遺言執行者が選任されると、戸籍等の取得費用や郵送費などの実費に加え、遺言執行者への報酬が生じることがあります。不動産や相続税申告が関係する場合には、登記や税務に関する費用も加わります。

遺言執行にかかる支出は、執行に伴う実費、遺言執行者への報酬、登記や相続税申告など個別の手続にかかる費用に分けると、それぞれの負担と算定方法が明確になります。

この記事では、それぞれの費用が何のために生じ、どのように負担・算定されるのか、専門家へ依頼する前に何を確認すればよいのかを解説します。

遺言執行に伴う実費と遺言執行者報酬は性質が異なる

遺言執行を進めるためには、戸籍などの証明書を取得したり、関係者へ書類を送付したり、遺言の内容に応じて各財産の手続を行ったりするための費用が生じます。

例えば、次のような支出です。

  • 戸籍謄本や住民票などの取得費用
  • 登記事項証明書などの取得費用
  • 郵送費や交通費
  • 金融機関などでの手続に伴う実費
  • 遺言執行のために必要となるその他の実費

これらは遺言を執行するために実際に支出する金銭であり、遺言執行者に報酬が定められている場合には、これとは別に職務を行ったことに対する対価として報酬が発生します。

実費は遺言を執行するために支出した金銭、報酬は遺言執行者が職務を行うことに対する対価です。 見積書や精算内容では、両者を区分して、それぞれ何に対する支出かを確認します。

遺言執行に必要な費用は相続財産から負担する

民法では、遺言の執行に関する費用は相続財産の負担とすることが定められているため、遺言の内容を実現するために必要となった証明書の取得費や郵送費などは、原則として相続財産から負担します。

相続財産の負担となるかは、その支出が遺言の執行に関する費用に当たるかによって決まります。

また、遺言執行費用を相続財産から負担することによって遺留分を減ずることはできないと民法に定められています。

遺言執行者の報酬は遺言書の定めや家庭裁判所の審判などによって決まる

遺言執行者の報酬は、遺言者が遺言で定めることができます。

遺言に報酬の定めがない場合には、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができるほか、相続人と遺言執行者の合意によって報酬額を定めることもできます。 家庭裁判所には「遺言執行者に対する報酬付与」の手続が設けられています。

専門家を遺言執行者として指定する場合には、遺言書の作成時に報酬額や算定方法を定めておくことがあります。専門家ごとに報酬体系が異なるため、依頼する場合には、その専門家が定める報酬基準や契約内容も確認します。

遺言執行者が担当する職務は、遺言の内容によって異なります。相続人や相続財産に関する調査、財産目録の作成、預貯金などの手続、受遺者への財産の引渡し、執行終了時の報告などが含まれ、財産の種類や件数、関係者の数によって業務量も変わります。

必要となる職務や業務量が遺言の内容によって異なるため、専門家へ依頼した場合の報酬も一律ではありません。

専門家への報酬は算定方法と業務範囲を併せて確認する

専門家が遺言執行者となる場合の報酬体系には、定額方式、相続財産額を基準とする方式、定額部分と財産額に応じた部分を組み合わせる方式などがあります。

同じ財産額でも、預貯金口座や不動産の数、相続人・受遺者の人数、財産を引き渡すまでに行う手続によって業務量は変わります。そのため、報酬を確認するときは、算定方法とその金額に含まれる業務を対応させることが重要です。

例えば、次の事項を確認します。

  • 相続人・受遺者や相続財産の調査が含まれるか
  • 戸籍などの取得代行が含まれるか
  • 預貯金や有価証券の手続が含まれるか
  • 財産の引渡しまで含まれるか
  • 実費が報酬とは別に請求されるか
  • 追加報酬が発生する条件があるか
  • 報酬を支払う時期はいつか

見積額を比較する際は、金額と業務範囲を対応させます。

相続登記や相続税申告の費用は遺言執行者報酬と区分する

遺言の内容に不動産や相続税申告が関係する場合には、遺言執行者の報酬に加えて、それぞれの手続に伴う費用が生じることがあります。

不動産について登記手続が必要になれば登録免許税などの実費が発生し、司法書士へ登記申請の代理を依頼する場合には、その報酬も必要です。

また、相続税の申告が必要となり、税理士へ申告書の作成や税務代理を依頼する場合には、税理士報酬が生じます。

司法書士への登記報酬や税理士への申告報酬は、遺言執行者報酬と区分して確認します。 遺言執行者が各専門家と連携して手続を行う場合には、見積書で遺言執行者、司法書士、税理士など、それぞれの業務と報酬の範囲を確認します。

相続人や受遺者との間で紛争が生じ、弁護士への依頼が必要となった場合も、その対応に関する費用は遺言執行者の通常の報酬と区分して扱います。

依頼前に支払時期と精算方法を確認する

専門家へ遺言執行を依頼する場合には、報酬の算定方法や業務範囲に加えて、報酬や実費をいつ、どのように支払い、精算するのかについても確認します。主な確認事項は次のとおりです。

  • 遺言執行者報酬を支払う時期
  • 実費を都度支払うのか、まとめて精算するのか
  • 相続財産から支出する費用の精算方法
  • 追加報酬が発生した場合の扱い
  • 執行終了時の報告と精算の方法

これらを事前に確認しておくことで、遺言執行の途中で生じる支出と、執行終了時に精算する金額を把握しやすくなります。

相談時に遺言書と、預貯金・不動産・有価証券などの財産内容が分かる資料を用意すると、遺言執行者が担当する業務と費用を具体化しやすくなります。

遺言執行の費用は支出の種類と業務範囲を対応させて確認する

遺言執行にかかる支出は、執行に伴う実費、遺言執行者への報酬、登記・税務など個別の専門手続にかかる費用に分かれます。

専門家へ依頼するときは、遺言書と財産の内容から遺言執行者が担当する業務を明らかにし、その業務に対する報酬、別途生じる実費、他の専門家へ支払う費用を区分します。

見積額は、誰がどの業務を担当し、その業務にいくらかかるのかを対応させて確認します。 あわせて、追加費用が生じる条件や支払時期、相続財産から支出する費用の精算方法まで確認しておくことで、遺言執行に伴う支出の全体像が明確になります。