産業廃棄物収集運搬業を行うには、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
許可取得を検討している方の中には、
・講習会は必ず受講しなければならないのか
・どのような車両が必要なのか
・経理的基礎ではどのような財務状況が審査の対象となるのか
といった疑問を持つ方も多いでしょう。
収集運搬業許可には複数の要件がありますが、個々の要件を満たせばそれで足りるというものではありません。
廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制し、適正な分別・保管・収集・運搬・再生・処分等を行うことにより、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。
そのため収集運搬業許可では、申請者が収集運搬業務を適正かつ継続的に行える体制を備えているかという観点から審査が行われます。
許可基準では、事業に使用する施設が収集運搬に適したものであること、事業を的確かつ継続して行うための能力を備えていること、欠格要件に該当しないことなどが審査されます。
申請時には、事業計画、車両・容器、講習修了者、財務資料、役員等に関する資料を組み合わせ、予定している収集運搬事業を実行できる体制を具体的に説明します。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業許可における主な要件と、申請準備の段階で押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
※産業廃棄物収集運搬業許可の取得手続や費用については、以下の記事を参考にしてください。
「産業廃棄物収集運搬業許可(積替・保管を除く)|取得にあたって押さえるべき要点」
「産業廃棄物収集運搬業許可の費用はいくら?|金額の目安と内訳、営業開始後にかかる費用まで解説」
なぜ許可要件が設けられているのか
廃棄物処理法が保護しているもの
収集運搬業許可は、事業者の営業を認めるだけの制度ではなく、産業廃棄物の適正な処理を確保するための仕組みです。
廃棄物処理法は、廃棄物の適正処理や処理責任の明確化を通じて、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。
産業廃棄物は、排出事業者から収集運搬業者、処分業者へと引き継がれながら処理されます。その途中で飛散や流出などが生じれば、処分場へ到達する前の段階で適正な処理が損なわれます。
こうした事態を防ぐため、収集運搬業者には、受託した産業廃棄物を予定した方法で処分先まで安全に運搬できる体制と、関係法令を遵守して業務を行う能力が求められています。
許可制度の役割
収集運搬業許可は、廃棄物処理の一部を担う事業者として適切な体制を備えているかを審査するための制度です。
許可申請では、
・収集運搬業務に必要な知識を備えているか
・実際に運搬できる体制があるか
・事業を継続できる財務基盤があるか
・欠格事由に該当しないか
といった事項が審査の対象となります。
講習会、車両、財産的基盤、欠格事由といった要件は、いずれも申請者が予定している収集運搬事業を適正かつ継続的に行えるかを判断するために設けられています。
たとえば、必要な講習を修了していても、申請する産業廃棄物を安全に運搬できる車両や容器が用意されていなければ、その事業計画を実行することはできません。
また、運搬体制を整えていても、事業を継続するための経理的基礎を説明できなければ、許可基準との関係で審査上の問題が残ります。
したがって、個々の要件を別々に捉えるのではなく、申請する収集運搬事業を実行するための体制として相互に関連付けて考えることが重要です。
許可申請で審査される主な要件
講習会修了などの知識要件
収集運搬業では、廃棄物処理法やマニフェスト制度、委託基準などに関する理解が求められます。
許可申請では、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会の修了証を用いて、収集運搬業務に必要な知識を備えていることを裏付けます。
法人の場合、神奈川県では代表者、その業務を行う役員(監査役を除く。)、または一定の政令使用人が講習修了者となります。
個人の場合は、申請者本人または一定の政令使用人が対象です。会社の従業員であれば誰の修了証でも使用できるわけではありません。
新規許可申請では、申請日の時点で有効な修了証が必要です。新規講習の修了証は、神奈川県では発行日から5年間が有効期間です。
講習の申込みから受講、修了証の取得までを見込み、有効な修了証を準備したうえで申請します。
※講習会の受講タイミングや注意点などについては、以下の記事で解説しています。
「産廃許可講習とは|更新講習を含めた受講タイミングと注意点」
車両や容器などの運搬体制
収集運搬業を行うには、実際に産業廃棄物を安全に運搬できる体制を備えていなければなりません。
申請時には、使用する車両や容器、駐車場所などを申請書類に記載し、予定している運搬方法を具体化します。
車両については、申請者が実際に使用できるものでなければならず、車検関係資料のほか、必要に応じてリース契約書や使用承諾書などによって使用権原を明らかにします。
使用予定の車両や使用権原が定まっていなければ、申請書に記載する運搬体制そのものを確定できません。
さらに、車両を用意すればよいわけではなく、申請する産業廃棄物を飛散・流出させずに運搬できることが必要です。
液状・泥状の廃棄物と固形物では必要となる運搬方法が異なるため、廃棄物の性状に応じた車両や容器を選び、事業計画と対応させます。
借用車両やリース車両を使用する場合も、申請書に記載する登録番号、車両写真、車検関係資料、使用権原に関する資料が同じ車両についてのものであることが前提となります。
経理的基礎
収集運搬業は継続的な事業活動として行われるため、申請者には事業を継続できる経理的基礎が求められます。
神奈川県では、法人について直前3年間の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などを提出します。
これらの財務資料を通じて、一時点の預金残高だけでは把握できない複数年度の財務状況も含め、収集運搬事業を継続できる経理的基礎が審査されます。
赤字や債務超過であっても、それだけで直ちに許可を受けられなくなるとは限りません。
ただし、財務状況によっては、今後どのように事業を継続していくのかについて追加資料や説明を求められる場合があります。
したがって、経理的基礎については利益の有無だけで判断せず、継続して収集運搬業務を行える財務状況を資料から説明できるかという観点で準備することが重要です。
財務面に懸念がある場合は、申請直前まで対応を先送りせず、決算書を把握した段階で、通常の提出資料で対応できるのか、追加資料や説明が必要になるのかを申請先の取扱いに沿って検討しておく方がよいでしょう。
欠格事由
収集運搬業許可では、欠格事由に該当しないことも許可の要件となります。
欠格事由は、一定の法令違反歴などがある場合に許可を制限する仕組みです。
暴力団関係者や、廃棄物処理法などについて一定の法令違反歴がある者などが該当します。
対象となるのは申請法人だけではありません。役員、一定の株主・出資者、政令使用人など、法令上の対象者にも及びます。
住民票や登記事項証明書などの提出を求められるのも、申請事業者の経営や支配に関与する人物・法人を特定し、許可要件との関係を審査するためです。
発行済株式総数または出資額の5%以上を有する株主・出資者についても、添付資料の対象となります。
また、欠格要件は許可取得時だけの問題にとどまりません。許可取得後に欠格要件へ該当すれば許可取消しにつながる場合があるため、事業を継続する間も許可の前提となる要件です。
許可申請前に押さえておきたい実務上のポイント
許可申請の準備では、必要書類を一通り集めるだけでなく、申請書と添付資料が同じ事業体制を前提として作成されていることが重要です。
特に、次の事項は申請前に押さえておきたいところです。
・講習修了者は対象者に該当しているか
・使用する車両が確定しているか
・車両の使用権原を説明できる資料があるか
・申請品目に適した車両・容器を用意しているか
・駐車場所を確保しているか
・財務資料から事業継続のための経理的基礎を説明できるか
・役員や一定の株主・出資者など、欠格事由の対象者を漏れなく把握しているか
車両関係では、車検証上の名義が申請内容と異なっていたり、リース契約や使用承諾の内容から申請者の使用権原を十分に説明できなかったりすると、追加資料や補正が必要になります。
財務関係についても、債務超過や純資産の状況によっては、通常の決算関係資料に加えて財務改善に関する説明を求められる場合があります。
こうした事情がある場合には、申請書を提出する段階になって初めて対応するのではなく、事前に必要となる資料を検討しておくことが重要です。
また、個々の資料が正しくても、申請書類全体の内容が一致していなければ、予定している事業体制を十分に説明できません。
たとえば、事業計画では複数種類の産業廃棄物を運搬する予定であるにもかかわらず、車両や容器がその品目の性状に対応していなければ、事業計画と運搬体制の間に食い違いが生じます。
新たに車両や容器を購入する計画であれば、その費用も事業開始資金や財務資料との関係が問題になります。
同様に、講習修了証の名義人、役員情報、車両関係資料、財務資料などが異なる時点や前提で作成されていると、実際にどの体制で事業を開始するのかが申請書類全体から読み取りにくくなります。
申請前には、それぞれの書類を個別に点検するだけでなく、申請書、事業計画、講習修了者、役員情報、車両・容器、財務資料を一つの事業計画として照らし合わせておくことが、補正や追加説明を減らすうえでも有効です。
なお、神奈川県で積替・保管を除く収集運搬業の許可を申請する場合は、申請者の住所または法人の本店所在地によって、県庁資源循環推進課または各地域県政総合センターが申請窓口となります。申請準備とあわせて、自社の申請先も把握しておきましょう。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可では、
・講習会修了などの知識要件
・車両や容器などの運搬体制
・経理的基礎
・欠格事由
などが審査の対象となります。
これらの要件は、申請者が産業廃棄物の収集運搬を適正かつ継続的に行える体制を備えているかを判断するためのものです。
講習修了証は必要な知識を備えていることの裏付けとなり、車両や容器に関する資料からは実際の運搬体制が審査されます。
財務資料は事業を継続できる経理的基礎を判断する資料となり、役員や一定の株主・出資者などについては欠格事由との関係が審査されます。
申請準備にあたっては、まず予定している収集運搬の流れを具体化しておくことが重要です。
どこで、どの産業廃棄物を積み、どの車両・容器を使って、どこへ搬入するのか。その事業を誰が運営し、必要な設備や資金をどのように確保するのかまで具体化すれば、各許可要件を一つの事業体制として捉えやすくなります。
そのうえで、実際の事業内容を申請書、事業計画、講習修了証、車両関係資料、財務資料へ一貫して反映させます。
こうした準備によって、車両と申請品目が合わない、講習修了者が申請者側の対象者に該当しないといった申請内容の食い違いも防ぎやすくなります。
許可取得後も、申請時に届け出た事業体制を前提として収集運搬業を行います。役員や車両などの届出事項が変われば変更届が関係し、取扱品目の追加など事業範囲を広げる場合には変更許可が必要になります。
新規許可の段階から実際の事業と申請内容を一致させておくことが、その後の営業、変更、更新まで適切に許可を維持していくための基礎となります。
※許可取得における費用や資金計画については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
「産業廃棄物収集運搬業許可の費用はいくら?|金額の目安と内訳、営業開始後にかかる費用まで解説」