均購入単価などから売上を算定します。

売上予測では、補助事業の実施によって何が変化し、その変化が販売数量や単価にどう反映されるのかを示します。

利益計画は売上の増加と費用の変化を対応させて計算する

売上計画を作成したら、その売上を実現するためにかかる費用を見積もります。

売上高が増えても、材料費、人件費、広告費などが同時に増加するため、売上の増加額がそのまま利益になるわけではありません。

利益には複数種類がありますが、事業活動によって得られる利益を示す営業利益は、基本的に次の式で計算します。

営業利益 = 売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費

売上原価には、販売した商品や製品に対応する仕入・製造費用などが含まれます。一方、販売費及び一般管理費に含まれるのは、販売促進費や管理部門の人件費などです。

売上の増加に伴う費用を計算する

先ほどの例で、設備導入による初年度の売上増加額を1,200万円とします。

この売上を実現するために、次の費用が新たに発生すると仮定します。

項目年間の増加額
売上高1,200万円
材料費などの売上原価480万円
追加の人件費240万円
販売促進費100万円
減価償却費80万円
営業利益の増加額300万円

売上高の増加額1,200万円に対して、費用の増加額は合計900万円となるため、営業利益は300万円増加します。

既存事業の営業利益400万円が維持されると仮定すれば、補助事業実施後の営業利益は700万円です。

ただし、表に示した費用は計算例です。実際の利益計画では、材料費や外注費のほか、増員による給与、設備の保守費、光熱費、販売促進費など、補助事業によって増減する費用を反映させます。

設備投資では、設備の購入代金全額を初年度の営業費用として計上するのではなく、通常は固定資産として取得し、耐用年数などに応じて減価償却費を計上します。

設備の取得に伴う支出額と、損益計画上の費用として計上する金額は異なります。 利益計画を作成する際は、この違いを踏まえて計算します。

費用削減による利益への効果も反映する

設備投資によって作業時間が短縮される場合や、システム導入によって外注費を削減できる場合は、その効果も利益計画に反映できます。

例えば、従来は年間300万円の外注費が発生していた業務を、新しい設備の導入によって社内で行えるようになり、外注費が年間180万円減少すると見込まれる場合、その削減額は利益の増加要因となります。

ただし、社内で業務を行うために新たな人件費や設備の維持費が発生するのであれば、その増加額もあわせて計算します。

また、作業時間が短縮されても、従業員の給与総額が変わらなければ、時間短縮が直ちに人件費の削減につながるわけではありません。短縮した時間を新しい業務に充てる場合は、追加で対応できる受注や生産量への効果として予測することも考えられます。

利益計画では、費用削減が実際の支出減少につながるのか、生産能力や販売機会の増加につながるのかを区別します。それぞれの効果を計算する際は、同じ効果を重複して計上しないようにします。

作成した数値を補助金の指標・目標条件に対応させる

売上高と利益の予測値を計算したら、申請する補助金で指定された数値指標と算定方法に対応させます。

補助金によっては、売上高や営業利益に加えて、付加価値額、労働生産性、給与支給総額、新事業売上高などの指標が求められます。

例えば、付加価値額は、制度によって営業利益・人件費・減価償却費の合計として定義される場合があります。この定義を用いる制度では、営業利益に加えて、人件費や減価償却費の計画値も必要です。

また、新事業の売上高が全社売上高に占める割合を求める制度では、新事業の売上高と会社全体の売上高をそれぞれ計算します。

各指標について、公募要領や申請様式で定められた定義と計算式を使用することが基本となります。

基準年度と計画期間に合わせて数値を算定する

数値目標には、基準年度から計画終了年度までの増加額や増加率などが指定されることがあります。

例えば、ある指標について、基準年度が1,000万円、3年後の計画値が1,150万円であれば、基準年度からの増加率は15%です。

一方、年平均成長率を求める場合は、3年間の増加率15%を単純に3で割らず、指定された計算式で算定します。

年平均成長率 =(計画終了年度の数値 ÷ 基準年度の数値)^(1÷年数) − 1

この例では、年平均成長率は約4.77%です。

実際の申請では、公募要領に定められた基準年度、計画期間、算定対象、端数処理などに従います。基準値がゼロやマイナスの場合など、通常の成長率計算が適用できないケースについても、制度で定められた取扱いを確認します。

予測数値の根拠を事業内容と対応させる

計算した売上高や利益については、申請様式に数値を入力するだけでなく、その算定前提を説明できるようにしておきます。

売上高であれば、販売数量と単価、想定する顧客数や受注件数、販売開始時期などが計算根拠になります。利益については、売上原価、人件費、販売促進費、減価償却費などの金額と増減の理由を示します。

主な予測前提と根拠資料の関係は、次のとおりです。

予測する数値根拠となる情報の例
販売数量過去の販売実績、受注・商談状況、販売先の見込み
販売単価現行価格、見積価格、価格設定の根拠
生産可能数量現在の生産能力、導入設備の能力、稼働予定
材料費・仕入費過去の原価率、仕入実績、取引先の見積価格
人件費配置する人数、給与水準、採用・増員計画
減価償却費設備の取得予定額、耐用年数など
費用削減額現在の支出額、改善後の業務内容や支出見込み

これらは予測数値を組み立てるための資料例であり、すべてを補助金申請時に添付するという意味ではありません。提出が必要な資料は、申請する制度や公募回の指定によって決まります。

将来の予測は、必ずしも実績どおりになるものではありません。販売数量や単価を設定する際は、過去の実績に加え、今後の需要や販売体制も踏まえて見通しを立てます。

例えば、売上計画の達成に月10個の販売が必要であれば、商談状況や販売先の見込みから、その数量を継続して販売できるかを確かめます。予定した数量を販売できなければ、売上高だけでなく、利益や制度所定の目標指標にも影響します。

そこで、販売数量や費用などの主要な前提を変えて再計算し、計画数値がどの程度変動するかを把握しておくことも有効です。

まとめ|売上・利益の算定根拠と補助金の目標条件を確認する

補助金申請の売上・利益計画では、まず過去の実績を基準に、既存事業の見通しと補助事業による変化を分けて考えます。そのうえで、販売数量・単価・販売期間から売上高を計算し、材料費や人件費、減価償却費などの増減を反映させて利益を求めます。

計算した数値は、申請する補助金で指定された指標の定義、基準年度、計画期間、算定方法に対応させます。売上高や営業利益だけでなく、付加価値額や新事業売上高などが求められる場合は、それぞれの計算条件に従って算定します。

最後に、販売数量、単価、費用などの前提を過去の実績や受注見込み、見積価格などと照らし合わせ、数値の根拠を説明できるかを確かめます。主要な前提を変えた場合の影響も把握しておけば、計画の実現可能性を検討する材料になります。

補助事業の実施内容から売上・費用の変化を計算し、その結果として求めた利益や各種指標が、制度の目標条件に適合しているかを確認することが、数値計画を作成する際の基本です。

売上・利益計画は、補助事業の実施内容や投資計画と一体で作成する必要があります。

事業計画書全体に記載する事項や、実施内容・投資計画の整理方法については、「補助金申請の事業計画書には何を書く?|申請前に整理する事業内容と投資計画」で解説しています。

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