宅建業免許の取得を検討していると、
・ 営業保証金とは何なのか
・ なぜ1,000万円もの供託が必要なのか
・ 保証協会とは何が違うのか
・ 必ず供託しなければならないのか
といった疑問を持つ方は少なくありません。
宅建業免許を取得するためには、事務所や専任宅建士などの要件を満たすだけではありません。
営業保証金を供託するか、保証協会へ加入するかのいずれかを選択し、取引相手を保護するための仕組みを整える必要があります。
営業保証金制度は、宅建業法が求める消費者保護を実現するために設けられた制度です。
この記事では、営業保証金制度の役割や供託が必要となるケース、保証協会との違いについて解説します。
※営業保証金制度は宅建業免許取得後の営業開始に関わる制度の一つです。
宅建業免許の全体像については、以下の記事で整理しています。
「宅建業免許とは|必要なケース・取得要件・更新までの全体像」
なぜ営業保証金制度が設けられているのか
宅建業では、土地や建物といった高額な財産を取り扱います。
そのため、
・ 手付金の返還トラブル
・ 契約上の損害
・ 宅建業者による不適切な取引
などによって、取引の相手方に損害が生じる可能性があります。
宅建業法は、不動産取引の公正性を確保し、一般消費者を保護することを重要な目的としています。
そこで、万が一損害が発生した場合でも、被害を受けた者が一定の範囲で弁済を受けられる仕組みを設けています。
営業保証金制度は、その弁済原資を確保するための制度です。
営業保証金とは
営業保証金とは、宅建業者が供託所へ供託する金銭等をいいます。
宅建業者との取引によって損害を受けた者は、一定の条件のもとで営業保証金から弁済を受けることができます。
営業保証金は、取引相手の救済を目的として確保される資金です。
行政は、取引相手が損害を受けた場合でも救済を受けられる状態が確保されているかを確認しています。
また、営業保証金は宅建業者の手元で管理する資金ではありません。
供託所へ供託することにより、宅建業者の経営状況とは切り離された状態で弁済原資が確保されます。
営業保証金制度は、この仕組みを通じて被害者救済を図っています。
どのような場合に供託が必要になるのか
宅建業者は、
・ 営業保証金を供託する
・ 保証協会へ加入する
のいずれかを選択します。
宅建業法は、営業保証金制度と保証協会制度という二つの仕組みを用意しています。
どちらを選択する場合であっても、取引相手が損害を受けた際に弁済を受けられる体制を整えなければ営業を開始することはできません。
保証協会へ加入しない場合は、営業保証金を供託したうえで営業を開始することになります。
営業保証金制度は、保証協会を利用しない場合に選択される被害者救済の仕組みとして位置付けられています。
営業保証金制度と並ぶもう一つの選択肢が保証協会制度です。
保証協会の仕組みや加入手続については、以下の記事で詳しく解説しています。
「保証協会とは|営業保証金との違いと加入手続の流れ」
営業保証金や保証協会は営業開始のために必要な制度ですが、それとは別に事務所や専任宅建士などの免許要件も満たさなければなりません。
「宅建業免許の取得要件とは|事務所・専任宅建士・欠格事由の実務ポイント」
なぜ1,000万円という高額な供託が求められるのか
営業保証金制度では、
・ 本店:1,000万円
・ 支店:1か所につき500万円
の供託が必要です。
この金額は、宅建業者の資力を示すために設けられているものではありません。
宅建業法が求めているのは、被害者救済のための弁済原資を確保することです。
宅建業では高額な取引を取り扱うため、損害が発生した場合の影響も小さくありません。
そのため、宅建業法は一定額以上の弁済原資をあらかじめ確保する仕組みを設けています。
宅建業の開業では、営業保証金や保証協会以外にもさまざまな費用が発生します。
開業時の費用全体については、以下の記事で整理しています。
「宅建業免許の費用はいくらかかる?|申請手数料・保証協会・行政書士報酬の整理」
営業保証金と保証協会の違い
営業保証金
営業保証金制度では、宅建業者ごとに供託を行います。
つまり、自社単独で弁済原資を確保する仕組みです。
保証協会
保証協会制度では、会員が分担金を拠出し、協会全体で弁済原資を確保します。
つまり、共同で弁済原資を確保する仕組みです。
本質的な違い
営業保証金制度と保証協会制度は、いずれも取引相手を保護するための制度です。
行政は、被害者救済のための弁済原資がどのように確保されているかを確認しています。
営業保証金制度は個別確保、保証協会制度は共同確保、という違いがあります。
なぜ多くの宅建業者が保証協会を利用するのか
実務上、多くの宅建業者は保証協会を選択しています。
その理由は、営業保証金制度では開業時に多額の資金を確保しなければならないためです。
宅建業法は、
・ 一般消費者の保護
・ 不動産業の健全な発達
の両方を目的としています。
保証協会制度は、消費者保護の仕組みを維持しながら、新規参入の負担を軽減するために設けられた制度です。
その結果、多くの宅建業者が保証協会制度を利用しています。
営業保証金を供託した後も継続管理が必要
営業保証金を供託した後も、宅建業免許を維持するための管理は継続して必要です。
宅建業免許では、
・ 専任宅建士
・ 事務所要件
・ 変更届
・ 更新手続
などを継続的に管理しなければなりません。
行政は、営業保証金の供託後も、現在の事業体制が宅建業免許の要件を維持しているかを確認しています。
例えば、
・ 専任宅建士が不在になっている
・ 必要な変更届が未提出になっている
・ 事務所要件を満たしていない
といった状態であれば、営業保証金を供託していても宅建業免許を維持する前提が整っているとはいえません。
そのため、営業保証金制度を利用している場合であっても、免許取得後の継続管理が必要になります。
営業保証金を供託していても、変更届や専任宅建士の管理などが不要になるわけではありません。
更新時に確認されるポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「宅建業免許更新は「今の状態」だけでは進まない|変更届・専任宅建士で確認されるポイント」
継続管理の中でも見落とされやすいのが変更届です。
役員や所在地などの変更があった場合の実務上の影響については、以下の記事で解説しています。
「宅建業免許の変更届を後回しにするとどうなるか」
まとめ
営業保証金制度は、宅建業者との取引によって損害を受けた者を救済するための制度です。
宅建業法は、不動産取引の公正性を確保し、一般消費者を保護することを目的としており、営業保証金制度もその仕組みの一つとして設けられています。
営業保証金制度では、宅建業者が個別に弁済原資を確保します。
一方、保証協会制度では、会員が共同で弁済原資を確保します。
両者の違いは資金の確保方法にありますが、取引相手を保護するという目的は共通しています。
営業保証金制度は、取引によって損害を受けた者を救済するための制度であると同時に、不動産取引への信頼を支える仕組みでもあります。
宅建業法は、このような被害者救済の仕組みを整えることで、一般消費者の保護と不動産業の健全な発達を図っています。
営業保証金制度を理解する際は、被害者救済のための弁済原資を確保し、不動産取引への信頼を支える制度として理解することが大切です。