飲食店の開業に向けて内装や厨房設備を計画する際、工事を始める前に保健所へ相談しておくことが重要です。

予定する営業内容によって必要な営業許可や施設基準が異なり、工事の完了後に設備の不足が分かると、設計変更や追加工事が必要になるためです。特に、調理・製造する食品や販売方法によって必要な設備が変わる場合は、設計段階で営業内容と施設計画を照らし合わせておく必要があります。

この記事では、飲食店の工事前に保健所へ伝える営業内容、図面で確認する施設・設備の条件、事前相談の結果を工事計画へ反映するまでの流れを解説します。

営業予定の内容から必要な許可・届出を判断する

飲食店を開業する際は、取扱食品や営業方法によって、食品衛生法に基づく営業許可や営業届出が必要になります。

一般的なレストランや食堂、カフェなどで料理や飲み物を調理・提供する場合、飲食店営業許可が通常は必要です。ただし、店内での提供とは別に食品を製造して他の店舗へ卸すなど、営業内容によっては別の許可が関係することもあります。

例えば、カフェで飲み物と軽食を提供するほか、焼き菓子を製造して別の店舗へ卸したい場合です。店内で提供する菓子を持ち帰り販売する場合とは許可の扱いが異なるため、菓子製造業の許可も必要になるか、具体的な製造・販売方法を保健所に伝えて確認します。

必要な営業許可の区分によって適用される施設基準も異なるため、工事前に予定する営業の範囲を明らかにしておく必要があります。

メニューと調理・販売方法を具体的に伝える

保健所への事前相談では、店名や業態に加え、実際に扱う食品と調理・提供方法を具体的に説明します。

例えば、同じカフェでも、仕入れた菓子をそのまま提供する場合と、店舗内で生地から製造する場合では、必要な作業や設備が異なります。また、注文を受けて調理した料理を提供する場合と、あらかじめ大量に調理して包装・保管する場合では、衛生管理や設備について確認すべき内容が変わります。

そのため、相談前に予定するメニューをまとめ、次の事項を説明できるようにしておきます。

  • 取り扱う食品:料理、菓子、飲料など、調理・製造する食品の種類
  • 調理・製造工程:仕入れた食品の盛り付け、原材料からの加熱・加工など、実際に行う作業
  • 提供・販売方法:店内飲食、持ち帰り、包装販売、他の店舗への卸売りなど
  • 取扱量:一度に調理する量、想定する提供食数・製造量

取扱量は、作業スペースや食品の保管設備を計画する際にも関係します。少量の食品を注文ごとに調理する店舗と、まとまった量を仕込んで保管する店舗では、必要な作業スペースや冷蔵・冷凍設備の容量が異なるためです。

保健所には、開業時に予定している営業内容を具体的に伝え、その営業に必要な許可・届出の区分と、適用される施設基準を確認します。

なお、営業届出の対象となる営業には、営業許可とは異なり、許可業種に適用される施設基準や施設検査による許可審査はありません。必要な手続は、実際の営業内容に基づいて判断されます。

設計図面で施設基準への適合を確認する

必要な営業許可の区分が分かったら、その営業に適用される施設基準を満たせるよう、店舗の構造や設備の配置を計画します。

飲食店営業の施設基準には、食品を衛生的に取り扱うための作業場所、手洗い・洗浄設備、食品の保管設備などに関する条件が定められています。

事前相談では、店舗全体の平面図と厨房・作業場の設備配置図を示し、予定する営業内容に対して設備の種類・数・配置や作業スペースが適切かを確認します。

厨房・作業場の配置と作業スペース

設計図面には、店舗全体の間取りに加え、厨房、客席、トイレ、食品の保管場所などの位置と寸法を記載します。

厨房については、調理台、シンク、加熱機器、冷蔵庫などを配置し、原材料の受入れから調理、盛り付け、提供、使用済み食器の洗浄まで、それぞれの作業をどこで行うのかが分かるようにします。

例えば、食材を洗う場所と使用済み食器を洗う場所が近接している場合は、作業中に食品が汚染されないよう、設備の配置や作業方法を考える必要があります。

また、厨房が狭く、調理設備や保管設備を十分に配置できない場合には、予定する取扱量に対応できる作業スペースを確保できるかが問題になります。

このため、保健所では、図面に記載された寸法や設備の配置を、取り扱う食品・調理工程・取扱量と照合し、衛生的に作業できる施設計画になっているかを確認します。

手洗い・洗浄設備と食品の保管設備

厨房設備のうち、特に手洗い設備や洗浄設備については、工事前に設置場所と仕様を確認しておくことが重要です。

例えば、従業員の手洗い設備は、作業中に使用しやすい位置に設け、洗浄後の手指が再び汚染されない構造とすることが求められます。

食品や器具を洗うための設備についても、予定する調理作業に対応できるかを確認します。必要となるシンクの数や大きさ、用途の分け方などは、営業内容と適用される施設基準に基づいて判断されます。

生鮮食品や調理済み食品を保管する場合には、食品の種類と取扱量に応じた冷蔵・冷凍設備や保管場所が必要です。そのほか、施設の構造に応じて、床・壁などの清掃しやすさ、換気、給排水、防虫・防鼠対策、トイレの設備なども確認対象となります。

給排水管を設置する手洗い設備やシンクは、工事後に位置や数を変更すると追加工事につながりやすいため、設計段階で施設基準との適合性を確認しておく必要があります。

なお、施設基準は食品衛生法に基づき自治体の条例で定められており、営業の種類や施設の条件によって必要な設備が異なります。店舗の設計では、全国一律の設備数や寸法を前提とせず、所在地を管轄する保健所の基準に沿って図面を作成します。

事前相談で確認した内容を工事計画へ反映する

予定する営業内容と施設図面を用意したら、店舗所在地を管轄する保健所の食品衛生担当へ相談します。

保健所によっては事前予約を求めているため、相談方法や必要資料をあらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。内装業者や設計担当者が同席できれば、設備の位置や構造について指摘を受けた際に、具体的な修正方法を検討しやすくなります。

相談では、必要な営業許可の区分と施設基準を確認するとともに、提出した図面を基に、設備が不足している箇所や配置変更が必要な箇所を明らかにします。

例えば、調理作業に必要な手洗い設備が不足していると指摘された場合には、給排水の計画も含めて設置位置を検討し、図面を修正します。また、食品の保管設備や作業スペースが予定する取扱量に対応していなければ、設備の増設や配置変更が必要です。

保健所から確認を求められた事項や修正点は、工事の発注・着工前に設計図面へ反映し、必要に応じて修正後の計画について改めて相談します。

事前相談後にメニューを増やしたり、製造・販売方法を変更したりする場合も、当初確認した許可区分や施設基準で対応できるかを改めて確かめる必要があります。営業内容の変更に伴って設備の条件が変わることもあるため、変更後の計画を保健所へ伝えます。

事前相談後も正式な営業許可申請と施設検査が必要

保健所への事前相談は、予定する営業内容と施設計画を工事前に確認するための手続です。事前相談で図面について確認を受けても、その時点で営業許可が与えられるわけではありません。

営業許可が必要な場合は、所定の申請書類を提出し、工事が完了した施設について保健所の検査を受けます。
許可行政庁は、完成した施設が適用される施設基準に適合しているかなどを審査したうえで、営業許可を行います。

実際の施設が基準を満たしていなければ、設備の改善や再検査が必要となり、予定していた開業日に営業を始められないこともあります。

そのため、開業予定日から逆算して申請・施設検査の日程を確認し、工事前の相談では完成後に検査される施設の構造や設備をできるだけ具体的に示しておくことが重要です。

工事着手前に営業内容と設計図面を照合する

内装工事の発注や着工を判断する際は、まず予定するメニュー、調理・製造方法、提供・販売方法、取扱量が、保健所へ説明した内容と一致しているかを確かめます。

営業内容に変更があれば、当初確認した許可・届出の区分や施設基準で対応できるかを保健所へ確認し、必要な修正を行います。

次に、予定する営業に必要な設備が図面へ反映されているかを確認します。特に、手洗い設備やシンクなど、工事後の変更が追加工事につながりやすい箇所については、保健所から指摘された事項を反映した設計になっていることが重要です。

営業内容に応じた許可区分と施設基準を確認し、必要な設備を図面に反映できていれば、その計画を基に工事を発注・着工するか判断できます。

また、開業予定日を決める際には、営業許可申請の提出時期と、工事完成後の施設検査の日程も見込んでおきます。