補助金の採択通知が届くと、予定していた設備の購入や工事、サービスの導入を進めたいと考える事業者も多いでしょう。しかし、採択された時点で発注してよいのか、補助金はいつ振り込まれるのかなど、採択後の手続には注意すべき点があります。

補助金採択は、支援対象となる事業が選ばれた段階です。実際に補助金を受け取るには、交付決定を受け、認められた条件に従って事業を実施したうえで、実績報告による補助金額の確定を受け、必要に応じて請求手続を行います。

この記事では、一般的な精算払いの補助金を中心に、採択後の発注時期、事業内容の変更、支出を証明する資料、入金までに必要な資金に注意しながら、補助金を受け取るまでの手続を解説します。

採択から補助金の受領までは5段階で進む

補助金は、採択された時点で支払われるものではありません。一般的な精算払いでは、事業者が先に対象経費を支払い、事業完了後の審査で補助金額が確定してから支払いを受けます。

採択から受領までの基本的な流れは、次のとおりです。

段階手続事業者が行うこと
1採択後の確認・交付申請採択通知と交付規程等を確認し、必要な申請書類を提出する
2交付決定・事業着手交付決定の内容と着手可能時期を確認して事業を始める
3補助事業の実施認められた内容・期間・経費の条件に従い、支出の証拠を残す
4実績報告・補助金額の確定実施結果と経費を報告し、審査を受ける
5補助金の受領請求が必要な制度では所定の請求手続を行い、入金を確認する

ただし、交付申請の要否や事業に着手できる時期、概算払いの有無などは制度によって異なります。
そのため、採択通知とともに案内される交付規程や手引きを読み、自社に適用される手続を確かめることが、採択後の最初の作業となります。

採択通知を受け取ったら交付申請と着手時期を確認する

採択通知を受け取ったら、まず交付規程や手引きを読み、交付申請が必要か、どの書類をいつまでに提出するのかを調べます。

交付申請は、採択された事業について、補助金の交付を受けるために必要な審査を求める手続です。交付申請が必要な制度では、事業計画、経費の内訳、見積書など、指定された資料を提出します。

採択時の内容と交付申請の内容に違いがある場合には、事業内容や対象経費が調整されることもあるため、予定していた計画をそのまま実施できるかも確かめておく必要があります。

併せて注意したいのが、契約・発注・購入などを開始できる時期です。多くの補助金では、交付決定前に行った取引の経費は補助対象外となりますが、一定の条件で事前着手を認める制度もあります。

例えば、採択通知を受けた事業者が、交付決定前に設備を発注したとします。その制度で交付決定後の発注が条件とされていれば、設備自体が補助対象であっても、発注時期を理由に経費が認められない可能性があります。

このため、採択後すぐに取引を進めたい場合でも、交付決定前の着手が認められるかを制度の規定で調べ、発注予定日がその条件に合っていることを確かめてから契約・発注へ進みます。

交付決定後は認められた事業内容と実施期間に従う

交付申請に対する審査等を経て交付決定が行われると、その内容が事業者に通知されます。交付決定とは、補助金の交付対象となる事業や経費、交付決定額などを、一定の条件のもとで認める手続です。

交付決定の通知を受けたら、認められた事業内容、対象経費、交付決定額、事業実施期間、事業完了の条件を確かめます。採択時の計画と交付決定の内容に違いがある場合には、実際に進める事業や発注内容を、交付決定で認められた条件に合わせる必要があります。

例えば、設備導入の補助金では、定められた期間内に設備の発注、納品、設置、支払いなどを終えることが求められる場合があります。事業完了日までにどの行為を終えなければならないかは制度によって異なるため、取引先との納期や支払予定日も含めて日程を組みます。

なお、交付決定額がそのまま最終的な入金額になるとは限りません。 実際に支払われる補助金額は、その後の事業実施と実績報告の審査を経て決まります。

補助事業の実施中は支出の証拠を残し、変更時の手続を守る

交付決定後は、認められた事業内容や経費の条件に従って、設備の購入や工事、サービスの導入などを進めます。

この段階では、計画に沿って事業を実施するだけでなく、何を実施し、どの経費を支払ったのかを、後から資料で証明できるようにしておくことが重要です。

契約・納品・支払いを証明する資料を保管する

補助金では、支出した金額のすべてが補助されるわけではありません。実績報告では、対象経費の種類、補助率、上限額、支払方法などの条件を満たしているかが審査されます。

例えば、設備を購入した場合には、契約書や発注書、請求書、納品書、振込記録などを保管します。これらは、何を誰からいくらで購入し、実際に納品と支払いが行われたかを示す資料となります。

資料が不足していたり、指定された方法で支払ったことを証明できなかったりすると、その経費が補助対象として認められない場合があります。実績報告の際に必要となりうる資料は、取引段階から証拠として残しておきます。

設備・金額・事業内容を変更する場合は承認の要否を調べる

事業を進めるなかで、購入する設備の種類や金額、実施内容などを変更する必要が生じることもあります。その場合には、変更する前に交付規程を調べ、事前承認などの手続が必要かを確かめます。

事前承認が必要な変更を承認なしで行うと、変更後の経費が補助対象から外れる場合があります。例えば、予定していた設備を別の機種に変更する場合には、変更内容を確定させる前に承認の要否を調べる必要があります。

変更が必要になった時点で交付規程や変更手続の案内を確認し、事前承認が求められる場合には、その承認を受けてから変更後の内容で事業を進めます。

設備・経費・事業計画を変更する場合の判断については、補助金の交付決定後に事業内容を変更できる?|設備・経費・事業計画を変更する場合の手続で詳しく解説しています。

事業完了後は実績報告を行い、補助金額の確定を受ける

補助事業が完了したら、制度で定められた期限までに実績報告を行います。

実績報告は、交付決定を受けた事業が実際にどのように実施され、いくらの経費が支出されたかを報告する手続です。事業者は、実施した事業の内容、取得した設備や成果物、実際の支出額などを報告するとともに、契約書、請求書、支払記録、納品や実施を示す資料などを提出します。

事務局や交付主体は、これらの資料をもとに、交付決定の条件に従って事業が行われたか、支出した経費が補助対象として認められるかを審査します。審査の過程で追加資料の提出や報告内容の修正を求められることもあり、証拠が不足している経費や条件に合わない支出は、補助金額の算定から除かれる場合があります。

例えば、交付決定時に補助対象経費200万円、補助率2分の1として、100万円の補助金が見込まれていたとします。
しかし、実績報告の審査で40万円分の経費が認められなかった場合、補助対象経費そのものが160万円に減額され、その結果、実際の補助金額も80万円になります。

補助金額の確定とは、実績報告の審査結果に基づいて、実際に交付する補助金額を決めることです。 交付決定額と確定額には差が生じる可能性があるため、事業者は審査で認められた経費をもとに、実際の受領額を把握します。

実績報告で確認される内容や必要な証拠書類については、補助金の実績報告で確認されることは?|事業実績と支出の証明で詳しく解説しています。

補助金額の確定後は請求の要否を確認し、入金を確認する

補助金額の確定通知を受けたら、制度で請求手続が必要かを確認します。請求書の提出が必要な制度では、確定した補助金額や振込先口座などを記載して提出し、交付主体による確認を経て支払いを受けます。

一般的な精算払いでは、事業者が設備代金や工事費などを先に支払い、その後に補助金を受け取ります。補助金が入金されるまでの事業経費を事業者自身で用意する必要があるため、資金を確保できるかどうかが事業実施の判断に関わります。

一方、制度によっては概算払いが認められる場合があります。概算払いは、一定の条件のもとで、最終的な補助金額が確定する前に補助金の一部などを支払う仕組みです。

ただし、概算払いを受けた場合も、実績報告後に確定した金額との精算が必要となり、すでに支払われた金額が確定額を超えていれば、返還を求められることがあります。

このように、精算払いか概算払いかによって、事前に用意する資金や入金までの見通しが変わります。採択後の案内や交付規程で支払方法を調べ、必要な資金を確保できるかを判断したうえで事業を進めます。

補助金によっては、入金後も事業化状況や事業の効果について報告が求められます。受領後に必要となる報告については、補助金を受け取った後も報告は必要?|事業化状況報告・効果報告の内容と期限で解説しています。

まとめ|交付条件と資金計画を踏まえて事業を進める

採択通知を受け取ったら、まず交付申請の要否と提出期限、契約・発注を開始できる時期を調べます。そのうえで、交付決定の条件に沿って事業を進められるか、補助金の入金までに必要な資金を用意できるかを判断します。

すでに発注や納品、支払いの日程を予定している場合には、それぞれが交付決定や事業実施期間の条件に合っているかを照らし合わせる必要があります。事業内容の変更が見込まれる場合も、事前承認などの手続を踏まえて日程を考えます。

採択後は、交付規程や手引きで「交付申請の要否と提出期限」「着手できる時期」「事業実施期間」「実績報告期限」「補助金の支払方法」を押さえて、自社の発注・納品・支払予定と照らし合わせることが、補助金の受領まで適切に事業を進めるための基本となります。