現代の日本は超高齢化社会を迎えています。医療の進歩や終活への関心の高まりにより、「成年後見制度」
という言葉も少しずつ知られるようになってきました。
この制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方の権利を守るための仕組み
です。家庭裁判所が選任した成年後見人等が、本人に代わって財産管理や介護・福祉サービスの契約(身
上監護)を行います。
大切なのは、単なる“代理”ではなく、本人の意思を尊重しながら意思決定を支援する点にあります。
1.法定後見と任意後見
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
法定後見は、すでに判断能力が低下している場合に利用する制度で、状態に応じて次の3つに分かれます。
・成年被後見人:判断能力がほとんどない状態
・被保佐人 :判断能力が著しく不十分な状態
・被補助人 :判断能力が不十分な状態
家庭裁判所に申立てを行い、審判によって後見人等が選任されます。
一方の任意後見は、まだ判断能力が十分あるうちに、将来に備えて援助者(任意後見受任者)と「契約」
を結んでおく制度です。契約内容は比較的自由に決めることができ、公正証書で作成、登記します。
実際の利用イメージは次の通りです。
・法定後見:判断能力が低下した後に申立て(開始まで約2か月)
・任意後見:元気なうちに契約 → 判断能力低下後に家庭裁判所へ申立て(監督人選任)
つまり、「備えるか」「事後対応か」の違いと考えると分かりやすいでしょう。
2.成年後見人等の役割
成年後見人等の役割は、大きく分けて2つです。
・身上監護
医療機関の受診や介護サービスの契約、施設入所の手続きなど、生活面のサポートを行います。
・財産管理
預貯金の管理や支払い、保険・不動産などの財産の把握・管理を行います。
ただし、次のようなことは後見人の役割には含まれません。
・医療行為への同意
・保証人や身元保証人になること
・介護や身の回りの世話を直接行うこと
・結婚や離婚などの身分行為の代理
3.成年後見制度の費用(目安)
後見人には報酬が発生し、家庭裁判所の基準に基づいて決定されます。
一般的な目安は以下の通りです。
・月額2万円程度(基本)
・財産額が多い場合は3〜6万円程度
また、特別な業務が発生した場合は追加報酬が付くこともあります。
4.任意後見契約のメリット・デメリット
メリット
・信頼できる人を自分で選べる
・支援内容を自由に設計できる
・公正証書・登記により信用性が高い
・監督人が付くため安心
デメリット
・契約してもすぐには効力が発生しない
・死後の手続きは含められない
・取消権がない
・監督人選任の申立てが遅れるリスクがある
そのため、実務では次の3つをセットで準備するケースが多く見られます。
①財産管理委任契約(元気なうちのサポート)
②任意後見契約(判断能力低下後の支援)
③死後事務委任契約(亡くなった後の手続き)
このように組み合わせることで、将来への不安をトータルでカバーできます。
5.成年後見人等の実情
法定後見では、親族が後見人になるケースは2割弱にとどまり、8割以上は専門職が選任されています。
その内訳は、弁護士・司法書士・社会福祉士が中心で、多くを占めています。
また、神奈川県内で成年後見活動を行っている専門職団体の相談窓口には以下のようなものがあります。
<弁護士>
神奈川県弁護士会 成年後見センター「みまもり」
<司法書士>
(公社)成年後見センター・リーガルサポート神奈川県支部
<社会福祉士>
(公社)神奈川県社会福祉士会 成年後見ぱあとなあ神奈川
<行政書士>
(公社)コスモス成年後見サポートセンター神奈川県支部
<税理士>
東京地方税理士会 成年後見支援センター
6.まとめ
成年後見制度は、「いざというときの備え」として非常に重要な制度です。特に任意後見は、本人の意思を
反映しやすく、柔軟な設計ができる点が大きな特徴です。
一方で、制度の違いや使い分けは分かりにくい部分も多くあります。
将来の安心のためにも、早い段階から専門家に相談し、自分に合った形を検討しておくことが大切です。
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