遺産整理では、代表となる相続人や専門家が、相続人本人に代わって預貯金や有価証券などの相続手続を行うことがあります。その際、代理人に与えた権限を手続先へ示すために使用するのが委任状です。

相続人であることと、他の相続人を代理して手続を行う権限を持つことは、それぞれ別の問題です。
委任状は、誰が誰に、どの手続について代理権を与えたのかを明らかにし、代理人が本人に代わって手続を行う権限を手続先へ示します。

この記事では、遺産整理で委任状が使われる理由と、誰からどのような権限を受け、委任状に何を記載するのかを解説します。

委任状は代理人に与えた権限を示す書類

相続では、戸籍の収集や相続財産の調査のほか、預貯金、有価証券、不動産などについて各種相続手続を行います。

相続人本人が手続を行うときは本人として手続をしますが、代表となる相続人や専門家が代理する場合には、委任状によって代理権の存在とその範囲を手続先へ示します。

戸籍などは、被相続人と相続人との身分関係を示す書類です。一方、代理人に与えられた権限は委任状によって示します。 代理人による戸籍関係の請求についても、委任状によって権限を明らかにする取扱いが定められています。

このように、委任状は相続関係そのものを示す書類ではなく、本人が代理人に与えた権限とその範囲を手続先へ示す役割を持ちます。

委任する権限は手続の内容に応じて定める

遺産整理には複数の手続が含まれるため、代理人へ与える権限も、実際に任せる手続の内容に応じて定めます。

たとえば、法定相続情報証明制度では、相続人本人から委任を受けた代理人が申出を行うことができ、委任による代理人が手続をする場合には委任状を提出します。代理人となれる者についても制度上の範囲が定められています。

預貯金の相続手続や不動産の相続登記などを代理人へ任せる場合も、それぞれの手続に対応する権限を委任状に記載します。代理人が行えるのは委任された権限の範囲内の行為であるため、実際に任せる手続に応じて委任事項を定めます。

誰から委任を受けるかは手続の内容によって異なる

誰から委任を受けるかは、その手続について誰が権利を持ち、誰が代理して行うかによって決まります。 相続人の一人が自らの権限で行える手続は本人として行い、他の相続人が持つ権利について代理する場合には、その相続人から委任を受けます。

たとえば、複数の相続人が権利を持つ財産について、一人の相続人が他の相続人を代理して手続を行う場合には、その代理権を委任状によって示し、手続を行うことになります。

遺産整理を専門家へ一括して依頼する場合も、各専門家の業務範囲を踏まえたうえで、専門家がどの相続人から、どの手続について委任を受けるのかを個々の手続に応じて定めます。

委任状の記載内容と添付書類

委任状には、一般に委任者、受任者、委任する事項を記載します。

委任事項には、代理人へ任せる手続に対応する権限を記載します。 預貯金の解約・払戻し、証明書の取得、不動産の相続登記など、代理人が行う手続によって記載する内容が変わります。

手続先が所定の委任状を用意している場合には、その様式に従って作成します。法定相続情報証明制度でも、代理人による申出に使用する委任状の様式・記載例が公表されています。

押印方法や印鑑証明書などの添付書類も手続によって異なり、代理人による手続では、委任状に加えて本人確認書類などを求められることもあります。実際の作成・提出にあたっては、手続先が定める様式、押印方法、添付書類に従います。

手続の権利者と代理人から委任状の内容を決める

遺産整理で委任状を準備する際は、まず対象となる手続について誰が権利を持ち、実際に誰が手続を行うのかを明確にします。本人以外が代理する部分について、その手続に対応する権限を委任状に記載し、手続先が定める様式や添付書類に従って提出します。

代表となる相続人や専門家へ複数の手続を任せる場合も、預貯金、不動産、証明書の取得など、それぞれの手続について誰からどの権限を受けるのかを踏まえて委任内容を定めます。使用する様式や押印方法、添付書類についても、各手続先の取扱いに応じて準備します。

委任状の内容は、各手続について誰が権利を持つのか、誰が代理人となるのか、その代理人にどの権限を委ねるのかという関係に基づいて定めます。