「直近の決算が赤字になっている」「貸借対照表を見ると純資産がマイナスになっている」。産業廃棄物収集運搬業の許可を申請したい会社にとって、このような財務状態があると、そもそも申請できるのかが気になるところです。

赤字や債務超過があることだけで、許可申請ができなくなるわけではありません。ただし、申請後に許可を受けるには、産業廃棄物の収集運搬事業を的確かつ継続して行うに足りる「経理的基礎」が必要です。

経理的基礎とは、産業廃棄物の収集運搬事業を継続して行える財務的な基盤があるかという許可要件です。
赤字かどうかだけで決まるものではないため、まず赤字と債務超過を区別し、申請時に提出する直前3年間の財務資料から会社の財務状態を把握します。

まず「赤字」と「債務超過」のどちらに当たるかを分ける

赤字と債務超過は、どちらも会社の財務に関する状態ですが、意味は異なります。ここを区別すると、決算書のどこを見るべきかが明確になります。

赤字は、一定の事業年度において収益より費用が大きく、損失が生じている状態であり、主に損益計算書からその年度の利益・損失を読み取ります。一方、債務超過は、貸借対照表上で負債が資産を上回り、純資産がマイナスとなっている財務状態であり、単年度の損益に加えて、それまでに形成された資産・負債・純資産の状態に関係します。

申請前には、赤字の有無だけを見るのではなく、直前3年間の損益と純資産を対応させて財務状態を見ます。

財務資料は直前3年間を一度に並べて確認する

神奈川県で法人が申請する場合、経理的基礎に関する資料として、直前3年間の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、法人税の納付すべき額・納付済額を証する書類などを提出します。

申請前には、直前3期分の貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書を年度ごとに並べ、各年度の損益と純資産がどのように変化しているかを見ます。

たとえば、直近年度が赤字でも貸借対照表上の純資産がプラスであれば、単年度に損失が生じている状態です。赤字が複数年度にわたって続いている場合は、その損失に伴って純資産がどのように変化しているかを見れば、損失が財務状態に与えている影響を把握できます。

債務超過の場合は、現在の純資産がマイナスであることに加え、直前3年間でそのマイナスが拡大しているのか、縮小しているのかを見ます。同じ債務超過でも、損失が続いて純資産のマイナスが拡大している状態と、利益を計上してマイナスが縮小している状態では、3年間の財務資料に表れる推移が異なります。

赤字と債務超過が重なっている場合も、各年度の損益と純資産を同じ年度で対応させることで、損失と財務状態の変化を一つの流れとして捉えられます。単年度の赤字や現在の純資産だけを切り取らず、直前3年間の損益と純資産の推移を明らかにすることが、経理的基礎を検討する前提になります。

赤字額や債務超過額について、「この金額なら許可される」「この状態なら不許可になる」という一律の金額基準があるわけではありません。財務資料に加え、事業の継続性や必要な資金の調達・返済可能性なども含めて経理的基礎が判断されるため、追加で確認すべき事項や資料があれば申請前にそろえます。

財務状態だけでは判断しにくい場合は、提出資料をそろえて検討する

直前3年間の財務資料を並べても経理的基礎を満たすか判断しにくい場合は、申請書の作成を先行させず、審査にあたって追加で確認すべき事項や資料を明らかにします。

そのため、行政書士へ許可申請について相談する場合も、「赤字である」「債務超過である」と伝えるだけでは十分な検討ができません。直前3年間の財務資料を年度ごとにそろえ、損益と純資産の推移が分かる状態にしておけば、実際に申請時に提出する資料を基に経理的基礎を検討できます。

なお、財務・税務上の処理そのものについて判断が必要な場合は、許可申請を扱う行政書士とは別に、税理士など適切な専門家の領域が関係します。許可要件としての経理的基礎の検討と、会計・税務上の判断は分けて扱います。

結論|赤字・債務超過だけで判断せず、経理的基礎を確認する

赤字や債務超過があっても、その事実だけで産業廃棄物収集運搬業の許可申請ができないと決まるわけではありません。許可を受けるためには、事業を的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎が必要です。

申請前には、申請者が直前3年間の財務資料をそろえて損益と純資産の推移を確認します。そのうえで、経理的基礎を満たすか判断するために追加資料が必要となる場合は、その内容を確認して申請に備えます。

赤字や債務超過という一つの数字だけで申請の可否を決めるのではなく、申請時に審査される財務状態と事業の継続性を踏まえて経理的基礎を確認することが、申請準備の基本となります。