決算変更届を提出した後、経営事項審査(経審)の準備を進めていると、完成工事高や財務諸表の数字が合わないことがあります。このとき問題になるのは、経審申請書の記載を修正すれば足りるのか、提出済みの決算変更届まで戻って修正するのかという点です。

修正範囲は、不一致が生じた段階によって変わります。経審申請書への転記だけを誤っている場合と、決算変更届そのものに誤りがある場合では、修正する書類だけでなく、経営状況分析など後続手続への影響も異なるためです。

さらに、決算変更届の修正によって財務諸表の数字まで変わる場合には、経営状況分析の再実施が必要になります。神奈川県でも、経審の審査過程で決算変更届の修正が必要になるケースが多数発生しているとして、提出前の確認を案内しています。

数字の不一致が見つかったときは、経審で使用する数字と提出済みの決算変更届を照合し、どの段階で誤りが生じたのかを特定します。修正範囲は、その発生地点と後続手続への影響によって決まります。

不一致が見つかった数字から前段階へ遡る

経審の準備中や審査中に数字の不一致が見つかったら、まず経審で使用している数字と提出済みの決算変更届の対応箇所を照合し、不一致があれば、その数字を構成している書類へ順に遡ります。

たとえば、経審の工事種類別完成工事高と決算変更届の完成工事高が一致していなければ、転記や集計に誤りがないかを調べます。決算変更届の数字自体に疑問がある場合は、その年度の工事経歴書や財務諸表を確認し、数字や工種区分の根拠まで確かめる必要があれば請負契約書等へ範囲を広げます。

実務上は、次の順序で範囲を広げます。

  1. 経審申請で使用している数字
  2. 提出済みの決算変更届の対応する数字
  3. 工事経歴書・完成工事高・財務諸表など、その数字を構成している書類
  4. 請負契約書・請求書等の根拠資料

経審から決算変更届、構成書類、根拠資料へと順に遡ることで、誤りが生じた段階を特定します。

経審申請書への転記だけが誤っていれば経審側を修正する

提出済みの決算変更届が正しく、経審申請書への転記や集計だけに誤りがある場合は、決算変更届まで修正する必要はなく、経審側の記載を正しい数字へ修正します。

たとえば、決算変更届では対象業種の完成工事高を正しく記載しているものの、経審の工事種類別完成工事高へ転記するときに金額を間違えた場合です。神奈川県の経審では工事種類別完成工事高を申請書類として提出し、審査に必要な場合には工事請負契約書等も確認資料として使用します。

経審と決算変更届を照合して決算変更届側の数字が正しければ、決算変更届まで修正するのではなく、経審申請書の転記・集計を修正します。

決算変更届そのものに誤りがあれば提出済みの内容を修正する

提出済みの決算変更届そのものに誤りがあれば、経審申請書だけを正しい数字に合わせるのではなく、決算変更届を正しい内容へ修正する必要があります。

神奈川県の経審手引きでは、建設工事に該当しない売上が完成工事高へ含まれていた場合について、決算変更届を正確な内容に差し替え、経営状況分析を再度行う取扱いが示されています。

たとえば、保守・点検・管理業務など建設工事に該当しない売上を完成工事高へ含めていた場合には、その金額を除いた完成工事高へ修正します。また、一つの工事請負契約に係る完成工事高を複数の工種へ分割・重複して計上することはできないため、工種の判定が誤っていれば、工事経歴書と完成工事高の区分も修正の対象になります。

決算変更届のどの数字を修正するかが確定したら、その変更が財務諸表、経営状況分析、経審申請のどこまで影響するかを確認します。

財務諸表の数字が変われば経営状況分析への影響を確認する

経営状況分析の再実施が必要になるかは、決算変更届の修正によって、分析に使用した財務諸表の数字まで変わるかによって決まります。

経営状況分析は、建設業者の財務状況を所定の指標によって分析する経審の一部であり、その結果は「経営状況分析結果通知書」として交付され、経営規模等評価・総合評定値の申請に使用されます。

決算変更届の修正が経営状況分析に使用した財務内容にも及ぶ場合は、修正後の内容を基に経営状況分析を行い直します。神奈川県が示している、完成工事高に建設工事以外の売上を含めていたケースでも、決算変更届の差替えと経営状況分析の再実施が求められています。

この場合は、決算変更届を修正し、修正後の財務内容で経営状況分析を行い直して新しい分析結果を取得したうえで、経審申請に反映します。

過年度の完成工事高が原因なら対象年度まで遡る

現在の決算変更届と経審を照合しても不一致の原因を特定できない場合は、経審で使用している完成工事高の対象期間を確認します。過年度の完成工事高に誤りがあれば、その数字が現在の経審にも影響するためです。

対象年度を特定したら、その年度の決算変更届、工事経歴書、完成工事高を確認し、さらに根拠を確かめる必要があれば請負契約書等まで範囲を広げます。過年度の決算変更届に誤りが見つかった場合は、その年度の内容を修正したうえで、その数字を基礎として作成する現在の経審申請書にも正しい数字を反映します。

修正範囲は、現在の年度だけで判断するのではなく、経審で使用している完成工事高の対象期間から特定します。

修正範囲が広がったら経審の日程も組み直す

決算変更届の差替えや経営状況分析の再実施が必要になれば、その分だけ経審申請までの工程も増えるため、経審結果が必要となる日から日程を組み直します。

公共工事を継続して直接請け負う会社では経審結果の有効期間との関係もあり、入札参加資格認定に経審結果を使用する場合、発注機関がどの時点の結果を認定に使用するのかによって、実務上必要となる申請時期も変わります。

たとえば神奈川県の令和9・10年度競争入札参加資格認定では、令和9年2月中旬頃までに入札システムへ登録された最新の経審結果を等級区分の認定に使用するとされています。結果通知からシステムへの反映にも日数を要するため、県は1月中旬頃までに結果通知を受け取れるよう早めの申請を案内しています。

決算変更届の修正、必要に応じた経営状況分析の再実施、経審申請、結果通知までに必要な期間を見込み、経審結果が必要となる日から逆算して日程を組み直します。

不一致が生じた段階によって修正範囲を決める

決算変更届と経審の数字が合わない場合は、経審で不一致が見つかった数字から前段階へ遡り、誤りが生じた地点によって修正範囲を決めます。

  • 経審申請書と決算変更届を比べると、経審側だけが違う
    → 経審申請書側の記載を修正する
  • 決算変更届の数字にも誤りがある
    → 決算変更届を構成する資料へ遡って正しい数字を確定し、決算変更届を修正する
  • 決算変更届の修正によって経営状況分析に使用した財務諸表も変わる
    → 修正後の財務内容を基に経営状況分析を行い直し、新しい分析結果を取得して経審へ反映する
  • 現在の年度だけでは不一致の原因が分からない
    → 経審で使用している対象期間を特定し、必要な過年度の決算変更届まで遡る
  • 経審と決算変更届のどちらが正しいか判断できない
    → 工事経歴書・完成工事高・財務諸表を確認し、必要な場合は請負契約書等の根拠資料まで遡る

不一致が見つかった書類だけを見るのではなく、誤りが生じた段階を特定することで、修正が必要な書類と手続を判断できます。

結論|不一致が生じた段階まで遡り、後続手続へ修正を反映する

決算変更届と経審の数字が合わないときは、経審で不一致が見つかった項目と提出済みの決算変更届を照合し、どの段階で誤りが生じたのかを特定します。

決算変更届まで正しければ経審側を修正し、決算変更届にも誤りがあれば、その数字を構成する工事経歴書や財務諸表、必要に応じて請負契約書等の根拠資料まで確認して正しい数字を確定します。

その修正が財務諸表にも及ぶ場合は経営状況分析への影響を確認し、再実施を経て経審申請へ反映するため、
修正範囲は、不一致を発見した場所ではなく、誤りが生じた段階と、その数字を使用する後続手続によって決まります。