「毎年出している」のに、経審評価へ十分に反映されない会社があります。

経営事項審査(経審)では、「決算変更届を提出しているか」だけで評価されるわけではありません。重要なのは、決算変更届の内容を、公共工事入札で使用できる資料として説明できるかです。

たとえば、次のような項目が分岐になります。
 ・ 完成工事高として説明できるか
 ・ 技術者を技術力へ算入できるか
 ・ 財務内容を経営状況分析で評価できるか
 ・ 加点項目を証明資料で説明できるか

そのため、
 ・ 毎年決算変更届を提出している
 ・ 技術者資格もある
 ・ 社会保険にも加入している
という会社でも、経審評価へ十分に反映されないことがあります。

特に神奈川県では、
 ・ 決算変更届
 ・ 経営状況分析
 ・ 経審
 ・ 入札参加資格申請
が連続します。

そのため、「提出書類を揃える段階」で止まっている会社と、「経審で評価に使える状態」まで確認している会社とで差が出やすくなります。

※経審準備の時期や、名簿登録まで逆算する考え方については、以下の記事でも整理しています。
 経営事項審査(経審)はいつから準備すべきか?

この記事では、経審でなぜ決算変更届が重要になるのか、更新時に何を確認すべきなのかを、神奈川県の実務を前提に整理します。

経審は「比較・評価に使える内容」を見る制度

経審では、発注機関側が公共工事入札で建設会社を比較できるように、主に次の内容を点数化します。
 ・ 完成工事高
 ・ 技術者数
 ・ 財務内容
 ・ 法令遵守状況
 ・ 労働福祉・防災活動などの加点項目

そのため、実務上の分岐は「書類を出したか」だけではありません。

重要なのは、
 ・ 工事内容を根拠資料で説明できるか
 ・ 決算変更届と経審資料が一致しているか
 ・ 技術者や加点項目を点数算定に使える状態か
です。

たとえば、完成工事高を計上していても、契約書や請求書で工事内容を説明できなければ、希望業種の完成工事高として十分に扱われないことがあります。
また、技術者資格証があっても、常勤性や所属営業所を説明できなければ、点数へ算入できないことがあります。

つまり、経審で差が出るのは、提出内容が、公共工事入札で比較できる資料として成り立っているかです。

決算変更届は「経審資料の土台」

神奈川県で経審を受ける場合、決算変更届の内容が経審資料の土台になります。

県側では、主に次の内容をもとに、経審資料として使用できるかを判断します。
 ・ 財務諸表
 ・ 工事経歴書
 ・ 完成工事高
 ・ 消費税処理

そのため、次のような状態では、経審へ進む前に決算変更届の修正や追加説明が必要になることがあります。
 ・ 工事経歴書と税務申告内容が一致しない
 ・ 完成工事高の根拠資料が不足している
 ・ 工事分類が曖昧
 ・ 未提出年度がある

実務上分かれるのは、決算変更届を「年間報告として提出しただけ」で終えているか、経審で完成工事高や財務内容の根拠として使える状態になっているかです。

経審では、「どの工事を、建設業法上どの業種の完成工事高として扱うか」が点数へ影響します。単に売上として計上されているだけでは足りず、工事経歴書・請求書・契約書・税務申告内容に矛盾がないことが重要になります。

※決算変更届のズレが経審へ与える影響については、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可 決算変更届のズレは経審にどう影響するか【神奈川県】

つまり、決算変更届は単なる年間報告ではありません。経審評価の土台を作る資料です。

※決算変更届で数字が合っているのに補正になる理由については、以下の記事でも整理しています。
 決算変更届|数字は合っているのに補正になる理由【神奈川県】

更新時は「経審で反映できる項目を見直せる時期」

建設業許可の更新時は、許可を維持できるかだけを確認する時期ではありません。

更新準備では、次の情報を改めて確認することになります。
 ・ 決算変更届
 ・ 技術者情報
 ・ 社会保険情報
 ・ 財務内容

この段階で資料の不一致や説明不足があると、その後の経審評価へ影響します。

逆に言えば、この段階では、
 ・ 技術職員の状況
 ・ 完成工事高の区分
 ・ 財務内容
 ・ 加点項目
を見直すことができます。

※更新時に、過去の届出経過と現在要件が問題になる理由については、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可更新は「今の書類」だけでは進まない|変更届・要件確認で止まる理由【神奈川県】

つまり、更新時は単なる「許可維持の確認」ではありません。次回以降の経審で使用できる資料になっているかを確認する機会でもあります。

技術職員は資格保有ではなく「技術力へ算入できる状態」で差がつく

経審では、資格を持つ人がいるだけで、そのまま技術職員点数へ反映されるわけではありません。

技術職員として算入するには、その技術者について、
 ・ 資格区分
 ・ 常勤性
 ・ 実務経験
 ・ 所属営業所
 ・ 対応する業種
を資料で説明できる必要があります。

判断材料になりやすいのは、次のような資料です。
 ・ 健康保険情報
 ・ 雇用保険情報
 ・ 賃金台帳
 ・ 住民票
 ・ 営業所所属情報

そのため、
 ・ 他社兼務の疑義がある
 ・ 所属営業所が資料ごとに一致しない
 ・ 雇用関係や常勤性を説明する資料が不足している
場合には、資格保有者がいても技術職員点数へ算入できないことがあります。

※営業所技術者の常勤性や実務上の判断ポイントについては、以下の記事でも整理しています。
 営業所技術者とは|要件・判断基準・実務上の落とし穴を解説

更新時に確認すべきなのは、「誰が資格を持っているか」だけではありません。その技術者を、希望業種の技術力へ算入できる状態で説明できるかです。

財務諸表は「経営状況分析用」として扱われる

経営状況分析では、国土交通大臣登録の分析機関がY評点を算出します。
ここで重要なのは、決算書の数字そのものだけでなく、その処理が分析上そのまま使える形になっているかです。

たとえば、次のような項目は、財務評価へ影響します。
 ・ 減価償却
 ・ 特別損益
 ・ 短期借入金
 ・ 純資産計上
 ・ 自己資本の内容

税務申告では、損金処理や役員報酬、減価償却、借入金処理などについて一定の説明ができる場合があります。しかし、経営状況分析では、それらの処理が財務安定性や収益性の評価に影響します。

たとえば、節税目的で利益を大きく圧縮している場合、税務上は問題がなくても、経審上は利益や自己資本の評価が伸びにくくなることがあります。
また、短期借入金が多い、純資産が薄い、減価償却の処理に説明が必要といった場合には、分析機関から追加資料を求められることがあります。

つまり、決算書は「税務申告に使えるか」だけでなく、「経営状況分析で財務内容を適切に評価できる形になっているか」という視点でも確認する必要があります。

労働福祉・法令遵守・防災活動も評価対象

経審では、完成工事高や技術者数だけでなく、会社の施工体制や社会性も評価対象になります。

具体的には、次のような項目です。
 ・ 建退共(建設業退職金共済制度)加入
 ・ 退職金制度・企業年金
 ・ 法定外労災(上乗せ労災保険)
 ・ 防災協定(自治体等との災害協定)
 ・ 建設機械の保有
 ・ ISO(品質・環境等の国際認証)
 ・ 建設業経理士などの経理体制
 ・ CPD(技術者の継続学習)
 ・ 若年技術者の育成

これらは、経審で加点項目として扱われます。

ただし、「実施している」「加入している」だけでは足りません。経審で点数へ反映するには、評価基準日における加入状況、有効期間、対象範囲、証明書類の内容が経審の要件に合っている必要があります。

たとえば、
 ・ 建退共加入証明
 ・ 防災協定書
 ・ CPD学習履歴
 ・ ISO登録証
 ・ 法定外労災加入証明

などについて、対象者・対象期間・証明日・契約内容が経審の評価対象と一致しているかが問題になります。

つまり、加点項目で重要なのは、「制度を利用しているか」だけではありません。経審で加点対象として認められる要件を、証明資料で具体的に説明できるかです。

電子申請で不一致が表面化しやすい

神奈川県では、窓口予約集中や電子化対応の流れから、JCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)の利用が増えています。
JCIPでは、決算変更届・技術者資料・財務資料・社会保険資料を電子データとして提出します。
そのため、紙で個別に確認していたときよりも、資料同士の不一致が表面化しやすくなります。

たとえば、次のような状態です。
 ・ 工事経歴書の内容が決算資料と合わない
 ・ 常勤性資料が不足している
 ・ 財務資料の数字に矛盾がある
 ・ 加点資料が評価基準日と合わない

電子申請で問題になるのは、提出された資料を横断して見たときに、経審の点数算定に使える内容として整合しているかです。

経営状況分析機関の選定でも後続手続に差が出る

経営状況分析機関とは、経審で使用するY評点を算出する、国土交通大臣登録の分析機関です。
会社側は、経審申請の前に、分析機関へ財務諸表などを提出します。分析機関は、その資料を確認し、財務内容を点数化した分析結果通知を発行します。
この分析結果通知がなければ、神奈川県へ経審申請を行うことはできません。

分析機関が確認するのは、主に次のような内容です。
 ・ 財務諸表の表示方法
 ・ 減価償却の処理
 ・ 特別損益の内容
 ・ 短期借入金の処理
 ・ 純資産の内容

資料内容に不一致や説明不足がある場合、分析機関から追加資料や補足説明を求められることがあります。

分析機関は同じ財務内容であれば、どの機関を選んでも評価結果が変わるものではありません。そのため、実務上は手数料、処理期間、提出方法、電子申請対応の有無などで選ぶことが多くなります。

一方で、分析機関によって、
 ・ 電子申請対応
 ・ 結果通知までの期間
 ・ 追加資料の求め方
 ・ 問い合わせ対応
には違いがあります。

通常は1〜2週間程度で結果通知が出ることが多いものの、減価償却、特別損益、純資産、借入処理などに説明が必要な会社では、追加確認により時間がかかることがあります。
その結果、神奈川県への経審申請時期が後ろへずれる場合があります。入札参加資格申請の受付期間が迫っている場合には、名簿登録に使える時期にも影響します。
そのため、分析機関は「点数が変わるか」で選ぶのではなく、手数料、処理期間、提出方法、希望する結果通知時期に合わせて選ぶことになります。

更新時に確認しておきたい経審項目

更新準備では、単に許可維持を確認するだけではありません。

経審実務では、この時期に次の内容を確認することで、点数化できる項目が変わります。
 ・ 工事種別ごとの売上
 ・ 完成工事高の業種区分
 ・ 技術職員の最新状況
 ・ 自己資本比率
 ・ 労働福祉・防災活動・技術者育成に関する加点資料

この章で改めて個別の加点項目を列挙するよりも重要なのは、更新時にそれらをまとめて確認できる点です。

 ・ どの工事をどの業種へ計上するか
 ・ どの技術者をどの資格区分で算入するか
 ・ 加点資料の有効期間や対象範囲に問題がないか
によって、評点差が出ることがあります。

つまり、更新準備は「過去資料を確認するだけ」の作業ではありません。次回の経審評価へ使用できる実績や体制を見直す機会でもあります。

まず確認すべきこと

経審を見据えて更新時に確認すべきなのは、次の3点です。
 ・ 完成工事高を説明できる資料が揃っているか
 ・ 技術者・社会保険情報が一致しているか
 ・ 加点対象資料を最新化できているか

ここを確認せずに経審へ進むと、次のような項目が発生します。

 ・ 完成工事高へ反映できない
 ・ 技術職員点数へ算入できない
 ・ 加点項目を点数化できない

ここでいう加点項目とは、労働福祉、防災活動、技術者育成など、経審評価へ加算される対象です。

特に神奈川県では、
 ・ 決算変更届
 ・ 経営状況分析
 ・ 経審
 ・ 入札参加資格申請
という流れで資料整合性が確認されるため、「加点対象はあるが、評点資料として説明できない」状況が見えやすくなっています。

※更新時の費用や必要書類との関係については、以下の記事でも整理しています。
 建設業許可更新にかかる費用と必要書類(手数料・準備の実務)【神奈川県】

まとめ|経審は提出ではなく「評価に使える状態」

経審では、決算変更届を提出しているだけでは十分ではありません。

発注機関側は、提出された資料をもとに、
 ・ 完成工事高
 ・ 技術者配置
 ・ 財務内容
 ・ 法令遵守状況
 ・ 労働福祉や防災活動などの加点項目
を確認し、公共工事入札で比較できる形にします。

ここで差が出るのは、会社に実績や体制があるかどうかだけではありません。その実績や体制を、決算変更届・経審資料・証明資料で説明できるかです。
たとえば、工事売上があっても、工事経歴書・契約書・請求書・税務申告内容が一致しなければ、完成工事高として扱われにくくなることがあります。
資格を持つ技術者がいても、常勤性や所属営業所を資料で説明できなければ、技術職員点数へ算入できません。
加点項目も同様です。加入・取得・活動の事実があっても、評価基準日、有効期間、対象範囲、証明資料の内容が経審上の要件と合わなければ、点数へ反映できません。

つまり、経審で差が出るのは、公共工事入札で評価に使える状態まで決算変更届と関連資料が整っているかです。

これを確認しないまま進めると、実績や体制があるにもかかわらず、点数へ反映できない項目が残ることがあります。
そのため、許可維持の確認だけで終わらせず、次回の経審評価へ使用できる資料になっているかまで確認する必要があります。

更新時は、 「決算変更届」 「技術者情報」 「財務内容」 「加点項目」をまとめて確認できる数少ない時期です。
特に公共工事入札を継続する場合、更新時に確認した内容が、その後の経審評価へ直接影響します。

毎年提出しているのに点数が伸びないという場合は、「点数確認へ使える状態になっているか」を確認する必要があります。