会社設立では何を決める?|法人形態の選択から会社ができるまでの流れ
これから行う事業の内容がおおむね決まり、法人で事業を始めることになれば、会社名や所在地のほか、出資関係や経営体制なども定めていきます。
株式会社では、誰が出資して株主になるのか、どのような株式構成にするのか、誰が取締役として経営を担うのかを定めます。合同会社では、誰が社員として出資し、誰が業務を執行し、会社を代表するのかという関係を決めます。
こうして定めた会社の基本事項を定款に反映し、出資を履行したうえで、設立登記へ進みます。
この記事では、事業の構想を会社として成立させるまでに何を決め、それぞれの決定が定款・出資・登記へどうつながるのかを、設立の流れに沿って説明します。
会社設立は、会社形態の選択から設立登記まで段階的に進む
会社設立では、まず予定している事業をどの会社形態で行うかを選び、そのうえで商号、事業目的、本店、出資、株式、経営体制などを定めます。
決定した内容は、定款や設立時の決定に反映し、出資その他の設立手続を経て設立登記へ進みます。株式会社も合同会社も、本店所在地で設立登記をすることによって成立します。
会社形態によって、出資者と経営者の関係や、設立時に定める事項が変わるため、設立手続の出発点は会社形態の選択になります。
会社形態によって出資と経営の仕組みが変わる
会社法上の会社には株式会社、合同会社、合名会社、合資会社があります。これから事業を会社として始める場合は、各会社形態の出資者の責任や経営の仕組みを踏まえて、事業に合う形態を選択します。
ここでは、その後の設立事項との関係が分かるように、株式会社と合同会社を中心に見ていきます。
株式会社では株主が出資し、取締役などが経営を担う
株式会社では、株式を引き受けた人が出資を行って成立後は株主となり、会社経営は取締役などの機関が担います。
そのため株式会社では、出資者と株式の構成、取締役などの経営機関、株式の譲渡に関する仕組みなどを定めます。
設立方法には、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける発起設立と、発起人が一部を引き受け、残りについて引受人を募集する募集設立があります。募集設立では、設立時募集株式の引受けや創立総会など、追加の手続が生じるため、採用する設立方法によって、その後に必要となる出資や株式に関する手続も変わります。
合同会社では社員が出資・業務執行・代表に関わる
合同会社では、出資する人を「社員」と呼び、設立時に誰が社員になるのか、各社員が何を出資するのかを定めます。
社員が複数いる場合には、誰が業務を執行し、誰が会社を代表するのかという関係も、定款や会社法上のルールに沿って決めます。
合同会社では、社員の出資、業務執行、代表の関係を一つの会社構造として定めることが設立時の中心になります。
一般社団法人・一般財団法人は「会社」とは制度が異なる
法人として事業や活動を行う仕組みには、一般社団法人や一般財団法人もあります。
一般社団法人・一般財団法人は、社員や設立者などに剰余金を分配することを目的としない法人です。収益を上げる事業を行うこと自体はできますが、その利益を株式会社の配当のように構成員へ分配する制度ではありません。
一般社団法人・一般財団法人は会社法上の「会社」には当たらず、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立・組織・運営が定められています。
設立構造も異なり、一般社団法人では設立時社員や理事などを定め、一般財団法人では設立者による財産の拠出と、評議員、理事、監事などの機関を設けます。
営利事業をどの組織形態で行うかという段階で一般社団法人・一般財団法人も候補になる場合は、利益の帰属と組織構造まで含めて法人形態を検討します。
会社形態に沿って設立後の会社の構造を組み立てる
株式会社または合同会社を選んだ後は、実際にどのような会社を作るのかを定めます。
商号、事業目的、本店、出資、株式、経営体制などは相互に関係しているため、予定している事業と共同経営の形をもとに各事項を決め、その内容を定款や設立登記へ反映していきます。
商号・事業目的・本店は会社の基本情報になる
商号は会社の名称、事業目的は会社が行う事業、本店は会社の本拠を定める事項です。
商号には、株式会社であれば「株式会社」、合同会社であれば「合同会社」という文字を使用します。
事業目的には、設立後に会社名義で行う予定の事業を定めます。予定している事業を洗い出し、定款へ記載する内容を決めます。
本店については、会社の本拠をどこに置くのかを決めます。定款では本店所在地を市区町村まで定め、具体的な所在場所を別途決定することもでき、その場合は決定した所在場所を設立登記にも反映します。
本店の決め方は設立後の移転や登記手続にも関係するため、どの範囲まで定款に記載するかを含めて、実際に使用する場所に合わせて決めます。
出資者と出資額が会社の財産的基盤につながる
次に、誰が会社へ出資し、どの程度の財産で事業を始めるのかを決めます。
株式会社では、設立時発行株式について発起人が少なくとも一部を引き受けます。発起設立では発起人が設立時発行株式の全部を引き受け、募集設立では発起人が一部を引き受けたうえで、残りについて引受人を募集します。
株式会社では、出資者、引き受ける株式数、払込額などを定め、出資された財産は成立後の会社の資本金や資本準備金にもつながります。
合同会社では、社員となる人と各社員の出資内容を定め、設立登記までに定められた出資を履行します。
会社形態によって出資の仕組みは異なりますが、いずれも、誰がどの程度の財産を拠出して会社を成立させるのかを設立前に定めます。
株式会社では出資額と株式構成が結びつく
株式会社では、設立時に発行する株式数、各出資者が取得する株式数、将来発行できる株式の範囲などを決めます。
その一つが発行可能株式総数で、会社が発行できる株式数の上限を意味し、設立時に実際に発行する株式数とは別の事項です。
発行可能株式総数は原始定款の絶対的記載事項には含まれていませんが、株式会社の成立までには定款に定める必要があります。
株式の譲渡制限や種類株式の採用についても、会社の設計に応じて定めます。
複数人で株式会社を設立する場合には、各人の出資額が株式保有につながり、誰がどの程度の議決権を持つのかにも関係するため、出資額と株式数を一体として設計します。
経営を担う者と会社を代表する者を明確にする
株式会社では、取締役を誰にするのか、どのような機関構成にするのかを決めます。
取締役会を置く会社では、取締役会の構成や、会社の形態に応じて監査役などの機関についても定め、さらに採用した機関構成に沿って会社を代表する者を決めます。
複数人で会社を設立する場合は、出資者としての立場と、経営・代表を担う立場をどのように分担するかも会社設計の一部になります。
合同会社では、社員の中で誰が業務を執行し、誰が会社を代表するのかという関係を定めます。
事業年度や公告方法は設立後の会社運営に関わる
会社の設立時には、事業年度や公告方法など、成立後の会社運営に関係する事項も決めます。
事業年度は、成立後の決算時期や税務申告の時期に関係します。
株式会社では公告方法についても定め、官報への掲載、一定の要件を満たす日刊新聞紙への掲載、電子公告など、会社法上認められた方法から会社に合うものを選択します。
許認可事業では設立前から許認可要件を反映する
会社を設立できても、予定している事業をそのまま開始できるとは限りません。許可・認可・登録などが必要な事業では、会社設立とは別に、その事業ごとの要件を満たす必要があります。
たとえば、会社法上の手続に沿って株式会社を設立できても、その会社が行おうとしている事業について別の法律が許可要件を定めている場合、その要件を満たしていなければ許可を取得できず、予定していた事業を始められません。
そのため、許認可が必要な事業を予定している場合は、会社の基本事項を固める段階で、その許認可を規律する法令や所管行政庁の申請要領まで確認します。
許認可の条件は事業目的・本店・財産・人的体制に関わる
許認可制度によって審査される事項は異なりますが、会社設立と関係しやすいのは、事業目的、営業所・事務所、財産的基礎、役員等の欠格事由、資格者・責任者の配置などです。
たとえば、本店として登記できる住所であっても、その許認可で求められる営業所や事務所の要件を満たしていなければ、許可申請では使えないことがあります。
資本金についても、会社法上は設立できる金額であっても、許認可側で一定の資産や財産的基礎を求めている場合には、その要件を満たすための資金構成を考える必要があります。
役員について欠格事由が定められている制度や、資格者・責任者を一定の勤務形態で配置することが求められる制度もあります。
このため、許認可事業では、会社形態、事業目的、本店、出資・財産、役員・人的体制を確定する前に、その許認可の要件を確認して会社設計へ反映します。
会社の設立登記を終えた後で許認可要件との不一致が分かると、本店移転、目的変更、役員変更、人的体制の組み直しなどが必要になることがあります。設立時から許認可要件を踏まえることで、予定する事業を開始できる会社として設計できます。
会社の基本事項を定款へ反映する
会社の基本事項を定めたら、その内容を選択した会社形態のルールに従って定款へ反映します。
定款には必ず記載しなければならない事項があり、採用する制度によって追加の定めが必要になる事項もあります。
定款には記載の有無によって効力が左右される事項がある
株式会社の定款には、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称・住所という絶対的記載事項があります。これらが欠けると定款は有効に成立しません。
このほか、定款に記載することで法律上の効力が生じる相対的記載事項と、会社が必要に応じて定める任意的記載事項があります。
たとえば、株式の譲渡制限や機関設計などについて、採用する仕組みに応じた定款規定を置きます。
会社設計で決めた内容を、定款への記載が必要な事項、記載によって効力が生じる事項、設立時に別途決定する事項に分けて原始定款へ反映します。
現物出資では定款の記載事項と設立手続が増える
株式会社では、金銭による出資のほか、金銭以外の財産を出資する現物出資を行うこともできます。
現物出資を行う場合には、現物出資者の氏名または名称、対象となる財産とその価額、その人に割り当てる設立時発行株式の数などを定款に記載します。
現物出資財産の価額について検査役の調査が必要になる場合など、金銭のみを出資する場合とは設立手続も変わります。現物出資や財産引受けなど、会社法28条に定める事項は一般に変態設立事項と呼ばれ、定款への記載が効力発生の条件になります。
現金以外の財産を出資する場合や、設立に伴う特別な財産取引を予定している場合は、原始定款を作成する段階で必要な記載事項と追加手続を組み込みます。
株式会社では原始定款の認証が必要になる
株式会社では、作成した原始定款について公証人の認証を受けますが、合同会社では公証人による定款認証は必要ありません。
株式会社では認証を受けた定款を基礎に次の設立手続へ進み、合同会社では作成した定款をもとに出資・登記へ進みます。
出資の履行によって会社の財産的基盤を整える
定款の作成後は、決めた出資内容に従って出資を履行します。
株式会社の発起設立では、発起人が引き受けた設立時発行株式について金銭を払い込むなどして出資を履行します。募集設立では、発起人による出資に加えて設立時募集株式の引受人による払込みが行われ、創立総会など募集設立に必要な手続を進めます。
設立登記では出資の履行を証する書面が必要になり、発起設立の金銭出資では、払込みがあった口座の通帳の写しや取引明細などを利用して払込みを証明する方法があります。
株式会社では、設立時取締役等を定款で定めていない場合の選任や、採用した機関構成に応じた設立時代表取締役の選定なども設立登記までに行います。
合同会社では、社員となる人が定款作成後から設立登記までに、定めた金銭の全額を払い込むか、金銭以外の財産を全部給付します。
こうして、定款や設立時の決定で定めた内容を、出資の履行や役員等の選任・選定として実行し、設立登記に必要な状態を整えます。
設立登記によって会社が成立する
定款の作成、出資の履行、設立時役員等の選任・選定など、選択した会社形態と設立方法に必要な手続を終えたら、本店所在地を管轄する登記所へ設立登記を申請します。
株式会社も合同会社も、本店所在地における設立登記によって成立します。
設立登記には会社の基本事項が反映される
株式会社の設立登記では、商号、目的、本店、資本金、発行可能株式総数、発行済株式数、取締役、代表取締役、機関設計に関する事項など、会社法で定められた事項を登記します。
設立前に決めた事項には、定款に定めるもの、設立時に別途決定するもの、登記するものがあります。それぞれの位置づけに応じて、定款、発起人や創立総会等の決定書面、払込みを証する書面、役員の就任関係書類などを準備し、設立登記の申請内容へ反映します。
申請内容と添付書面から確認できる会社の内容に食い違いがある場合には、そのまま登記を完了できません。設立過程で確定した内容と、登記申請書・添付書面に記載する内容を一致させて申請します。
登記後は会社名義で次の手続へ進む
設立登記によって会社が成立すると、設立前に定めてきた商号、事業目的、本店、出資関係、株式、経営体制などを備えた会社が法人として成立します。
許認可事業を予定している場合は、設立前に確認した許可要件に沿って、成立した会社名義で所管行政庁への申請へ進みます。
会社設立では、どのような会社を作るのかを一つずつ具体化し、その内容を定款・出資・登記へつなげて会社として成立させていきます。