決算変更届の完成工事高が増えても、経営事項審査(経審)の点数が同じ幅で変化するとは限りません。
経審では、対象業種の完成工事高を2年または3年の年間平均で評価するほか、自己資本額、経営状況、技術力、社会性等も総合評定値(P点)の算定に用いるためです。

決算変更届は、毎事業年度終了後に工事実績や財務内容を届け出る手続です。
経審では、決算変更届に記載した完成工事高や財務内容に関係する項目に加え、技術力や社会性等の所定の項目を審査し、公共工事を発注者から直接請け負う建設業者に必要な評点を算出します。

決算変更届の数字が経審のどこに使われ、期待した評価との差がどの段階で生じているのかをたどるには、経審結果通知書の審査基準日、対象業種のX1、P点を順に見ていきます。

決算変更届の提出後に経審で評点が算出される

決算変更届と経審は、数字につながりがあっても役割の異なる手続です。決算変更届ではその事業年度の工事実績や財務内容を届け出ますが、その提出自体に点数が付くものではありません。

経審を受けると、完成工事高などの経営規模、自己資本額、経営状況、技術力、社会性等について所定の方法で評点が算出されます。そのため、毎年決算変更届を提出していても、経審を受けていなければ、その決算内容を基にした経審結果通知書は交付されません。

決算変更届の提出後に経審を受けて初めて、その決算内容に関係する項目を含めて各評点が算出されます。すでに経審を受けている場合は、結果通知書から数字の変化をたどります。

完成工事高は年間平均を通じてX1に反映される

完成工事高に関係するX1では、審査対象となる建設業の種類ごとに、直前2年または直前3年の年間平均完成工事高を算定して評価します。当年度の完成工事高が前年より増えた場合も、X1には年間平均後の金額として表れます。

さらに、総合評定値(P点)には、自己資本額等に関係するX2、経営状況のY、技術力のZ、社会性等のWも関係します。完成工事高の増加によってX1が変化しても、P点はこれら複数の評価項目を通じて算出されます。

当年度の完成工事高とP点を直接比較するのではなく、まずX1が前回からどう変化したのかを見て、その後にX2・Y・Z・Wを含めたP点の変化をたどります。

X1は対象業種ごとの完成工事高で算定される

経審では、完成工事高を審査対象となる建設業の種類ごとに評価します。会社全体の売上や完成工事高が増えていても、その増加分がどの業種へ計上されたかによってX1への表れ方が変わります。

たとえば、土木工事業ととび・土工工事業の許可を持つ会社で、会社全体の完成工事高が増えたとします。その増加分がとび・土工工事業の完成工事高であれば、土木工事業のX1にその金額が加わるものではありません。

対象業種について、決算変更届に計上した完成工事高と、2年または3年の年間平均完成工事高を見れば、その業種の工事実績がX1にどのように表れているかをたどれます。

審査基準日から経審結果の対象年度を特定する

決算変更届と経審結果通知書を比較するときは、両者が同じ決算を対象としているかを審査基準日から特定します。

経審では、原則として申請日の直前の事業年度終了日、つまり直前の決算日が「審査基準日」となり、この日を基準として審査が行われます。

たとえば3月決算の会社が新たに3月31日を迎え、その後に経審を申請する場合は、原則としてその新しい決算日を審査基準日として申請します。最新の決算変更届と手元の経審結果通知書を比較する際には、結果通知書の審査基準日がその決算日に対応しているかを見ます。

審査基準日が最新の決算より前であれば、その結果通知書は最新の決算を基準としたものではありません。決算変更届の対象年度と審査基準日が対応していれば、その決算を基準とした各評点へ進んで比較できます。

経審結果は審査基準日から1年7か月有効となる

経審結果通知書の日付には、評点の比較に使う審査基準日と、経審結果の有効期間を管理するという二つの意味があります。

経審の有効期間は結果通知書を受け取った日からではなく、審査基準日から1年7か月です。そのため、公共工事を発注者から直接継続して請け負う会社では、毎年の決算後に経審を受け、有効な結果が途切れないようにします。

評点を比較するときは前回と今回の審査基準日をそろえ、公共工事を継続して直接請け負う場合は、審査基準日から1年7か月の有効期間も併せて管理します。

P点の先に入札参加資格の認定がある

経審結果通知書のP点が変化している場合は、その先の入札参加資格審査でどのように扱われているかが別の論点になります。

決算変更届、経審、入札参加資格認定は、それぞれ役割の異なる手続です。決算変更届で工事実績や財務内容を届け出た後、経審によって評点が算出され、その経審結果が別の入札参加資格審査で使用されます。

神奈川県が発注する公共工事についても、入札に参加するためには競争入札参加資格の認定が必要です。神奈川県は令和9・10年度の入札参加資格認定について、対象期間内の審査基準日のうち最新の経審結果を等級区分の認定に使用すると案内しています。

P点が変わっているのに入札上の等級や扱いが変わっていない場合は、発注機関の入札参加資格認定で経審結果がどのように使用されているかを調べます。

どの段階で差が生じたかを順にたどる

「決算変更届の数字が変わったのに評価が変わらない」ときは、決算変更届から入札参加資格までのどの段階で期待した結果との差が生じているのかを順にたどります。

  • 決算変更届は提出したが経審を受けていない
    → 経審を受けていないため、その決算内容を基にした評点は算出されていません。
  • 経審を受けたが最新決算が反映されているか分からない
    → 経審結果通知書の審査基準日と最新の決算日を照らし合わせます。
  • 最新決算は反映されているがX1が期待どおり変わっていない
    → 対象業種の完成工事高と2年または3年の年間平均完成工事高をたどります。
  • X1は変わったがP点の変化が小さい
    → X2・Y・Z・Wを含め、前回から変化した評点を比較します。
  • P点は変わったが入札上の等級や扱いが変わらない
    → 発注機関の入札参加資格認定で使用される経審結果と認定基準を調べます。

決算変更届 → 審査基準日 → X1 → P点 → 入札参加資格の順にたどることで、どの段階から期待した結果との差が生じているのかを特定できます。

複数の手続にまたがる場合は資料をそろえて確認する

前回と最新の経審結果通知書を比較すれば、審査基準日、対象業種のX1、P点のどこで変化が生じているかをたどれます。X1に差があれば決算変更届の対象業種と完成工事高、P点との差であればX2・Y・Z・Wをチェックします。

そのうえで、決算変更届上の完成工事高と経審上の対象業種との関係が分からない、比較する審査基準日を特定できない、経審と入札参加資格のどちらで期待した評価との差が生じているか分からない場合には、確認対象が複数の手続にまたがります。

結論|審査基準日・X1・P点から変化した箇所を特定する

決算変更届の完成工事高が増えた後に経審の評価を比較するときは、前回と最新の経審結果通知書を並べ、まず審査基準日、対象業種のX1、P点の3か所を比較します。

審査基準日から最新決算を対象とした結果かを特定し、X1に期待した変化が表れていなければ、対象業種の完成工事高と2年または3年の年間平均完成工事高を確認します。X1が変化しているのにP点の変化が小さい場合は、X2・Y・Z・Wの前回と今回の評点を比較します。P点が変化しているのに入札上の等級や扱いが変わっていなければ、入札参加資格認定で使用された経審結果と認定基準を確認します。

決算変更届の数字から直接P点を比較するのではなく、審査基準日、X1、P点、入札参加資格と段階を追うことで、期待した評価との差が生じた箇所を特定できます。