親が亡くなり、兄弟で遺産分割をすることになったものの、自分だけが長年親を介護してきた。あるいは、無給に近い形で親の家業を手伝ってきた。このような場合に、他の兄弟と同じ相続分になるのか疑問を感じることがあります。
反対に、兄弟から「自分は親の介護をしてきたから、その分を多く相続できる」と主張され、そのまま認めなければならないのか迷うこともあります。
こうした家族による貢献は、「寄与分」として遺産分割に反映されることがあります。ただし、介護や家業の手伝いをしたという事実だけで認められるものではなく、通常の家族としての協力を超える貢献によって、被相続人の財産が維持・増加したといえることが必要です。
この記事では、介護や家業の手伝いなどがどのような場合に寄与分として扱われ、相続する財産にどう反映されるのかを解説します。
親への貢献が寄与分になるには「特別の寄与」が必要
共同相続人が被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、療養看護などを行い、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、寄与分が認められることがあります。
寄与分として扱われるのは、通常の家族関係で行われる扶養や協力の範囲を超えた貢献です。親のために時間や労力を費やしたというだけでは足りず、「特別の寄与」が求められます。
介護、家業への労務提供、金銭の負担がどのような場合に寄与分につながるのかは、以下でそれぞれ説明します。
介護による寄与分は期間・内容・負担の程度から考える
親を介護していた場合は、どの程度の療養看護を継続して行っていたかが問題になります。
日常的な身の回りの世話から、通院の付き添い、食事や排せつの介助、夜間の対応まで、介護の内容は家庭によって異なります。寄与分を主張する場合は、いつからいつまで、どのような介護を、どの程度の頻度で行っていたのかをたどります。
親の要介護状態が重く、相続人が長期間にわたって日常的な介助を担っていたのであれば、その期間と介助内容が寄与の程度を考える材料になります。外部の介護サービスを利用していた期間や他の家族が介護を分担していた期間があれば、それらと区別することで、本人が実際に担った介護の範囲が分かります。
介護記録や診療記録、要介護認定に関する資料、介護サービスの利用記録などを時期ごとに照らし合わせると、親に介護が必要だった時期と、本人が実際に担った介護の期間・内容をたどることができます。
家業の手伝いは労務と報酬の実態から考える
親の事業や農業、店舗などを長期間手伝っていた場合も、寄与分が認められることがあります。
この場合は、どのような仕事を、どの程度の期間・頻度で行っていたのかに加え、その労務に見合う報酬を受け取っていたかが問題になります。
長期間にわたって無償または著しく低い報酬で働いていた場合は、勤務期間、仕事内容、勤務時間と実際の報酬額から、どの程度の労務を無償または低い対価で提供していたのかを見ていきます。
給与明細や帳簿、事業関係資料などが残っていれば、実際の報酬額や勤務状況と照らし合わせることができます。
親のために財産を負担した場合も寄与分になることがある
寄与分は、介護や家業への労務提供に限られません。共同相続人が被相続人のために財産上の給付を行った場合も対象になり得ます。
たとえば、親の事業へ自分の資金を提供した場合は、支払った金額だけでなく、その資金の使途や返済の有無までたどります。振込記録や領収書が残っていれば、いつ、いくらを支払い、その金銭が何に使われたのかを確認できます。
資金を貸して後から全額返済を受けた場合と、返済を受けずに資金を提供した場合とでは、相続人が最終的に負担した金額が異なります。返済記録まで含めて金銭の動きをたどることで、相続人自身が最終的に負担した金額が分かります。
寄与分が認められると具体的な相続分に反映される
寄与分が認められた場合は、相続開始時に被相続人が有していた財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなして、各共同相続人の相続分を計算します。
そのうえで、寄与した相続人については、計算された相続分に寄与分を加えた額が具体的な相続分となります。
たとえば、相続人が子2人で、遺産が3,000万円、子Aの寄与分が600万円と認められたとします。
まず3,000万円から寄与分600万円を控除した2,400万円を基礎として、子2人の相続分を計算します。それぞれ2分の1なので1,200万円です。Aには寄与分600万円を加えるため1,800万円、Bは1,200万円を取得する計算になります。
その結果、寄与分を考慮しない場合はAとBがそれぞれ1,500万円となるところ、600万円の寄与分を反映すると、Aが1,800万円、Bが1,200万円となります。
寄与分は共同相続人の協議で決める
寄与分を主張する相続人がいる場合、まず共同相続人の協議によって寄与分を定めます。
寄与分を主張する場合は、介護の期間・内容、家業への従事状況、金銭負担などについて、寄与の内容と程度を資料とともに示します。
共同相続人は、その内容を基に寄与分を認めるか、認める場合はいくらとするかを協議します。合意した寄与分は具体的相続分の計算に組み入れ、その金額を前提として各相続人が取得する遺産を決めます。
共同相続人の間で寄与分について協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に寄与分を定める処分を求めることができます。
ただし、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として寄与分を反映した具体的相続分による分割ができず、法定相続分または指定相続分を基準に分割します。
相続開始から10年以内に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしていた場合などは例外となり、2023年4月1日より前に開始した相続には経過措置もあります。
10年経過後でも、共同相続人全員が合意すれば、寄与分を考慮した内容で遺産を分けることができます。
※遺産分割協議については、以下の記事で詳しく解説しています。
「遺産分割協議とは|なぜ相続人全員の合意が必要になるのか」
寄与分を主張できるのは共同相続人
民法上の寄与分を主張できるのは共同相続人です。介護などをした人が共同相続人であれば、遺産分割の中で寄与分を主張します。
一方、相続人ではない親族が被相続人の療養看護などを無償で行い、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、一定の要件のもとで相続人に「特別寄与料」を請求する制度があります。
そのため、介護などをした人が共同相続人であるかによって、遺産分割の中で寄与分を主張するのか、相続人に対して特別寄与料を請求するのかが分かれます。
まとめ|寄与分は貢献の内容と程度を具体的にする
寄与分では、「長年介護した」「家業を支えた」という事情だけで相続額が決まるわけではありません。介護や労務提供、金銭負担の内容と程度をたどり、寄与分としてどの程度を相続分に反映させるのかを考えます。
介護であれば、介護した期間や頻度、具体的な介助内容、親の要介護状態、外部サービスや他の家族による介護の状況を資料と照らし合わせます。家業への従事であれば勤務期間や仕事内容、勤務時間、報酬額をたどり、金銭を負担した場合は支払額や使途、返済の有無から最終的な負担額を見ていきます。
自分が寄与分を主張する場合は、こうした事実を資料で裏付け、寄与分として求める金額を共同相続人へ提示します。他の相続人から寄与分を主張された場合も、介護や家業への従事などがあったという事情だけで結論を出さず、その内容や期間、対価の有無などを踏まえて協議します。