補助金申請の準備を進めていると、決算書、確定申告書、納税証明書など、財務や税務に関する書類の提出を求められることがあります。
これらはいずれも事業者の経営や税務に関係する書類ですが、証明できる内容は異なります。また、法人と個人事業主では必要な書類の組合せが異なり、補助金によっては特定の書類だけが指定されることもあります。
この記事では、決算書・確定申告書・納税証明書がそれぞれ何を確認するための資料なのかを説明し、自社が提出すべき書類の判断方法を解説します。
決算書・確定申告書・納税証明書はそれぞれ何を確認する資料なのか
補助金の審査では、申請者の事業実績や財務状況、税務申告・納税に関する情報を確認するために、財務・税務関係の資料が使用されます。
主な書類と確認できる内容は、次のとおりです。
| 書類 | 主に確認できる内容 |
|---|---|
| 決算書 | 売上高、利益、資産、負債などの事業実績・財務状況 |
| 確定申告書 | 税務署へ申告した所得金額や税額など |
| 納税証明書 | 税額、所得金額、未納の有無など、証明書の種類に応じた事項 |
決算書は事業の実績と財務状況を示す
法人の決算書では、主に貸借対照表と損益計算書を使用します。
貸借対照表には決算日時点の資産、負債、純資産が記載され、損益計算書には一定の事業年度における売上高、費用、利益などが記載されます。
例えば、売上高や利益の推移から事業実績を確認し、資産や負債の状況から財務面の状態を把握できます。補助金によっては、これらの数値を申請資格の判定や事業計画の審査に使用します。
ただし、決算書が赤字であることだけで、補助金を申請できないと決まるわけではありません。 財務状況に関する要件や審査基準は、補助金ごとに異なります。
決算書などに記載された数値が申請資格に影響するかどうかは、公募要領に定められた要件と照らし合わせて判断します。財務状況だけでなく、事業者の規模や予定する事業、対象経費なども確認が必要です。
申請要件と自社の状況を照合する方法については、「補助金の対象になるかはどう判断する?|申請前に公募要領で確認する要件」で解説しています。
確定申告書は税務署へ申告した内容を示す
確定申告書は、事業者が所得や税額などを税務署へ申告するための書類です。法人では法人税の確定申告書、個人事業主では所得税の確定申告書が基本となります。
法人の場合、決算書に記載された会計上の利益を基に、税法に従った調整を行って所得金額や法人税額を計算します。そのため、損益計算書の利益と法人税申告書の所得金額は、必ずしも一致しません。
一方、個人事業主は、事業の収入や必要経費などを記載した青色申告決算書または収支内訳書を、所得税の確定申告書とあわせて使用します。
補助金申請で確定申告書の提出が求められる場合は、申告した所得や税額に加え、申請者が税務申告を行っている事実などを確認する資料となります。
確定申告書は申告内容を示す書類であり、申告した税金が実際に納付されたことまで証明するものではありません。
納税証明書は税額・所得金額・未納状況などを証明する
納税証明書は、税務署などが発行する証明書です。国税について税務署が発行する納税証明書には複数の種類があり、それぞれ証明する内容が異なります。
| 納税証明書の種類 | 証明する内容 |
|---|---|
| その1 | 納付すべき税額、納付済額、未納税額など |
| その2 | 法人税または申告所得税及復興特別所得税に係る所得金額 |
| その3 | 指定した税目について未納の税額がないこと |
| その3の2 | 個人の申告所得税及復興特別所得税と消費税及地方消費税について未納がないこと |
| その3の3 | 法人税と消費税及地方消費税について未納がないこと |
例えば、申告した所得金額の証明には「その2」を使用します。一方、指定された国税について未納がないことを証明する場合には、「その3」などを使用します。
納税証明書は種類によって証明できる事項が異なるため、公募要領で指定された種類を取得する必要があります。
また、税務署が発行する国税の納税証明書と、都道府県や市区町村が発行する地方税の納税証明書も異なります。指定された税目と発行機関を確かめたうえで取得します。
法人と個人事業主では提出する資料の組合せが異なる
補助金申請では、事業実績や財務状況、税務申告・納税に関する確認事項に応じて、必要な書類の組合せが指定されます。
法人と個人事業主では、決算や税務申告に使用する書類が異なるため、提出条件も変わります。
法人の場合
法人の財務状況を確認する場合には、貸借対照表と損益計算書が代表的な資料となります。これらに加えて、法人税の確定申告書や納税証明書を求める制度もあります。
例えば、財務状況を確認するために決算書を提出し、税務申告に関する所得金額や納税額などを確認するために、別途納税証明書を提出するという組合せです。
ただし、すべての補助金で決算書と法人税の確定申告書の両方が必要になるわけではありません。提出する資料は、公募要領で指定された確認事項によって決まります。
個人事業主の場合
個人事業主は、所得税の確定申告書に加え、青色申告決算書または収支内訳書の提出を求められることがあります。
青色申告決算書や収支内訳書には、事業の収入金額、必要経費、所得金額の計算内容などが記載されており、事業実績を確認する資料となります。
例えば、青色申告を行っている事業者であれば青色申告決算書、白色申告を行っている事業者であれば収支内訳書が該当します。
補助金によっては、これらに所得税の納税証明書を組み合わせて提出します。
実際の公募要領ではどのように指定されているか
一例として、「デジタル化・AI導入補助金2026」のインボイス枠(インボイス対応類型)では、財務・税務関係の提出資料として次の書類が指定されています。
| 申請者 | 指定されている主な財務・税務資料 |
|---|---|
| 法人 | 直近分の貸借対照表・損益計算書、法人税の納税証明書「その1」または「その2」 |
| 個人事業主 | 直近分の所得税の確定申告書の控え、青色申告決算書または収支内訳書、所得税の納税証明書「その1」または「その2」 |
この補助金では、納税証明書を事業実態の確認に使用し、法人の決算書や個人事業主の青色申告決算書・収支内訳書を財務状況の確認に使用しています。
また、納税証明書は「その1」または「その2」が指定されており、未納の税額がないことを証明する「その3」の提出を一律に求めているわけではありません。
この例からも、納税証明書の提出目的が必ずしも未納の有無の確認とは限らないことが分かります。必要な資料は、補助金ごとの指定に従って判断します。
※上記は当該補助金の公募要領に基づく例であり、他の補助金に同じ提出条件が適用されるものではありません。
自社が提出する書類は何を基準に判断するのか
実際に書類を準備する際には、申請する補助金の公募要領や提出書類一覧を基準に、申請者の区分、対象期間、証明書の種類、提出範囲を確認します。
申請者の区分と対象期間が合っているか
まず、法人と個人事業主のどちらの提出条件が適用されるかを確認します。
そのうえで、決算書については対象となる事業年度、確定申告書や納税証明書については対象となる年分・事業年度を確かめます。
例えば、「直近2期分の決算書」が必要な場合、1期分だけでは不足します。また、「直近の確定申告書」が必要な場合には、公募要領で求められる年分の申告書を用意します。
決算書の対象事業年度と、確定申告書・納税証明書の対象期間は、それぞれ公募要領の指定に従います。 すべての資料を同じ年度でそろえればよいとは限りません。
なお、創業直後で決算や確定申告をまだ行っていない事業者は、通常の提出書類を用意できないことがあります。その場合に代替書類が認められるか、そもそも申請対象となるかについても、制度ごとの規定を確認する必要があります。
納税証明書の種類・税目・期間が指定どおりか
納税証明書が必要な場合には、種類、対象となる税目、証明対象期間を特定します。
例えば、法人税の納税証明書「その2」が指定されている場合、消費税の納税証明書や「その3」を取得しても、指定された所得金額を証明する資料にはなりません。
また、国税の証明書と地方税の証明書では取得先が異なります。
税務署が発行する国税の納税証明書は、税務署の窓口やe-Taxなどを通じて交付請求できます。電子納税証明書を利用する場合は、補助金の申請システムがその提出方法に対応しているかも確認します。
確定申告書の提出範囲と申告の確認資料がそろっているか
確定申告書については、第一表だけでよいのか、第二表や青色申告決算書、収支内訳書なども必要なのかを確認します。
また、税務署が申告書を受け付けたことを確認できる資料を求められる場合があります。電子申告を行っている場合には、e-Taxの受信通知など、申告が受け付けられたことを示す資料が指定されることもあるため、申告書の控えとあわせて準備します。
書類の名称が合っていても、指定されたページや添付資料が不足していれば、必要な内容を確認できない場合があります。
提出前には、各書類について対象年度・年分、必要なページ、証明書の種類、申告受付の確認方法を、公募要領や申請の手引きと照合します。
まとめ|書類の役割と公募要領の指定を照合する
決算書・確定申告書・納税証明書は、それぞれ事業実績・財務状況、税務申告の内容、税額・所得金額・未納状況などを示す資料です。自社が提出するのは、利用する補助金の申請要件や審査事項に対応して、その公募回で指定された書類です。
まず申請者の区分を確かめ、次に必要な書類の種類と対象期間を特定します。そのうえで、提出するページや申告受付の確認資料まで照合することで、財務・税務関係の書類を過不足なく準備できます。
補助金申請では、財務・税務関係の書類に加えて、事業計画書や見積書など、申請内容に応じた資料が必要になることがあります。
申請に必要な書類の全体像と、それぞれの資料が何を示すのかについては、「補助金申請にはどんな書類が必要?|提出資料ごとの役割と確認事項」で詳しく解説しています。