現在の建設業許可に加えて、新しい業種の工事も自社で請け負いたい場合、まず気になるのは、今いる技術者で許可を追加できるのか、新たに資格者を採用する必要があるのかという点ではないでしょうか。

例えば、内装仕上工事業の許可を持つ会社が、とび・土工工事業にも事業を広げる場合です。現在の営業所技術者が追加業種に対応する資格を持っていれば、同じ営業所で複数の業種を担当できるため、新たな採用をせずに申請できる可能性があります。

ただし、技術者が追加業種の要件を満たしていても、その人を異動させることで、現在の許可に必要な配置体制を維持できなくなる場合があります。

建設業許可の業種追加では、新たな業種に対応する資格・実務経験を持つ営業所技術者等を、営業所ごとに配置できるかが重要です。 既存の技術者を兼務させる場合は、追加業種の要件とともに、現在の許可に必要な配置体制も維持できるかを判断します。

この記事では、追加する業種と申請区分の決め方から、技術者の資格・実務経験、営業所への配置、申請時に必要な証明資料などについて解説します。

追加業種と一般・特定の申請区分を決める

建設業許可は、土木一式工事、建築一式工事、27種類の専門工事を合わせた29業種に分かれています。
現在の許可とは別業種で、許可を要する規模の工事を請け負う場合、その業種も許可を取得しなければなりません。

このとき、追加する業種だけでなく、一般建設業と特定建設業のどちらの区分で申請するかも決めます。一般建設業と特定建設業では、元請として締結する下請契約の金額などによって必要な区分が異なり、営業所に配置する技術者の要件も変わるため、予定する工事の請負形態と下請契約の内容を踏まえて判断します。

また、申請手続が「業種追加」と「般・特新規」のどちらかは、現在保有している許可との組合せによって決まります。

現在の許可と追加する許可申請区分
一般建設業のみを保有し、別業種の一般建設業を追加業種追加
特定建設業のみを保有し、別業種の特定建設業を追加業種追加
一般建設業のみを保有し、初めて特定建設業を取得般・特新規
特定建設業のみを保有し、初めて一般建設業を取得般・特新規
一般・特定の両方を保有し、それぞれの区分で別業種を追加業種追加

「般・特新規」とは、すでに建設業許可を持つ事業者が、保有していない一般・特定の区分について新たに許可を取得する申請です。既存業種の許可区分を変更する場合には廃業手続が関係するケースもあるため、現在の許可内容との関係を調べます。

追加する業種と許可区分を特定したうえで、その業種に対応する技術者の資格・実務経験を調べることが、申請準備の出発点となります。

関連記事:一般建設業と特定建設業の違いは?|下請金額から必要な許可を判断する方法

追加業種に必要な技術者の資格・実務経験

建設業許可では、許可を受ける業種について専門的な知識や経験を持つ技術者を、営業所ごとに配置することが求められます。

一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」と呼び、両者を合わせて「営業所技術者等」といいます。

営業所技術者等として認められる資格や実務経験は業種によって異なるため、現在の従業員が追加業種の要件を満たすかを調べ、その結果を基に配置体制を検討します。

一般建設業で認められる資格・実務経験

一般建設業では、追加業種について、主に次のいずれかの要件を満たす人を営業所技術者として配置します。

要件主な内容
国家資格等追加業種に対応する施工管理技士、建築士、技能検定などの所定の資格
指定学科の卒業と実務経験大学・高等専門学校の指定学科を卒業後3年以上、高校の指定学科を卒業後5年以上など
実務経験追加業種に関する10年以上の実務経験

指定学科とは、建設業の種類ごとに関連するものとして法令で定められた学科です。専門学校の卒業者についても、修了した課程や専門士・高度専門士の称号などに応じて、必要な実務経験年数が定められています。

また、一定の施工管理技術検定に合格した人については、1級の第一次検定等の合格後3年以上、2級の第一次検定等の合格後5年以上の実務経験によって要件を満たす制度もあります。

ただし、これらは対象となる検定種目や業種の制限があり、指定建設業7業種と電気通信工事業は対象外です。

資格を持つ従業員がいる場合は、資格名だけで判断せず、級や種別も含めて追加業種に対応しているかを調べます。同じ施工管理技士でも、資格の種類によって営業所技術者となれる業種が異なるためです。

資格による要件を満たす人がいなければ、学歴と実務経験から判断します。

例えば、建設会社に10年間勤務していても、とび・土工工事業の技術上の職務に従事した期間が不足していれば、
その業種の10年要件を満たすことはできません。

実務経験を利用する場合は、勤務年数だけでなく、どの業種の工事に、どの期間、どのような立場で携わったかが判断の基準となります。

特定建設業で認められる資格・実務経験

特定建設業を追加する場合は、追加業種に対応する所定の国家資格等を持つ人や、一般建設業の技術者要件に加え指導監督的実務経験を持つ人などを配置します。

指導監督的実務経験とは、元請として受注した工事について、施工の技術面を総合的に指導・監督した経験を指し、原則として、請負代金4,500万円以上の元請工事における2年以上の経験が求められます。

ただし、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種は
「指定建設業」に該当し、これらの業種では所定の1級国家資格等または国土交通大臣認定が必要です。

指定建設業では、指導監督的実務経験だけで特定営業所技術者の要件を満たすことはできません。 そのため、特定建設業の追加を予定している場合は、追加業種が指定建設業に該当するかを先に調べ、その区分に対応する資格・経験を持つ人を選定します。

既存技術者を兼務させ、営業所ごとに配置できるか

追加業種に対応する資格や実務経験を持つ従業員がいても、現在担当している業種や勤務先の営業所によって、配置方法は変わります。

特に、既存業種の営業所技術者等を追加業種でも兼務させる場合は、複数業種の要件を満たすかに加え、各営業所で必要な常勤・専任の配置を維持できるかを調べます。

同じ営業所で複数業種を兼務する場合

一人の技術者が複数業種の要件を満たしていれば、同じ営業所でそれらの業種を兼務できます。

例えば、本店で内装仕上工事業の営業所技術者となっている人が、とび・土工工事業に対応する資格も持っている場合、その人が本店で両方の業種を担当することが検討できます。

資格を複数持っている場合や、一つの資格が複数業種に対応している場合は、それぞれの業種について資格要件を満たすかが判断の基準となります。

一方、実務経験によって複数業種の要件を満たそうとする場合は、資格による兼務とは異なり、業種ごとの経験期間の算定方法にも注意が必要です。

複数業種の実務経験を算定する場合

実務経験によって複数業種の営業所技術者となる場合、異なる業種について同じ期間を重複して算入することは、
原則として認められません。

例えば、内装仕上工事業と、とび・土工工事業の両方について、それぞれ10年の実務経験で要件を満たそうとする場合です。原則として各業種に重複しない経験期間が必要となるため、両方の要件を満たすには合計20年の経験が必要になります。

ただし、一定の業種の組合せでは、他業種の実務経験を利用して必要年数を短縮できる特例があります。

また、平成28年5月31日以前に、とび・土工工事業の許可で請け負った解体工事については、所定の条件で両業種の経験として重複算定が認められます。

このように、資格によって複数業種を兼務する場合と、実務経験によって兼務する場合、要件の調べ方が異なります。実務経験を利用するのであれば、業種ごとの経験期間を明らかにし、重複算定の制限や短縮特例を適用した後の年数で判断します。

営業所ごとの常勤・専任を確認する

営業所技術者等は、原則として所属する営業所に常勤し、専らその技術的な職務に従事しなければなりません。

例えば、本店の技術者が内装仕上工事業と、とび・土工工事業を兼務できても、支店でとび・土工工事業の請負契約を締結するのであれば、支店にも同業種の要件を満たす営業所技術者等を配置しなければなりません。

本店の技術者を支店へ異動させる場合も、本店では既存業種を担当できる営業所技術者等を引き続き確保する必要があります。追加業種のために技術者を異動させた結果、既存許可の配置要件を満たせなくなることがないよう、各営業所の担当者を決めます。

また、他社で常勤している人や、通勤状況などから所属営業所への継続勤務が認められない人は、原則として常勤・専任の要件を満たしません。

なお、営業所技術者等と、工事現場の主任技術者・監理技術者との兼務には、別途、法令上の特例があります。
主任技術者・監理技術者は工事現場の施工管理を担当する技術者であり、営業所で複数業種を兼務する場合とは配置の判断基準が異なります。

業種追加では、追加業種を扱う営業所ごとに担当者を配置するとともに、既存業種の営業所技術者等も引き続き確保できる体制が必要です。

関連記事:建設業許可における「技術者」とは?|営業所技術者等と配置技術者の違いを整理

業種追加の申請で必要になる証明資料と既存許可の要件

追加業種を担当する技術者が決まったら、その人の資格・実務経験と、配置先営業所への常勤・専任を証明する資料を準備します。

許可行政庁は、提出資料を基に追加業種の要件を満たしているかを審査するため、資格や経験があっても、それを申請上認められる方法で証明できるかが重要になります。

資格・実務経験と常勤性を証明する資料

資格によって申請する場合は、資格者証や合格証明書などを用意し、資格の種類・級・種別が追加業種に対応していることを、申請先の資格一覧と照合します。

実務経験を利用する場合は、実務経験証明書に加え、工事請負契約書、注文書・請書、既存の許可資料などによって、従事した工事の内容と期間を示します。さらに、在籍期間を確認できる資料と対応させ、申告する経験年数を裏付けます。

例えば、とび・土工工事業について10年の実務経験を申告するのであれば、対象工事の内容と施工期間を資料で示すとともに、その期間に従業員として在籍していたことも証明できなければなりません。

工事内容や在籍状況を証明できない場合は、申請上、必要な経験年数を満たしていると認められず、追加資料の提出や申請内容の見直しが必要になります。

また、営業所への常勤性についても、雇用関係や勤務状況を示す資料などで証明します。求められる資料の種類や経験期間の取扱いは許可行政庁によって異なるため、申請先の手引きに従って準備します。

共通の許可要件と変更届の提出状況

業種追加では、技術者の要件だけでなく、経営業務の管理体制、財産的基礎、社会保険への加入状況など、共通の許可要件も引き続き満たしていることが前提となります。

例えば、既存許可の取得後に常勤役員等が退任している場合、現在の経営管理体制が要件を満たすかを調べます。

また、役員や営業所技術者等の変更届、毎事業年度終了後の決算変更届などに未提出のものがあれば、必要な届出を整えたうえで申請することになります。

追加業種の技術者を既存業種から異動させる場合も、既存許可に必要な配置を維持しなければなりません。

追加業種の要件を満たすだけでなく、現在の許可要件と届出状況にも問題がないかを確かめておく必要があります。 技術者の配置変更が既存許可に与える影響も含めて、申請時の体制を整えます。

現在の技術者で業種追加できるかを判断する

業種追加を検討する際は、まず現在の建設業許可通知書と営業所技術者等の届出内容をもとに、追加したい業種、
一般・特定の許可区分、追加業種を扱う営業所を明らかにします。

そのうえで、現在の技術者の資格や実務経験を追加業種の要件と照合します。同じ営業所で複数業種を担当できる資格者がいれば、既存技術者による兼務が選択肢となりますが、実務経験で要件を満たす場合は、業種ごとの経験期間と証明資料も調べなければなりません。

技術者の異動が必要であれば、異動先で追加業種を担当できることに加え、異動元の既存業種に後任を配置できるかを判断します。支店でも追加業種を扱うのであれば、支店に常勤・専任する技術者の確保も必要です。

現在の人員で要件を満たせない場合、資格者の採用や配置体制の見直しを検討します。一方、資格・経験を満たす人がいても証明資料が不足している場合は、申請が認められる資料を収集できるかによって申請時期が変わります。

現在の技術者で業種追加ができるかは、資格・実務経験に加え、営業所ごとの配置と申請資料による証明まで含めて判断します。 その結果を踏まえて、既存技術者の兼務で対応するのか、異動や採用が必要なのか、先に証明資料を収集するのかを決めます。