補助金の事業計画書を作成するには、申請様式の項目を埋める前に、今回の事業で何を実施するのかを具体的にしておく必要があります。導入する設備や予定している経費が決まっていても、その投資が現在の事業とどのようにつながり、何を実現するためのものなのかが明確でなければ、事業計画として説明することはできません。

事業計画書では、現在の事業内容や課題を起点として、今回実施する事業、その成果、必要な工程、投資・経費、実施体制、スケジュールを一つの計画として組み立てます。
ただし、求められる記載事項や審査項目は補助金ごとに異なるため、まず公募要領や申請様式から事業計画に必要な条件を読み取り、その条件に沿って自社の計画を具体化したうえで、申請様式へ反映するという順で準備します。

この記事では、事業計画書を書き始める前に、自社の事業内容から何を具体化し、投資計画や実施体制までどのようにつなげればよいのかを解説します。

公募要領から事業計画に必要な条件と記載項目を読み取る

申請する補助金が決まったら、公募要領、申請様式、審査基準等から、自社の事業計画に関係する条件や記載項目を拾い出します。

公募要領には、対象となる事業者や事業、補助対象経費、事業期間などが定められており、申請様式には事業計画として記載すべき項目が示されています。審査基準からは、提出する計画のどのような内容が評価の対象となるのかを読み取ります。

例えば、設備投資を予定しているのであれば、その設備が対象経費に含まれ得るのか、どの期間に事業を実施する必要があるのか、事業計画書では投資の必要性や事業効果について何を求められているのかを確認します。

対象となる事業、対象経費、事業期間、事業計画書の記載項目、審査項目を公募要領等から取り出しておくことで、その条件に沿って自社の事業計画を具体化できます。

自社や予定している事業が申請要件を満たしているかの確認については、補助金の対象になるかはどう判断する?|申請前に公募要領で確認する要件で詳しく解説しています。

現在の事業から補助事業に取り組む理由を具体化する

事業計画を作る際は、現在の事業で生じている課題や需要から、今回の補助事業に取り組む理由を具体化します。設備の導入やシステムの開発といった投資についても、その投資が必要になった事業上の事情までさかのぼって考えます。

例えば、新しい製造設備を導入する計画であれば、生産能力の不足によって受注機会を逃している、特定の工程に時間を要して生産量を増やせない、手作業への依存によって品質が安定しないなど、現在の事業活動に生じている制約を特定します。

新商品や新サービスの展開を計画している場合には、顧客からどのような需要が生じているのか、現在の商品やサービスで対応できる範囲はどこまでか、自社の技術やノウハウをどの市場で活用するのかを具体化することで、今回の事業に取り組む理由が明確になります。

事業上の課題や需要を説明する際には、その根拠となる事実や数値も用意します。生産能力の不足であれば現在の生産量や受注状況、工程上の問題であれば作業時間、外注への依存であれば委託している業務や費用など、今回の事業と直接関係する情報を用いることで、投資が必要となった事情や恐恐などを具体的に示せます。

現在の事業内容、今回の事業につながる課題や需要、その根拠となる事実や数値を一続きで説明できれば、補助事業に取り組む理由が具体化します。

課題に対して行う事業と実現する成果を一つにつなげる

補助事業に取り組む理由が明確になったら、その課題に対して実施する取り組みと、事業終了時に実現する状態を具体化します。ここで整理する内容が、申請する事業そのものです。

例えば、特定の製造工程に時間を要していることが生産量を増やせない原因であれば、その工程へ新しい設備を導入し、作業時間を短縮することで生産能力を高めるという計画が考えられます。この場合、設備の導入、改善する工程、導入後に生じる変化までが一連の事業内容になります。

成果を数値で示せる事業では、製造時間、生産量、受注件数など、今回の事業によって実際に変化する指標について、現在値と事業実施後の目標値を設定します。これにより、事業実施によって何を達成しようとしているのかを具体的に説明できます。

ここまで整理すると、「現在の課題 → 今回実施する事業 → 事業によって生じる成果」という事業計画の骨格ができます。以降は、この事業を実施するために必要な工程を整理し、各工程に必要な投資・経費を積み上げます。

事業の成果として売上高や利益の予測を求められる場合には、その数値を算定する根拠も整理します。具体的な計算方法については、補助金申請の売上・利益計画はどう作る?|計算方法と根拠の示し方で解説しています。

事業を実施するために必要な工程を整理する

事業の骨格が固まった後は、事業開始から完了までに必要な作業を洗い出し、実施する順序に沿って並べます。

例えば、新しい加工設備を導入して新製品の生産を始める計画であれば、設備の選定・発注・納入・設置に加え、試運転、従業員への操作教育、新製品の試作、生産工程の確立など、事業の完了までに必要な工程を整理します。

外部事業者へ依頼する業務が含まれる場合には、自社が担う工程と外部へ委託する工程も分けます。それぞれについて、事業のどの部分を実現するために必要なのかまで明確にすることで、事業計画書に記載する実施内容も具体的になります。

工程が多い場合には、工程名、実施内容、その工程の目的・役割を一覧にすると、事業全体の流れと各工程の位置づけを把握しやすくなります。

各工程から必要な投資と経費を積み上げる

投資計画は、各工程を実施するために必要な設備、システム、外注等を工程ごとに積み上げて作ります。

設備であれば使用する工程と用途、外注であれば委託する作業と成果物、システムであれば使用する業務と導入後に行う処理を明確にし、それぞれの予定金額を投資計画へ加えます。

複数の支出がある場合には、支出内容、予定金額、使用する工程、用途を一覧にすると、投資全体を把握しやすくなります。そのうえで、公募要領に定められた補助対象経費の区分や条件と照らし、申請する経費として扱えるものを選びます。

工程と支出を対応させることで、「どの取り組みを実施するために、何が必要で、そのためにいくら支出するのか」を一つの流れとして説明できます。

実施体制とスケジュールを整理し、計画を実行できる形にする

事業内容と投資計画が固まったら、各工程の担当者と実施時期を決めます。

社内で行う工程については担当者や担当部署を割り当て、外部へ委託する工程については依頼する業務の範囲を明確にします。専門的な技術や資格が必要な業務についても、担当する人員を明らかにしておきます。

スケジュールは、これまでに組み立てた工程を事業期間の中へ配置して作ります。設備投資であれば、発注、納入、設置、試運転、操作教育、試作、本格稼働までに必要な期間を見込み、前後する工程との関係を踏まえて開始時期と完了時期を設定します。

外部事業者へ依頼する業務についても、発注から納品までに必要な期間を織り込み、事業全体が所定の期間内に完了するように組みます。設備代金や外注費などの支払時期も併せて整理し、補助金が支払われるまでに必要となる資金をあらかじめ確認します。

工程ごとに担当者、実施時期、必要な支出を割り当て、事業期間内にすべての工程を完了できるスケジュールが組めれば、事業計画の実施体制まで具体化できます。

申請様式と審査基準に事業計画を対応させる

事業の必要性、実施内容、工程、投資・経費、実施体制、スケジュールまで具体化したら、申請様式と審査基準に対応させます。ここでは、これまで準備した内容のうち、何をどの記載欄で説明するのかを決めます。

自社の現状や課題を記載する欄には、現在の事業内容、今回解決する課題、その課題が事業に与えている影響、根拠となる事実や数値を用います。補助事業の具体的内容を記載する欄であれば、実施する事業、各工程、導入する設備、外部へ委託する業務などが主な材料になります。

事業実施による効果を求められている場合には、事業終了時に実現する状態や目標値を用いて、今回の事業によって何が変わるのかを示します。実施体制や実現可能性に関する記載が必要であれば、担当者、工程、スケジュールなど、実際に事業を遂行するために整理した内容などを用います。

審査基準の各評価項目についても、事業計画書のどこで根拠を示すのかを対応させます。例えば、投資の必要性であれば設備を使用する工程や用途、事業効果であれば現在値と目標値、その変化を生む取り組みが説明の根拠になります。

申請項目が多い場合には、申請様式や審査基準の項目と、これまで準備した材料を一覧にしておく方法も有効です。こうした一覧化は、記載漏れや説明の重複を見つけるための作業資料として利用できます。

ここまで準備した内容を申請様式の各項目に対応させれば、事業計画書として記載する内容が具体的に固まります。

まとめ|事業計画書を書く前に、申請する事業の全体像を固める

事業計画書の作成では、現在の事業から今回の取り組みが必要となった理由と、その取り組みによって実現する成果を起点として、実施に必要な工程、投資・経費、実施体制、スケジュールまでを一つの計画につなげます。こうして事業の全体像を具体化することで、設備や経費についても、事業のどこで何のために必要となるのかを明確にできます。

公募要領や申請様式、審査基準を確認し、申請する補助金で求められる条件を踏まえて事業の内容を具体化します。そのうえで、整理した事業内容を申請様式の各項目や審査基準に対応させることで、事業計画書に記載する内容がまとまります。

事業計画書の内容が固まった後は、必要書類の収集や申請書の作成、電子申請等の提出手続を、申請期限に合わせて進めます。

事業計画書以外に必要となる提出資料や、申請内容との対応については、補助金申請にはどんな書類が必要?|提出資料ごとの役割と確認事項で詳しく解説しています。