複数人で会社を設立する場合、出資割合は各人の資金負担と設立後の権利関係の双方に関わります。株式会社では出資によって取得する株式を通じて株主としての権利が定まり、合同会社では出資者自身が社員として会社を構成し、会社法と定款に基づいて業務執行や意思決定、損益分配の関係が形成されます。
そのため、複数人で設立する場合は、各人の出資額とともに、その出資が意思決定、会社経営への関与、利益の分配にどのようにつながるのかを会社形態に応じて決めていきます。
※株式会社と合同会社の会社運営や意思決定などの違いについては、株式会社と合同会社はどう違う?|会社設立前に知っておきたい違いで解説しています。
株式会社では出資額が株式数と議決権に反映される
株式会社を設立する際、発起人は設立時発行株式を引き受け、その株式について定められた払込金額を払い込みます。複数人が発起人となる場合には、会社全体として必要な出資額を決めたうえで、各発起人が何株を引き受け、いくら払い込むのかを定めます。
出資額と株主としての権利をつなぐのが 「株式」 です。
たとえば、同じ内容の普通株式を1株5万円で100株発行し、Aが300万円、Bが200万円を出資する場合、Aは60株、Bは40株を取得するため、株式保有割合はAが60%、Bが40%となります。
株式会社では原則として1株につき1個の議決権が認められるため、この例のように各株式の議決権が同じであれば、AとBの議決権割合も60%と40%になります。各人の出資額が取得株式数に反映され、その株式数と内容に応じて株主としての権利が定まります。
株主総会の決議要件と議決権割合を踏まえて株式を配分する
複数人で株式会社を設立する場合、各株主が持つ議決権の割合は、設立後の株主総会における意思決定に直接関係します。
株主総会の決議には普通決議や特別決議などがあり、決議事項によって成立要件が異なります。普通決議は、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって成立します。
定款変更などに必要となる特別決議では、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
たとえば、AとBが同じ内容の普通株式を50%ずつ保有し、それぞれ同じ割合の議決権を持つ場合、両者の意見が分かれると、一方の賛成だけでは成立しない決議が生じます。また、Aが議決権の過半数を持っていても、特別決議に必要となる3分の2以上に達していなければ、他の株主の賛成が必要になります。
複数人で株式会社を設立するときは、各人にどの程度の議決権を持たせるのか、その割合によって普通決議や特別決議で誰の賛成が必要になるのかまで考えて株式を配分します。
株主と取締役・代表取締役では権利や権限の根拠が異なる
複数人で会社を設立すると、出資者が取締役や代表取締役を兼ねることがあります。この場合、同じ人が株主と取締役の双方の地位を持っていても、それぞれの権利や権限が生じる根拠は異なります。
株主は保有する株式に基づいて株主総会で議決権を行使します。取締役は会社の機関として会社法や定款に従って職務を行い、代表取締役は会社を代表して法律行為を行います。
したがって、代表取締役に就任した人が株主として行使できる議決権は、その人が保有する株式によって決まります。また、多数の株式を保有していても、それによって取締役や代表取締役の地位が生じるわけではなく、その地位は会社法上の手続によって定まります。複数人で株式会社を設立する場合は、各人に持たせる株式・議決権と、取締役・代表取締役として経営を担う者をそれぞれ定めます。
※株式会社で取締役や取締役会などの機関をどのように設計するかについては、株式会社の役員・機関設計はどう決める?|取締役会を置く場合・置かない場合の考え方で解説しています。
類株式では株式数と株式の内容によって権利が変わる
株式会社では、内容の異なる種類株式を発行し、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会における議決権などについて異なる内容を定めることができます。そのため、種類株式を利用する会社では、同じ株式数を保有していても、株主として持つ権利が同一になるとは限りません。
たとえば、出資額に応じた経済的利益を確保しながら、議決権について異なる内容を定めることもできます。この場合、各出資者が取得する株式数と各種類株式に付された議決権の内容によって、実際の意思決定権の配分が決まります。
普通株式だけで設立する会社では、株式数と議決権の関係を中心に考えます。種類株式を利用する場合は、各出資者が取得する株式数と、その株式に付される権利の内容まで確定させます。
合同会社では出資額と会社運営に関する事項をそれぞれ定める
合同会社では、出資者が会社法上の「社員」となります。ここでいう社員は、合同会社を構成する者としての法的地位を表す言葉で、雇用される従業員とは意味が異なります。
合同会社の定款には、社員の氏名または名称・住所のほか、各社員の出資の目的とその価額または評価の標準などを記載します。社員になろうとする者は、設立登記までに金銭出資の全額を払い込み、金銭以外の財産を出資する場合にはその全部を給付します。
たとえば、Aが300万円、Bが200万円を出資すれば、出資額の割合はAが60%、Bが40%となります。この割合は、各社員がどの程度の財産を拠出したかを示します。業務執行や意思決定については、社員に関する会社法上の規律と定款の定めに従って、その方法や権限を定めます。
合同会社を複数人で設立するときは、各社員の出資額とともに、誰が日常の業務を行うのか、複数の社員がいる場合に誰の賛成で業務を決めるのか、誰が会社を代表するのか、利益や損失をどの割合で分けるのかまで決めていきます。
業務を執行する社員と業務の決定方法を定める
合同会社では、原則として社員が業務を執行します。社員が2人以上いる場合には、定款に別段の定めがある場合を除き、業務に関する決定は社員の過半数で行います。定款によって業務を執行する社員を定め、その社員が2人以上いる場合には、原則として業務執行社員の過半数で業務を決定します。
たとえば、Aが300万円、Bが100万円、Cが100万円を出資し、3人全員が業務を執行する場合、Aの出資額は全体の60%を占めます。この場合も、定款に別段の定めがなければ、業務に関する決定は社員の過半数で行います。
したがって、Aが資金の60%を負担しているという事情から、Aに単独で業務を決定する権限が生じることはありません。Aを中心として業務を決定する体制を採る場合は、業務執行社員と業務の決定方法について、会社法の規律に沿って定款に定めます。
代表社員を定めて代表権の所在を明確にする
合同会社では、業務を執行する社員が原則として会社を代表し、業務執行社員が複数いる場合には各自が会社を代表します。定款または定款の定めに基づく社員の互選によって、その中から代表社員を定めることもできます。
たとえば、AとBの双方を業務執行社員とした場合、代表社員を別に定めなければ、AとBがそれぞれ会社を代表します。Aを代表社員として定めた場合は、Aが会社を代表して契約を締結するなどの法律行為を行います。
複数人で合同会社を設立する場合は、出資額とあわせて代表権の所在を定め、設立後に誰が会社を代表して契約などの法律行為を行うのかを明確にします。
損損益分配は出資割合と異なる割合を定めることができる
合同会社では、損益分配について定款で割合を定めることができます。定款に損益分配の割合を定めていない場合は、各社員の出資の価額に応じて割合が決まり、定款に別の割合を定めた場合は、その割合に従って損益を分配します。
たとえば、Aが300万円、Bが200万円を出資する場合、出資価額を基準とした割合は60%対40%です。損益分配について定款に別段の定めを置かなければ、この割合が損益分配の基準となります。異なる割合で分配する場合は、その割合を定款に定めます。
出資額と損益分配割合をそれぞれ定めることで、各社員が負担する資金と、その後の利益・損失の配分を具体的に決めることができます。
※会社設立時に定款へ記載する事項については、会社設立の定款には何を書く?|必ず記載する事項と会社に合わせて定める事項で解説しています。
株株式会社と合同会社では出資割合の位置づけが異なる
複数人で会社を設立するときに「出資割合を60%と40%にする」と決めても、その割合が持つ法的な意味は株式会社と合同会社で異なります。
| 検討事項 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者の地位 | 株主 | 社員 |
| 出資との関係 | 出資により株式を取得 | 社員が定款に定めた出資を履行 |
| 意思決定との関係 | 原則として保有株式の議決権を通じて株主総会に参加 | 社員による業務執行・業務決定の規律に従う |
| 出資額以外に決める主な事項 | 取得株式数・株式の種類 | 業務執行社員・代表社員・意思決定方法等 |
| 利益との関係 | 株式の内容等に応じて剰余金の配当を受ける | 定款に定めがなければ出資価額に応じて損益を分配 |
株式会社では、出資額を株式数や株式の内容に反映させ、その株式を基礎として各株主の議決権などが定まります。合同会社では、各社員の出資額を定めたうえで、業務執行、代表、損益分配について会社法と定款に基づく関係を定めます。
同じ60%対40%という出資割合でも、株式会社では株式の数や内容を通じて株主としての権利に反映されます。
合同会社では、出資額に加え、業務執行、代表、損益分配等を定めることで、各社員の権利や権限が具体化します。
会社形態によって出資と権利のつながり方が異なるため、出資割合を決める際にあわせて定める事項も変わります。
出資割合は設立後の会社運営まで考えて決める
複数人で会社を設立する場合は、各人の資金負担を決めたうえで、その出資が設立後の権利関係にどのようにつながるかを会社形態に応じて具体化します。
株式会社では、各人が取得する株式数とその内容を定め、そこから生じる議決権割合を明らかにします。これにより、株主総会で各人がどの程度の議決権を持ち、普通決議や特別決議について誰の賛成が必要になるのかが具体的に見えてきます。出資者が経営にも携わる場合は、取締役や代表取締役を誰が担うのかもあわせて定めます。
合同会社では、各社員の出資額とともに、業務執行社員、代表社員、業務の決定方法、損益分配を定めます。
たとえば、Aが60%を出資して経営の中心を担う予定であれば、Aが業務を執行する体制、代表権の所在、他の社員を含めた業務の決定方法を定めることで、予定する会社運営を具体化できます。損益分配を出資割合と異なる割合にする場合は、その割合も定款に反映します。
出資割合を決める際は、各人の資金負担を起点として、株式会社では取得する株式と議決権、合同会社では業務執行・代表・損益分配まで具体化します。各人の出資と設立後の権利・権限を対応させることで、複数人で設立する会社の運営体制を明確にできます。
※出資内容を決めた後の定款作成、出資金の払込み、設立登記までの手続については、会社設立の流れ|定款作成から出資金の払込み・設立登記までを解説で解説しています。
※会社設立の全体像や流れなどについては、会社設立では何を決める?|法人形態の選択から会社ができるまでの流れを参考にしてください。