「毎年出しているのに、なぜ点数差が出るのか」

経営事項審査(経審)では、売上規模が近く、技術者数も大きく変わらず、毎年決算変更届を提出しているにもかかわらず、評点差が出ることがあります。

特に神奈川県では、経審結果や等級が入札参加資格へ直結するため、「なぜ点数が伸びないのか」が実務上の整理ポイントになります。

ここで重要なのは、経審は単なる「点数制度」ではなく、公共工事を継続的に施工できる会社かを比較する制度だという点です。

実務上比較されるのは、
 ・ どの工事実績を希望業種へ配分できるか
 ・ 技術者をどの業種へ配置できるか
 ・ 財務内容をどのように整理しているか
 ・ 加点資料を有効な状態で維持できているか

です。

つまり、経審で差が出るのは「会社規模」だけではありません。工事実績・技術者・財務・加点資料をどこまで評点算定へ使える状態で整理できているかによって差が出ます。

この記事では、なぜ同規模会社でも評点差が出るのか、どこで比較差が生まれるのかを、決算変更届・技術者・完成工事高を軸に整理します。

経審は「比較評価制度」

経審では、国や地方公共団体など公共工事を発注する側(発注機関)が完成工事高(X1)、技術力(Z)、財務状況(Y)、社会性等(W)を確認し、公共工事入札で使用する総合評定値(P点)を算出します。

そのため、実務上比較されるのは、
 ・ 希望業種へどこまで完成工事高を配分できるか
 ・ 技術者をどこまで技術力(Z)へ算入できるか
 ・ 財務内容をどう評価されるか
 ・ 加点項目を有効な資料として説明できるか

です。

たとえば同じ年間売上でも、希望業種へ工事実績を集中できている会社と、工事分類整理が曖昧な会社では、完成工事高(X1)に差が発生します。
技術者についても単純な人数比較ではありません。1級資格者比率、技士補活用、CPD(継続学習)などを含め、どの業種へ反映できるかが確認されます。

つまり経審は、「売上があるか」「資格者がいるか」を見る制度ではありません。公共工事入札で比較した際に、どこまで評点算定へ使える状態で整理できているかを見る制度です。

決算変更届は完成工事高(X1)と財務状況(Y)の土台

神奈川県で経審を受ける場合、まず決算変更届の内容が確認されます。
県側では、財務諸表、工事経歴書、完成工事高、消費税処理などを確認しながら、経審へ使用する内容として整理できているかが確認対象になります。
ここで重要なのは、「売上総額」ではありません。

実務上整理されるのは、
 ・ どの工事を
 ・ どの業種へ
 ・ 建設業法上どう扱うか

です。

たとえば、電気工事・管工事・機械器具設置が混在する工事では、どの業種へ完成工事高を配分するかによって、希望業種の点数が変わります。
そのため、契約書、注文書、請求書、工事内容資料を確認した際に、希望業種との関係を説明できなければ、十分な完成工事高として扱われにくくなることがあります。

また、財務状況(Y)でも差が出ます。

同じ売上規模でも、
 ・ 利益をどう残しているか
 ・ 自己資本をどう積み上げているか
 ・ 借入比率がどうなっているか

によって、財務評価は変わります。特に、減価償却、特別損益、短期借入金、純資産の整理方法によって、経営状況分析での評価へ影響することがあります。

つまり、決算変更届で整理されているのは、「売上があるか」ではありません。公共工事入札で比較可能な完成工事高と財務内容として整理されているかです。

※決算変更届の整理不足が経審へどう影響するかは、以下の記事もあわせて確認してください。
 「決算変更届を出しているのに評価されない理由【神奈川県】」

元請比率・業種配分で完成工事高に差が出る

完成工事高(X1)では、「どの業種で売上を持っているか」だけでなく、「どう受注しているか」も確認されます。

特に影響するのが、
 ・ 元請比率
 ・ 希望業種への工事集中

です。

発注機関側は、自社の施工管理能力、工程管理能力、技術者配置能力を見ています。
そのため、売上総額や会社規模が近くても、元請工事割合が高く、希望業種へ工事実績を整理できている会社の方が、完成工事高(X1)で有利になることがあります。

また、同じ工事でも、どの業種へ計上するかによって希望業種の評点は変わります。

つまり、比較されているのは会社全体の売上ではありません。公共工事で使用する工事実績として、どこまで整理できているかです。

技術力(Z)は「人数」ではなく「業種配置と常勤性」で差が出る

経審では、単純に資格者人数を比較しているわけではありません。

発注機関側は、
 ・ どの資格者を
 ・ どの業種へ
 ・ どの区分で算入するか

を確認し、技術力(Z)へ反映します。

そのため、同じ規模の会社でも、
 ・ 1級資格者比率
 ・ 希望業種への配置
 ・ 技士補活用
 ・ CPD(技術者の継続学習)

によって評点差が発生します。

ただし、資格を持っているだけでは足りません。

実務上は、
 ・ 常勤性を説明できるか
 ・ 所属営業所との整合性があるか
 ・ 他社兼務状態になっていないか

まで確認されます。

特に神奈川県では、営業所技術者と経審技術職員の重複確認も重視されます。そのため、社会保険情報や営業所情報と整合しない場合、技術力(Z)へ十分算入できないことがあります。

つまり、経審で比較されているのは「資格保有」だけではありません。公共工事へ対応できる技術管理体制として、どこまで整理できているかです。

※営業所技術者と常勤性の実務は、以下の記事も参考になります。
 「営業所技術者とは|要件・判断基準・実務上の落とし穴を解説」

技術者育成でも評点差が広がる

近年は、資格者数だけでなく、技術者育成を継続しているかも差になりやすくなっています。

特に確認されやすいのが、
 ・ CPD(技術者の継続学習)
 ・ 技士補活用
 ・ 若手技術者育成

です。

発注機関側は、単に資格者人数を見るのではなく、継続的に施工体制を維持できる会社かを見ています。
そのため、CPD履歴や技士補登録を継続管理している会社の方が、技術力(Z)で差が出やすくなります。

財務状況(Y)は「黒字か赤字か」だけでは決まらない

経営状況分析では、自己資本比率、利益額、借入状況、キャッシュフローなどを分析し、財務状況(Y)を算出します。
ここで差が出るのは、「黒字か赤字か」だけではありません。

分析機関は、営業利益、減価償却費、純資産、短期借入金などを確認し、継続的な施工能力があるかを見ています。

そのため、
 ・ 利益を極端に圧縮している
 ・ 借入依存が高い
 ・ 純資産が不安定

といった場合には、売上規模が近くても財務評価に差が出ることがあります。

つまり、経審で確認されているのは「節税できているか」ではありません。公共工事を継続施工できる財務体力があるかです。

労働福祉・法令遵守・防災活動も比較対象

経審では、完成工事高(X1)・技術力(Z)・財務状況(Y)だけでなく、社会性等(W)も比較対象になります。

代表的な項目は、
 ・ 建退共(建設業退職金共済制度)
 ・ 法定外労災(上乗せ労災保険)
 ・ 防災協定(自治体等との災害協定)
 ・ ISO(品質・環境等の国際認証)
 ・ 建設業経理士
 ・ 建設機械
 ・ CPD(技術者の継続学習)

などです。

ここで重要なのは、「制度へ加入しているか」だけではありません。

実務上は、
 ・ 有効期間が切れていないか
 ・ 対象範囲が適切か
 ・ 加点資料として説明できる状態か

が確認されます。

たとえば、防災協定では協定締結先や有効期間、建設機械では対象機械該当性や稼働確認などが整理ポイントになります。

つまり、社会性等(W)で差が出るのは、「制度を利用しているか」ではありません。加点根拠として継続管理できているかです。

JCIPで資料間の不一致が見えやすくなっている

神奈川県では、JCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)の利用が増えています。

JCIPでは、
 ・ 決算変更届
 ・ 技術者資料
 ・ 財務資料
 ・ 社会保険情報

を電子データとして横断確認できます。

そのため、
 ・ 工事経歴書と完成工事高
 ・ 技術者所属情報と社会保険情報
 ・ CPD履歴と技術者登録

などの不一致が見えやすくなっています。

特に神奈川県では、決算変更届から経営状況分析、経審、入札参加資格申請まで資料確認が続くため、どこかで整合性が崩れると、点数算定へ使えない項目が発生します。

つまり、電子申請で見られているのは「データがあるか」ではありません。複数資料を照合した際に、同じ内容として整理されているかです。

評点差が出る会社は「整理の仕方」が違う

経審で評点差が出る会社は、申請直前だけでなく、日常的に工事実績・技術者・加点資料を整理しています。

実際には、
 ・ どの工事をどの業種へ配分するか
 ・ どの資格者をどの業種へ配置するか
 ・ CPDや技士補をどう継続管理するか
 ・ 利益と自己資本をどう維持するか
 ・ 加点資料をどう更新管理するか

を、経審を前提に整理しています。

逆に、
 ・ 技術者資格更新が未整理
 ・ CPD履歴が分散管理
 ・ 建設機械名義変更が未対応
 ・ 防災協定更新が漏れている

という状態では、加点対象があっても点数へ算入できないことがあります。

つまり、経審対応は単なる申請作業ではありません。公共工事でどう比較されるかを前提に、年間を通じて整理する実務です。

まず確認したいポイント

経審点数を見直す場合、まず確認したいのは次の点です。
 ・ 希望業種へ完成工事高を十分配分できているか
 ・ 技術者を技術力(Z)へ算入できる状態か
 ・ CPD・技士補・CCUSを継続管理できているか
 ・ 建設機械や防災協定を有効な加点資料として説明できるか
 ・ 社会保険情報と技術者配置が整合しているか

特に神奈川県では、決算変更届から経営状況分析、経審、入札参加資格申請まで資料確認が続くため、「どこで点数差が発生しているか」を把握したうえで整理する必要があります。

「点数不足」ではなく「整理不足」で差が出ている場合がある

経審では、単純な会社規模だけで評点が決まるわけではありません。

同じ売上規模、同じ資格者数でも、
 ・ 希望業種へ完成工事高を整理できているか
 ・ 技術者を常勤性まで含めて説明できるか
 ・ CPD・技士補・建設機械・防災協定などを有効な資料として維持できているか
 ・ 財務内容を安定評価につながる形で整理できているか

によって評点差が発生します。

つまり、経審で差が出るのは「加点対象の有無」だけではありません。工事実績、技術力、財務内容、社会性等(W)を、公共工事入札で使用できる状態まで整理できているかによって差が出ます。

「毎年提出しているのに点数が伸びない」という場合は、すでに持っている資料や体制が経審で使用できる状態になっているかを確認することが重要です。