宅建業は、免許を受けただけでは営業を開始できません。営業開始前に、営業保証金を供託し所定の届出を行うか、宅地建物取引業保証協会の社員となって弁済業務保証金分担金を納付する必要があり、どちらを利用するかによって、営業開始前に必要となる金額と手続が大きく変わります。
この記事では、営業保証金の役割や供託が必要となるケース、供託額、保証協会との違いについて解説します。
営業保証金は取引によって生じた債権の弁済に備える制度
営業保証金は、宅建業者と宅建業に関する取引をした者が、その者自身が宅建業者である場合を除き、その取引によって生じた債権について弁済を受けるための制度です。宅建業者が所定の金額を供託所へ供託することで、宅建業の取引によって生じた債権について、営業開始前から一定額の弁済原資を確保します。
営業保証金を供託するのは保証協会を利用しない場合
保証協会を利用せずに営業を開始する場合は、自ら営業保証金を供託し、その旨を免許行政庁へ届け出ます。
一方、保証協会の社員となる場合は、宅建業者が弁済業務保証金分担金を納付し、保証協会が弁済業務保証金を供託するため、保証協会の社員となった宅建業者には営業保証金の供託義務が適用されません。
営業保証金を供託しただけでは営業を開始できず、供託後に所定の届出を行ってから営業を開始します。
※保証協会の仕組みや加入手続については、以下の記事で詳しく解説しています。
「保証協会とは|営業保証金との違いと加入手続の流れ」
保証協会の社員でなくなった場合は営業保証金を供託する
保証協会を利用して営業していた宅建業者が社員の地位を失った場合は、営業保証金による保証措置へ切り替える必要があり、その後も宅建業を続ける場合は、社員の地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません。
事務所を新設した場合は追加の営業保証金を供託する
営業保証金を利用している宅建業者が事務所を新設した場合は、その事務所分の営業保証金を追加で供託します。追加供託を行った後でなければ、新設した事務所で宅建業を開始することはできません。
営業保証金はいくら供託するのか
営業保証金の額は事務所の数によって決まり、主たる事務所については1,000万円、その他の事務所については1か所につき500万円です。
したがって、主たる事務所だけで宅建業を営む場合は1,000万円、主たる事務所に加えて宅建業を営むその他の事務所を1か所設ける場合は、合計1,500万円を供託します。
営業保証金と保証協会では営業開始前の金額と手続が異なる
営業保証金と保証協会は、いずれも宅建業の営業開始に関わる保証措置ですが、宅建業者が用意する金額や供託を行う者、営業開始までの手続が異なります。
| 営業保証金 | 保証協会 | |
|---|---|---|
| 営業開始前の措置 | 宅建業者が営業保証金を供託 | 保証協会へ加入し、分担金を納付 |
| 主たる事務所 | 1,000万円 | 60万円 |
| その他の事務所 | 1か所につき500万円 | 1か所につき30万円 |
| 供託する者 | 宅建業者 | 保証協会 |
| その他の費用 | ― | 入会金・会費等 |
保証協会へ加入する場合は、分担金のほかに入会金や会費なども必要になるため、開業資金には加入先が定める費用全体を見込んでおきます。
営業保証金か保証協会かを開業準備の段階で決める
営業保証金を利用する場合と保証協会へ加入する場合では、営業開始前に必要となる資金と手続が異なります。
営業保証金を利用する場合は、免許後に所定額を供託し、免許行政庁への届出を終えてから営業を開始する一方、保証協会へ加入する場合は、加入手続や弁済業務保証金分担金の納付など、保証協会を通じた手続を行います。
営業保証金を利用するか保証協会へ加入するかは、免許申請の準備段階で決めておきます。
そのうえで、免許後に必要となる供託または保証協会の手続にかかる期間を見込み、実際に営業を開始できる時期に合わせて開業日を設定します。
※宅建業開業では、営業保証金や保証協会以外にもさまざまな費用が発生するため、開業時の費用全体については
以下の記事で整理しています。
「宅建業免許の費用はいくらかかる?|申請手数料・保証協会・行政書士報酬の整理」