建設工事を請け負って営業する場合、原則として建設業許可が必要です。ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、建設業許可を受けずに営業できます。

軽微な建設工事に該当するかは、工事の種類と1件の請負代金などによって決まります。特に注意したいのは、500万円という金額だけを見て許可の要否を決めると判断を誤ることです。建築一式工事には別の基準があり、複数の契約に分けた場合や、注文者から材料の提供を受ける場合には、請負代金の計算上のルールがあります。

この記事では、軽微な建設工事に該当する基準、請負代金の考え方、許可を受けていない事業者にも適用される建設業法上のルール、事業拡大に伴って許可が必要になる場面まで解説します。

軽微な建設工事の基準

建設業法では、建設工事の完成を請け負う営業について建設業許可制度を設けています。そのうち、一定の規模に満たない工事が「軽微な建設工事」とされ、軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可を必要としません。

軽微な建設工事の基準は、建築一式工事と、それ以外の建設工事で異なります。

工事の種類軽微な建設工事に該当する基準
建築一式工事1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
建築一式工事以外1件の請負代金が500万円未満

金額はいずれも消費税込みです。建築一式工事では、請負代金が1,500万円以上であっても、延べ面積150㎡未満の木造住宅工事であれば軽微な建設工事に該当します。

ここでいう木造住宅は、主要構造部が木造で、住宅、共同住宅または延べ面積の2分の1以上を居住の用に供する併用住宅を指します。そのため、延べ面積150㎡未満の木造建築物であれば、用途を問わず軽微な建設工事に該当するわけではありません。

たとえば、内装仕上工事や電気工事、管工事などの専門工事は、1件の請負代金が500万円未満であれば軽微な建設工事の範囲に入ります。500万円以上の工事を請け負う場合には、その工事に対応する建設業許可が必要です。建設業許可は29の業種に区分されているため、実際に請け負う工事がどの業種に該当するかも併せて特定します。

請負代金の判断方法

軽微な建設工事の基準を当てはめるには、まず実際に請け負う工事の内容を特定します。

建築一式工事とそれ以外の建設工事では金額基準が異なるため、工事の種類を特定したうえで、その工事の請負代金が基準に収まるかを見ます。また、同一の工事について契約を複数に分けた場合や、注文者が材料を提供する場合には、契約書に記載された請負代金だけで判断できないことがあります。

請負代金は税込で判断する

軽微な建設工事の金額基準を判断するときは、消費税を含めた請負代金で判定します。見積書や契約書を確認する際も、税抜価格ではなく税込の金額を基準に当てはめます。

また、注文者が材料を提供する場合は、その材料の市場価格、または市場価格と運送費を請負代金に加えた額で判断します。請負契約上の金額が基準未満でも、提供された材料の価格等を加えることで基準額に達する場合があるため注意が必要です。

分割契約は原則として合計額で判断する

同一の建設工事について複数の契約に分けて請け負う場合には、正当な理由に基づいて契約を分割した場合を除き、各契約の請負代金を合計した金額で軽微な建設工事に該当するかを判断します。

たとえば、実質的に一つの600万円の専門工事について、300万円ずつ二つの契約に分けても、それぞれを500万円未満の工事として扱うことはできません。建設業法施行令上、二以上の契約に分割して請け負う場合の請負代金は、原則として各契約の合計額によります。

したがって、契約書が複数に分かれていることだけで金額基準を個別に当てはめるのではなく、どの工事を一つの請負工事として受注しているのかを踏まえて許可の要否を判断します。

許可が不要な場合の建設業法上のルール

軽微な建設工事に該当すれば、その工事を請け負うための建設業許可は不要です。ただし、建設業許可を受けていない事業者にも、建設工事の請負契約などに関する建設業法の規定は適用されます。

国土交通省も、軽微な建設工事のみを請け負う事業者について、建設業許可を取得せずに建設業を営むことを認める一方、無許可の事業者にも建設業法上の一定の義務や監督規定が及ぶことを示しています。

請負契約に関する規定

建設業法は、建設工事の請負契約について、契約当事者が対等な立場で公正な契約を締結し、誠実に履行すること、また、工事内容、請負代金、工期など法定事項を書面等に記載して相互に交付することも求められます。

これらは建設業許可を受けた事業者だけを対象とする規定ではありません。軽微な建設工事のみを扱う事業者も、建設工事を請け負う以上、適用される規定に従って契約を締結し、施工します。

工事内容に応じた他法令・資格

建設業許可が不要となる基準は、建設業法上の許可の要否に関する基準です。

実際の工事では、工事内容に応じて建築基準法、電気工事に関する法令、消防関係法令、労働安全衛生関係法令などが関係することがあります。施工に一定の資格が必要となる作業であれば、その資格に関する規制にも従う必要があります。

軽微な建設工事に該当する場合も、工事内容に応じて必要となる資格や他法令上の規制は別途適用されます。 実際に施工する工事について、建設業許可以外にどのような規制が関係するかも見ておく必要があります。

建設業許可が必要になるタイミング

軽微な建設工事だけを請け負っている事業者でも、受注する工事の規模が変われば許可の要否も変わります。

たとえば、内装仕上工事について450万円の工事だけを請け負っている段階では、金額基準上は軽微な建設工事に該当します。その後、700万円の内装仕上工事を受注するのであれば、軽微な建設工事の範囲を超えるため、内装仕上工事業の許可が必要になります。

軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負うには、その工事に対応する業種の建設業許可をあらかじめ受けておかなければなりません。 受注予定が具体化してから申請準備を始めると、許可取得までの間、その工事を適法に請け負えないことがあります。

今後500万円以上の専門工事や、建築一式工事について軽微な建設工事の範囲を超える案件を扱う予定がある場合には、受注計画に合わせて許可要件と申請時期を検討することになります。

公共工事を受注する場合に必要な手続

建設業許可を取得して受注範囲を広げる場合には、その先に公共工事への参入を予定している事業者もいます。

国や地方公共団体などが発注する公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、建設業許可を受けたうえで経営事項審査を受ける必要があります。公共工事の発注機関は、競争入札への参加を希望する建設業者について入札参加資格の審査も行います。

公共工事を元請として受注することを事業計画に含める場合には、建設業許可に加えて経営事項審査を受け、各発注機関が定める入札参加資格の手続を行います。

現在の受注が軽微な建設工事の範囲に収まっていても、今後扱う工事の金額や種類が変われば、建設業許可が必要になる時点も変わります。公共工事への参入まで予定している場合は、建設業許可に加えて経営事項審査や入札参加資格の手続も見込み、どの時期からどの規模の工事を受注するのかに合わせて準備時期を決めることになります。