独身で子どもがおらず、兄弟姉妹もいない場合、「自分が亡くなった後の財産は誰のものになるのだろう」と考えることがあるかもしれません。
「相続人がいないのだから、そのまま国のものになる」と思われることもありますが、実際には一定の手続を経て帰属先が決まります。
遺言があればその内容が優先され、借金などの債務を整理し、特別縁故者への財産分与の可否も確認した上で、最終的な帰属先が確定します。
この記事では、相続人がいない場合に手続がどのような流れで進み、最終的な帰属先が決まるのかを解説します。
相続人がいない場合でも、財産の帰属先は順を追って決まる
相続人がいない、または相続人の存否が明らかでない場合でも、相続財産が放置されることはありません。
財産には、不動産や預貯金だけでなく、借金などの債務も含まれます。
管理する人がいないままでは、債権者への支払いや財産の処分が進まず、帰属先も決まりません。
そこで民法は、相続人がいない場合でも財産を管理・清算し、最終的な帰属先を確定する仕組みを設けています。
相続人がいない場合の財産の流れ
相続人がいない場合の相続財産は、概ね次の流れで整理されます。
1. 遺言や遺贈の有無確認
2. 利害関係人による申立てと相続財産清算人の選任
3. 相続人捜索の公告
4. 債権者などへの支払い
5. 特別縁故者への財産分与
6. 残った財産が国庫への帰属
「相続人がいない」という時点で財産の行き先が決まるわけではなく、法律で定められた手続に沿って進め、最後に財産の帰属先が確定します。
遺言があれば、その内容が優先される
相続人がいなくても、遺言があれば、その内容に従って財産を承継できます。
遺言では、法定相続人以外の人や法人、地方公共団体、公益法人などへ遺贈することで財産を遺すことも可能です。
相続人がいない場合ほど、遺言によってその承継先を決める意味は大きくなります。
もっとも、遺贈も債権者への支払いに優先するものではなく、債務の弁済などの清算が行われた後に履行されます。
※遺贈とはどんな制度なのかについては、いかの記事が参考になります。
「遺贈とはどんな制度なのか|相続との違いや第三者へ財産を渡せる仕組みを解説」
「包括遺贈と特定遺贈の違いは?|取得する権利や負担する義務をわかりやすく解説」
相続財産清算人が財産を管理・清算する
相続人がいない場合は、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任されます。
相続財産清算人は保管だけではなく、遺言や遺贈の有無を確認し、不動産などを売却して現金化し、借金などを支払います。その後、特別縁故者がいないかを確認し、最終的な帰属先が決まるまで一連の手続を進めます。
財産が放置されないのは、相続財産清算人が中心となって管理・清算を行う仕組みになっているためです。
※相続財産清算人とは、遺産整理受任者との違いはなどについては、以下の記事で解説しています。
「遺産整理受任者と相続財産清算人は何が違うのか?」
借金などは債権者への支払いが優先される
相続人の有無にかかわらず、借金などの債務は消えて無くなるわけではありません。
相続財産清算人は、財産を換価しながら、亡くなった方(被相続人)の債権者へ支払いを行います。
遺贈を受ける人がいる場合でも、債務の支払いに必要な財産は優先して充てられます。
こうして被相続人の権利義務を整理した後、残った財産について帰属先の確認が進められます。
特別縁故者が財産を受け取れることもある
相続人がいない場合でも、一定の条件を満たす人は、家庭裁判所へ特別縁故者(被相続人と特別な関係があった人)として財産分与を申し立てることができます。
例えば、
・ 長年にわたり被相続人を介護していた人
・ 生計を共にしていた内縁の妻(夫)
・ 被相続人の療養看護に尽くした人
などが認められる可能性があります。
相続人の不存在が確定した後、家庭裁判所が定める期間内に申立てを行い、特別縁故者に当たるかどうかや、どの程度の財産を分与するかは、家庭裁判所が個別の事情を踏まえて判断します。
最後に残った財産が国庫へ帰属する
遺言による遺贈もなく、債権者への支払いが終わり、特別縁故者の確認などすべての手続き・清算が終わり、残余財産がある場合に国庫へ帰属します。
国は最初から財産を取得する立場ではなく、相続財産清算人による管理・清算を経ても承継する人が見つからなかった場合に、最後の帰属先となります。
自分の意思を実現したいなら遺言を検討する
相続人がいない場合でも、遺言書を作成しておけば、自分の財産を誰へ承継させるかを決められます。
特別縁故者への財産分与は家庭裁判所の判断によるため、希望する人へ必ず財産が渡るとは限りませんが、遺言による遺贈であれば、自分の意思で受遺者(遺言によって財産を受け取る人)を指定できます。
将来、自分の財産を誰へ承継させたいのかを明確にしたい場合は、遺言の作成を検討するとよいでしょう。
※遺言書が必要なケースや遺言の方式に関しては、以下の記事でわかりやすく解説しています。
「遺言・相続手続きの全体像|相続制度は誰のために存在しているのか」
「遺言書が必要な人とは|相続のルールだけでは希望を実現しにくいケース」
「公正証書遺言と自筆証書遺言|どちらを選ぶかは「何を重視するか」で変わる」
相続人がいない場合も、財産の帰属先は確定していく
相続人がいない場合でも、財産は法律で定められた順序に沿って処理されます。
相続財産清算人が中心となって管理・清算し、遺言による承継、債権者への支払い、特別縁故者への財産分与の可否を順番に確認します。その結果、残った財産が国へ帰属します。
このように、相続人がいない場合にも、財産を放置することなく、誰が承継するのかを一つずつ確認しながら、最終的な帰属先を確定する仕組みです。
独身で子どもがおらず、自分の財産を特定の人や団体などへ承継させたいと考えている場合は、法律上の処理に委ねるのではなく、遺言によって意思を示しておくことが大切です。