相続手続きで印鑑証明書が必要になっても、「相続人全員が何通ずつ用意するのか」「金融機関の数だけ必要なのか」「いつ取得するのか」まで判断するのは簡単ではありません。

遺産分割協議を行う場合は、相続人全員が遺産分割協議書に実印を押し、それぞれ印鑑証明書を用意します。その後も、相続登記や預貯金、有価証券などの承継で提出を求められることがあります。

必要通数は、誰の証明書をどこへ提出するのか、原本が返却されるのか、複数の提出先へ同時に出すのかによって決まります。

この記事では、印鑑証明書が必要となる人、提出先、必要通数の考え方、有効期限、取得方法まで順番に解説します。

印鑑証明書が必要となる人

遺産分割協議書を作成する場合、相続人全員が実印を押印し、それぞれ印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書は、協議書に押された印鑑が本人の実印であることを証明するために使用します。法務局も、遺産分割協議書には相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を各1通添付する取扱いを案内しています。相続登記に使用する印鑑証明書については、作成後3か月以内という制限もありません。

預貯金の相続でも、遺産分割協議書を使用する場合に相続人全員分の印鑑証明書を求める金融機関があります。証券会社などでも、相続の内容に応じて提出を求められることがあります。
一方、死亡保険金は取扱いが異なります。受取人が指定されている生命保険では、受取人が保険会社へ請求するため、印鑑証明書を求められた場合はその受取人が用意します。

したがって、遺産分割協議を行う相続では、まず相続人全員分を用意し、その後は不動産、預貯金、有価証券、生命保険などの提出先ごとに、誰の証明書が求められるのかを確認します。

必要通数の算定

相続人全員が1通ずつ用意すれば、最後まで足りるとは限りません。

提出先は、不動産なら法務局、預貯金なら金融機関、有価証券なら証券会社、自動車なら運輸支局等のほか、相続税の申告が必要な場合は税務署など、財産や手続ごとに異なります。
必要通数を左右するのが、各提出先での原本の取扱いです。

金融機関から原本返却を受けられ、その証明書を次の提出先でも使用できるのであれば、同じ1通を順番に使えます。
複数の金融機関へ同時に提出する場合は、同じ原本を2か所へ出すことはできないため、その分の枚数が必要です。

相続登記についても、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は、原本還付請求すれば返却を受けることができます。そのため、返却された証明書を金融機関などの別の手続で使用することもできます。

必要通数は、次の順番で算定します。

 1. 提出先を洗い出す
 2. 各提出先で誰の印鑑証明書が求められるかを確認する
 3. 原本返却の可否を確認する
 4. 順番に提出するのか、並行して提出するのかを決める
 5. 同時に必要となる原本数を算定する

たとえば銀行が3行あっても、原本の返却を受けながら順番に提出するのであれば、必ず3通必要になるわけではありません。3行へ同時に提出するなら、その分を用意します。

つまり、必要通数は「相続人が何人いるか」だけではなく、提出先と原本返却、処理の順番によって決まります。

提出先ごとに異なる有効期限

印鑑証明書は、提出先によって発行時期の条件が異なります。

遺産分割協議による相続登記で使用する印鑑証明書について、法務局は「作成後3か月以内」という制限を設けていません。
一方、金融機関では発行から一定期間内のものを求める取扱いがあります。必要となる発行時期は金融機関によって異なるため、提出先ごとに確認します。

そのため、相続開始直後にまとめて取得すると、遺産分割がまとまり金融機関へ提出する頃には有効期限を過ぎ、再取得が必要になることがあります。
先に相続財産と提出先を把握し、それぞれの条件が見えた段階で取得すれば、無駄な再取得を避けやすくなります。

取得方法と費用

印鑑証明書は、印鑑登録をしている市区町村で取得します。
市区町村の窓口で取得できるほか、対応している自治体では、マイナンバーカードでコンビニ交付も利用できます。
交付手数料は自治体によって異なりますが、神奈川県川崎市を例に挙げると、窓口で取得する場合は1通300円、コンビニ交付では1通200円です。

遺産分割協議を行う場合は、各相続人が自分の印鑑証明書を準備します。相続人が離れた地域に住んでいる場合には、必要な時期と通数をあらかじめ伝えて、それぞれ取得してもらいます。

取得枚数は、前述の提出先と原本返却の可否を踏まえて決めます。少ない枚数を順番に使えば費用を抑えられますが、返却を待つ間は次の提出先へ原本を出せません。
複数の金融機関などで並行して手続する場合は、必要な枚数をあらかじめ用意する方が効率的です。

まとめ|必要通数は相続人の人数だけでは決まらない

印鑑証明書の必要通数は、相続人の人数だけでは決まりません。

遺産分割協議を行う場合は、まず相続人全員分を用意します。
そのうえで、不動産、預貯金、有価証券などの提出先を洗い出し、誰の証明書が必要か、原本が返却されるか、複数の提出先へ同時に提出するかを確認します。

原本の返却を受けながら順番に提出するのであれば枚数を抑えられますが、並行して処理する場合は、その分の原本が必要です。
また、金融機関などでは発行時期に条件があるため、早く取りすぎると再取得が必要になることがあります。

提出先と原本の取扱いを確認し、同時に必要となる最大枚数を基準に取得することが、無駄な再取得を避けるポイントです。

財産や金融機関が多く、提出先そのものを把握しにくい場合は、必要通数だけを先に決めるのも困難です。
専門家へ依頼する場合は、相続全体の提出先と必要書類を整理したうえで、印鑑証明書の取得時期や通数まで含めて準備を進められます。