相続人と相続財産を調べ、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」まで話合いがまとまった。
次に銀行や法務局で相続手続を進めようとすると、遺産分割協議書が必要になります。

ここで迷うのが、話合いで決まった内容をどのように書面へ落とし込めばよいのかという点です。

遺産分割協議書には、相続人全員で合意した内容を記載します。対象となる財産と取得者を具体的に記載し、その内容を相続登記や預貯金の払戻しなどの手続へ反映できるようにします。

この記事では、相続人、財産、取得者、後から見つかった財産、債務、署名押印まで、実際の財産承継につながる遺産分割協議書の作り方を順番に解説します。

遺産分割協議書を作成する前に確認すること

遺産分割協議書を作成するのは、相続人と相続財産を調べ、相続人全員で分割内容について合意した後です。

相続人の調査が終わっていない段階では、協議に参加すべき人を確定できません。後から別の相続人が判明すると、その人を含めて遺産分割を行う必要があります。
財産調査も協議書を作成する前に進めます。預貯金、不動産、株式など、分割する財産を把握してから、それぞれを誰が取得するのかを相続人全員で決めます。

ここまで進んだところで、話合いの結果を遺産分割協議書に記載します。

協議書の作成に入る前に、

 1. 相続人が確定している
 2. 分割対象となる財産を把握している
 3. 相続人全員で分割内容について合意している

という3点を確認してから、協議書の作成に進みます。

誰が合意した書面なのか分かるようにする

遺産分割協議書には、誰の相続について、誰が遺産分割に合意したのかが分かるように記載します。

まず、被相続人を特定します。氏名のほか、死亡年月日、最後の住所、本籍などを記載し、どの相続について作成された協議書なのかを明らかにします。

そのうえで、相続人全員が協議した結果として分割内容を記載し、一通の遺産分割協議書を作成する場合は、最後に相続人全員が署名押印します。
相続人が3人いるなら3人、5人いるなら5人全員の合意を協議書へ反映させます。一人でも協議から外れていれば、相続人全員による遺産分割として成立しません。

協議書を受け取る金融機関や法務局は、家族の話合いそのものには参加していません。
そのため、書面を見れば、誰の相続について作成されたもので、誰がその分割内容に合意したのかが分かるようにしておく必要があります。

「どの財産か」を特定できるところまで記載する

次に、遺産分割の対象となった財産を具体的に記載します。

「自宅」「○○銀行の預金」「父の株式」といった表現では、対象財産を特定できません。

家族の間では「自宅」がどの不動産を指しているのか分かっていても、相続登記では登記記録上の不動産との対応が求められます。
預貯金についても、どの支店のどの口座について合意したのかを判別できる記載が必要です。

協議書では、家族の間で財産が分かればよいのではなく、相続手続を行う金融機関や法務局などから見ても、対象となる財産を特定できるように記載します。
記憶を頼りに財産名を書くのではなく、財産調査で取得した資料と協議書の記載内容を一つずつ照合しながら作成します。

「誰が何を取得するのか」が対応するように記載する

財産を特定したら、その財産を取得する相続人を明確にします。

遺産分割では、それぞれの財産について取得者を決めます。協議書にも、その結果がそのまま読み取れるように記載します。

たとえば、不動産を妻が取得すると決めたのであれば、対象不動産を特定したうえで「相続人○○は、次の不動産を取得する」と記載します。
複数の預貯金を長男が取得する場合には、対象となる口座を列挙し、それらを長男が取得することが分かるようにします。

複数の財産と複数の相続人をまとめて記載すると、どの財産が誰に帰属するのか曖昧になることがあります。

一つひとつの財産について、誰が取得するのかが協議書から明確に分かるように記載することが大切です。
財産と取得者を明確に対応させておくことで、その後の名義変更や払戻しも進めやすくなります。

財産の種類に合わせて特定方法を変える

協議書で財産を特定するときは、財産の種類に応じた情報を記載します。

不動産

不動産は、登記事項証明書の記載をもとに協議書へ記載します。

土地であれば、所在、地番、地目、地積などがあります。建物であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などです。
「東京都○○区にある自宅」といった住所だけの記載では、登記記録上の不動産を特定できません。

登記事項証明書を見ながら記載し、協議書に書かれた不動産と相続登記の対象となる不動産を対応させます。

預貯金

預貯金は、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号などを記載して対象口座を特定します。

同じ金融機関に複数の口座があるケースもあります。「○○銀行の預金」と記載すると、どの口座について成立した合意なのか判別できません。

通帳や残高証明書などを見ながら、実際に承継する口座を特定して記載します。

株式などの金融資産

株式などの金融資産も、実際に保有している財産を識別できるように記載します。

証券会社の口座で管理されている場合には、証券会社名や支店名、口座などの情報を確認します。保有銘柄を個別に分ける場合には、その分割内容が分かる記載も必要です。

このように、財産の種類によって、記載のもとになる資料や特定に必要な情報は異なります。
どの財産について合意したのかを、実際の相続手続で使用する資料と照合できる程度まで具体的に記載します。

後から財産が見つかった場合の扱いも決めておける

財産調査を行ったうえで遺産分割協議をしても、協議書を作成した後に新たな財産が見つかることがあります。

その財産について取得者を決めていなければ、相続人全員で改めて協議することになります。

こうした場合に備えて、最初の遺産分割協議の段階で、後から判明した財産を誰が取得するのかまで決めておく方法があります。
その内容を遺産分割協議書に記載しておけば、後から財産が見つかった場合の扱いも、あらかじめ合意した内容に従って進めることができます。

たとえば、「本協議書に記載のない遺産は○○が取得する」といった内容を定める方法です。

このような条項を設ける場合には、後から判明する財産についても○○が取得することを、相続人全員が理解したうえで合意していることが前提になります。

一方で、後から見つかった財産については、その都度相続人全員で話し合うことにしておく方法もあります。

そのため、協議書を作成する際には、後から財産が判明した場合の取得者まであらかじめ決めておくのか、それとも判明した時点で改めて協議するのかを、相続人間で決めておきます。

債務の記載は相続人間の負担と債権者との関係を分けて考える

被相続人に借入金などの債務がある場合、相続人の間で誰が負担するのかを決め、その内容を遺産分割協議書へ記載することがあります。

ここでは、協議書によって生じる効果の範囲に注意が必要です。

たとえば、相続人の間で「被相続人の○○銀行に対する借入金は長男が負担する」と合意したとします。
この合意によって、相続人間で誰がその債務を負担するのかという関係を定めることはできます。

ただし、相続人間の合意だけで、銀行などの債権者に対する債務の承継関係まで自由に変更することはできません。
長男が債務を引き受け、ほかの相続人を債務から外すには、債権者の承諾など別の対応が関係します。

協議書に債務を記載する場合は、相続人間で決めた負担方法が、そのまま債権者との関係を変更するものではないことに注意が必要です。

相続人全員が署名し、実印を押す

遺産分割協議書の内容が確定したら、相続人全員が署名し、実印を押します。

相続登記や金融機関での相続手続では、遺産分割協議書とあわせて各相続人の印鑑証明書を提出するのが一般的です。
協議書に押された印影と印鑑証明書を照合することで、各相続人がその内容に合意したことを手続先で確認できるようにします。

一通の遺産分割協議書を作成する場合には、その書面に相続人全員が署名押印します。
相続人が離れた場所に住んでいる場合は、協議書を順番に郵送して署名押印することもできます。

一方、一通の協議書に全員が署名押印する代わりに、相続人ごとに遺産分割協議証明書を作成する方法もあります。
この方法では、各相続人が同じ遺産分割の内容について合意したことを、それぞれの書面で証明します。

いずれの方法をとる場合も、相続人全員が同じ遺産分割の内容に合意したことを書面上で示せるようにします。

作成した協議書を実際の相続手続で使う

完成した遺産分割協議書は、協議で決めた内容を実際の財産承継へ反映するために使用します。

不動産を取得した相続人は、その協議書を用いて相続登記を進めます。
預貯金を取得した相続人は、金融機関の相続手続で協議書を提出します。
株式などについても、証券会社等で必要な承継手続を行います。

金融機関ごとに求められる書類や手続方法は異なるため、協議書以外の提出書類は各手続先で確認します。

このように、遺産分割協議書は、相続人間で成立した合意を相続登記や預貯金の払戻しなどの手続に使用されます。

まとめ|合意した内容を実際の財産承継につなげる

遺産分割協議書では、相続人全員で決めた内容を、第三者が読んでも分かる形で書面にすることが重要です。

誰の相続について作成された協議書なのか、どの財産を誰が取得するのか、後から判明した財産や債務をどのように扱うのか。
こうした内容が具体的に記載されていれば、その後の相続登記や預貯金の払戻しなどへ合意内容を反映しやすくなります。

特に、不動産は登記事項証明書、預貯金は通帳や残高証明書など、実際の手続で使用する資料をもとに記載することで、協議書に書かれた財産と承継する財産を対応させることができます。

財産の種類が多い場合、後から判明した財産の扱いを決める場合、債務が含まれる場合などは、協議内容をどのように書面へ表すか判断が難しくなることがあります。
こうしたケースでは、相続登記や金融機関での手続まで見据えて協議書の内容を検討する方法があります。

遺産分割協議書を作成する目的は、話合いの結果を残すことに加え、その合意に従って実際の財産承継を進められるようにすることにあります。
相続人全員で決めた内容を正確に反映し、その内容を各相続手続へつなげられる形にしておくことが大切です。