補助金を利用して設備を導入したい、新しい商品やサービスを始めたいと考えていても、その希望だけでは、申請する事業内容や補助する必要性を審査するための情報がそろいません。
補助金申請で事業計画が必要になるのは、実現したい内容について、どのような課題や目的があり、そのために何を行い、どのような経費を使い、その結果としてどのような成果や効果を生み出すのかを示し、補助金の目的や審査項目に照らして評価できるようにするためです。
設備を導入することや新しいサービスを始めること自体が事業計画の目的になるとは限りません。その投資によって売上の向上、生産性の改善、作業精度の向上など、事業として何を実現しようとしているのかまで具体化することで、申請する事業の全体像が見えるようになります。
この記事では、自社が実現したい内容をどのように一つの事業計画として組み立て、申請する補助金の条件や審査項目に対応させるのかを解説します。
実現したい成果から申請する事業の全体像を具体化する
事業者が設備投資や新しい商品・サービスを計画するとき、その背景には、現在の事業で解決したい課題や、投資によって実現したい成果があります。補助金の審査では、導入する設備や開始するサービスだけを取り出して評価するのではなく、それらを含む事業全体について、制度の条件を満たしているか、補助する事業としてどのような内容や効果があるかを、公募要領や審査項目に沿って評価します。
例えば、同じ製造設備を導入する場合でも、現在の生産工程を改善して生産量を増やすために導入するケースと、
新商品の製造を始めて売上の拡大につなげるために導入するケースでは、設備投資の意味が変わります。
前者では生産性の改善、後者では新たな商品による事業展開というように、目的が変われば、設備が必要となる理由や実施後に見込む成果・効果も変わります。
そのため、事業計画では設備名や購入金額に加えて、現在の事業にどのような課題や事情があり、今回の取り組みによって何を実現し、その中で設備がどのような役割を果たすのかまで具体化します。
さらに、設備の導入によって生産量、作業時間、精度、売上などにどのような成果や効果を見込むのかをつなげることで、設備投資を含む事業の全体像を示すことができます。
補助金では制度ごとに公募要領が公開され、応募資格や補助対象事業などの条件が定められています。
また、制度によって、事業目的との適合、実施方法、スケジュールなど、申請された計画の内容も審査対象となります。
申請する事業を審査できる内容にするには、何を導入するか、何を始めるかという計画を、その背景にある課題や目的と、実現したい成果・効果まで含めた一つの事業として具体化することが必要です。
課題・取り組み・経費・成果を一つのストーリーとしてつなげる
事業計画では、現在の事業にどのような課題があり、その課題に対して何に取り組み、どのような投資や経費が必要となり、その結果として何を実現するのかを一つにつなげます。
例えば、生産能力が不足して受注に対応できない事業者が製造設備を導入する場合には、現在どの工程が生産量の制約になっているのか、その工程へどのような設備を導入するのか、設備の導入によって作業時間や生産量がどのように改善し、それが受注への対応や売上の向上にどうつながるのかという流れがあります。
このように、「現在の課題→取り組み→必要な経費→成果・効果」が一連の流れとして紐づくことで、それぞれの取り組みや支出が事業全体の中でどのような意味を持つのかが明確になります。
設備費であれば、設備をどの工程で使用し、その導入によって何を改善するのかを示します。外注費やシステム費についても、事業のどの部分に必要となり、その支出が予定する成果にどうつながるのかを示すことで、申請する経費の必要性を説明できます。
事業計画を組み立てるうえで重要なのは、個々の項目を独立して記載することよりも、課題から取り組み、経費、成果・効果までに一貫した流れを持たせ、申請する事業がどのように進み、何を実現する計画なのかを読み取れるようにすることです。
事業の全体像を整理した後は、実施する取り組みを具体的な工程や投資計画、実施体制へ落とし込んでいきます。
事業計画書に記載する内容と、その具体化の進め方については、「補助金申請の事業計画書には何を書く?|申請前に整理する事業内容と投資計画」で詳しく解説しています。
事業計画を補助金の条件・審査項目に対応させる
自社で取り組む事業の全体像が固まった後は、その内容を申請する補助金の条件や審査項目に対応させます。
補助金にはそれぞれ支援する事業の範囲や条件があり、公募要領、申請様式、審査基準等には、対象となる事業者や事業内容、経費などの条件と、申請時に記載する事項が示されます。現在公募されている補助金についても、制度ごとに個別の公募要領が公開されています。
自社にとって合理的な投資であっても、申請する補助金が支援する事業の範囲に含まれるか、予定する支出が補助対象となる条件を満たすか、事業の必要性や効果、実施可能性など、審査で求められる事項が事業計画に示されているかは、申請する制度に即して確かめる必要があります。
例えば、事業の必要性が審査される制度では、現業で生じている課題と今回の取り組みとの関係が重要になります。事業効果が評価される制度では、売上の向上、生産性の改善、精度の向上など、実施後に見込む成果とその根拠が審査に関係します。
実施可能性が評価対象となる場合には、予定している内容を実行できる体制やスケジュールも必要になります。
具体的な審査項目は制度によって異なるため、実際の申請では、その補助金の公募要領等を基準に事業計画の内容を対応させます。
したがって、事業計画を申請内容として仕上げる際には、自社が実現したい内容から組み立てた事業のストーリーと、公募要領や申請様式、審査基準等で求められる条件・評価項目を対応させることが重要です。
事業計画の内容を審査項目に対応させることと、自社や予定する事業が補助金の申請要件を満たしていることは、分けて確認する必要があります。
対象事業者・対象事業・補助対象経費などの要件を確認する方法については、「補助金の対象になるかはどう判断する?|申請前に公募要領で確認する要件」で解説しています。
まとめ|実現したい成果から申請する補助事業を組み立てる
補助金の事業計画を考えるときは、設備の導入や新しい商品・サービスの開始を出発点とするだけでなく、その取り組みによって自社が何を実現したいのかまで具体化します。
そのうえで、現在の課題から取り組みの内容、必要となる経費、実施後に見込む成果・効果までを一つの流れとしてつなげます。売上の向上、生産性の改善、精度の向上など、目指す成果までつながることで、設備や経費が事業の中で果たす役割も明確になります。
最後に、その事業内容を申請する補助金の公募要領、申請様式、審査基準等に対応させます。「何を実現したいのか」から逆算して課題・取り組み・経費・成果を一つのストーリーとして組み立て、その内容を補助金の条件や審査項目に対応させることが、事業計画を申請内容へ落とし込む基本的な考え方です。